挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
55/79

055:怨念

皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
ブックマークは励みになります。
また、各種評価を頂けると嬉しいです。
64,500PVを超えました。

戦闘シーンは難しい。
ティーナは駆け出し、男の腹部を蹴るともう一度ドアを閉めた。
「何か武器はないの?さすがに素手じゃ対処しきれないよ」そう叫ぶと慌てて何本かナイフを取り出した。
ヴァイスに数本渡すと「なるべく後ろで動かないように」と釘を刺されプロテクションだけかける。
ナイフを滑らせティーナに渡すと、杖を取り出し気持ちを落ち着かせる。
ヴァイスは人の壁の前に立ちナイフを構え待ち構える、ドアの向こうでは話し声が聞こえ音を立てこちらを追い立てていた。

「お館さま、直々にお話したい事があります」
篭城しきれないと見るやティーナがこちらに合図して数歩下がり戦闘態勢をとった。
ギィィっと音がした瞬間、ティーナはナイフを投げようとして逡巡した。
男が警戒しながら入り、後ろにいる一人が侍女を盾にして首元にナイフを突きつけていた。

「レンさま、随分と野蛮なご学友とお付き合いなされているようですね」
「侍女を盾に取る男に言われたくはないわ」
「ふふ、なかなか良い返しですね。我ら家臣一同はそんな皆様の成長を見守ってきました」
後ろから更に二人の男が入ってくる、どれも中肉中背で革鎧に黒い覆面を被っていた。

前に立っている男は朝に逃げていた家人のようだった。
後ろに3人が並び向かって左側の男が侍女を人質に取っていた。首筋にナイフを突きつけ動くなと侍女の動きを止めていた。
「ルオンさま、お体が良くなったようですね。とてもお元気そうだ」軽い怒りが伴った感情を押し殺した声で呼びかけてくる。
「ハチェット、お前は自分のしている事が分かっているのか?」
「ええ、十分と。私が御仕えしている方の意のままに行動しているのですよ」
「ふっ、トカゲの尻尾は意思を持たないようね」

「ここまで来たからには尻尾の意地があります」
「これだけ動けぬ者がいるのだ、その侍女を放しなさい」
「うーん、そうですねぇ。では、何か代わりのものを戴きたいものです。そうだ腕輪を持ち帰りましょう、どうぞこちらに」
右側の男が片手剣を下げたまま、左手をこちらに差し出してきた。

「あー・・・こちら戴きました」両手を見せてアピールする。
ため息をつくハチェットは指をクイクイッとやり「人質交換といこうか」とこっちに来いと合図をしてくる。
「呪いは既に封じ込めました、それを持っていっても何もできませんよ」ダイアナが口を挟んでくる。
「では、そこのシスター。お前がそれを持って来い」ハチェットが勝ち誇った顔で近くまで来いと催促をした。

箱ごとゆっくり運ぶダイアナ、後一歩で前に出た右側の男が受け取れる地点で侍女が気を失った。
ヴァイスが侍女の方に走り、男の顎にショートアッパーを叩き込むと足払いをかけ、すかさず侍女を確保して後ろにさがる。
ティーナはそれを確認した瞬間ダイアナを抱きしめ後ろに下がった、すると抱えた箱を落とし右側の男がダイビングキャッチをする。
「まあ、こんなもんか。動かなければそれ以上傷つけることはしませんよ」ハチェットが言うと後ろにいた真ん中の男が背後からハチェットの腹部目掛け片手剣をズブリと刺した。

「な・・・何をしている。お前らは俺の護衛だろう」ゴフッと口から血を吐き出すハチェット。
おもむろに引き抜かれた片手剣は一振りで血が拭い取られている。
左右の男は立ち上がりこちらを見ながら、左の男が退路を確認し右の男は箱を開けた。
「こんなちんたらした計画してるから改革が進まないんだよ、貴族なんてさくっと殺っちゃえばいいのに」中央の男が呟くと右側の男が持っている水晶を掴み倒れこんでいるハチェットの上に置く。そして片手剣の背で水晶を叩くと「またどこかで逢えるといいね」と中央の男が言い賊の三人はドアから出て行った。

ハチェットの上で渦巻く悪意は拡散と縮小と繰り返す。
最後の力を振り絞って起き上がろうとしたハチェットがゴボリと血を吐くと、そこに引き寄せられるように悪意がハチェットの中に取り込まれていった。
「なんか嫌な予感がするんだけど・・・」ザクスが呟く。
「とりあえず捕縛しよう、ロープなんかはないよな?リュージ」
「ごめん、もってない」

嫌な雰囲気がビンビン増してきている、誰一人金縛りのように動けず様子を見守るしかない状況を打破するように、どこかに隠れていたのか家人の一人がドアをゆっくり開けると衛兵がなだれ込んできた。
「すいません、まずは非難を優先してください」衛兵に叫ぶと次々と部屋から場所を移し治療にあたって貰う。
早めにダイアナにも移動して貰いヴァイスは片手剣を衛兵に借りていた。

ティーナはナイフを構え、ヴァイスは衛兵に捕縛用具を用意して欲しいとお願いをしている。
この部屋は現在ティーナと自分がいて、ドアの先にはヴァイスがいた。
ハチェットの死体がお腹の辺りから大きく跳ね上がる、そして地の底から響くような声で「アアアァァァァァァ」と発している。
不意に重力を感じさせない起き上がり方をするハチェットがこちらを向くと目が窪み闇を宿していた。

「ヴァイス、頼む」一声かけるとすぐに部屋に入り扉を閉めたヴァイス。
体中くすんだ闇を孕み、爪には靄が一瞬まとわりつたと思うと硬化する。
ティーナはナイフを構えたまま左足でハイキックをすると、防御した腕が明らかに折れただろうというくらいにめり込んだ。
すぐに戦闘態勢を整えたティーナは急に蹲る、補助をするように右からヴァイスが片手剣でけん制をした。

ティーナに駆け寄ると左足付近に靄が纏わりついている、どうやら足が焼かれていたようだ。
「しばらく時間を稼いでくれ」そうヴァイスに頼むとティーナの肩に手を添え、聖光を流し込んだ。
「リュージありがとう。あれは何なの?一回死んでるからアンデットなのかな?」
「何とも言えないな、負の感情が動かしているって・・・やっぱりアンデットかもね。回復の手段がないから気をつけて、出来る限りの補助はするよ」
聖なる光にティーナを護りたいという力を込める、すると靄がティーナから離れ再びハチェットの口に吸収されていった。

《New:スペル ホーリープロテクションを覚えました》

「短期決戦でいくよ」全身を淡い光で輝かせながらハチェットの前に立ち、左脇腹にボディーブローを繰り出すティーナ。くの字になった頭を抱え、膝蹴りをするとハチェットは反動で後ろに弾け飛ぶ。打撃が当たった場所からは靄が霧散していく。
予備動作を感じさせずに元の姿勢に戻ったハチェットは、更に鋭くなった闇色の爪をティーナに振り下ろす。するととヴァイスが割り込んで防ぎ片手剣で弾き返す。ティーナは一瞬敵に背後を見せると飛び上がり高い打点でローリングソバットをお見舞いした。
ラッシュをかけるティーナを確認するとヴァイスにもホーリープロテクションをかける。
一撃毎に闇が霧散していく、徐々に動きが鈍くなっていくハチェットは程なく物言わぬ姿に戻った。

《New:レベルが上がりました》
《New:レベルが上がりました》
《New:レベルが上がりました》

「遅くなりました、皆さん大丈夫ですか?」衛兵が捕縛用具をもって来た。
ロープで両手両足を縛っている衛兵にこの死体はこんがり焼いてくださいとお願いをした。
当主と家人が家の被害状況を確認して相談していると、ルオン達がまたこの部屋に集まってきた。
部屋を移して落ち着こうと話しているとノックが聞こえる、一瞬身構えると「おーい、入ってもいいかー?」とマイクロの声が聞こえた。
レンがどうぞと入室を促すと「わりぃ、個人的な依頼だったので一人しか無理だったわ」マイクロが意識を失っている覆面の一人を担いで入ってきた。

「急な依頼だったから手間取ってね。着いた時にはもう騒ぎになってたから、救援を呼んで気がついたら覆面の男がバラバラに逃げて行くところだった」気絶している男をドサっと落とし衛兵に捕縛してもらう。
捕縛も終わり周りが一段落するとマイクロは「集合」と発し屋敷内にいる衛兵が集まりマイクロに敬礼をする。
そして順次手短に報告をすると当主が入室してきた。

「この度は救援が遅くなり申し訳ございません」深々と礼をするマイクロに当主は同じ深さの礼で返す。
「正式な依頼をだしていないのにご助力感謝致します、出来ればシスターダイアナの護衛をお願いしたいのですが」当主がお願いするとマイクロの後ろにいた男性が名乗りを上げる。
「もし、別の部屋を用意して頂けるなら子供達をお願い致します。護送の後、本日の警備はこちらに任せてください」マイクロが子供達をお願いすると当主は快諾した。
この部屋は一時封鎖してマイクロ他数名の衛兵はそれぞれ役目を果たした。

翌朝、屋敷は子供達を送り出した後実況検分から始まる。
ハチェットの過去を探り、関連する土地・団体や組織を調べることとなった。
また、この日の午前にハチェットは焼却処分となった、残った灰は協会に持ち込まれ浄化してから埋められる。
まだまだ土葬が多い土地もあるがアンデットに関わる死に方をしたものは例外なくこの方法が取られていた。

5人はとりあえず学園に行く、そして身が入らない講義を聴きレンとザクスと自分は試験を受けた。
モヤモヤしていても特待生である、1年目は基本に忠実な講義を受けており動揺していても難なく試験をパスできた。
昨日の報告をサリアル教授にすると大きくため息をつかれた、マイクロの到着が遅れた事の謝罪を受けたけどこちらとしても不測の事態だったので逆に感謝の言葉を告げた。無茶な行動をしないようにと窘められると、腕輪を見せるように言ってきた。
少し悩む素振りを見せながら少し待つように言われ、瞑想の時の講師を連れてきた。

「あなたはどう思いますか?」サリアル教授が講師に質問する。
腕輪に触れると目を閉じ「微かな悪意も感じられません、どちらかと言えば聖別された物のようにも感じます」サリアル教授に頷いた。
ルオンからは「リュージ君にも迷惑をかけてしまったね。この腕輪は処分出来れば処分して貰いたい」と依頼を受けており、解呪の費用もきちんと負担する旨は受けている。当分様子見になるはずだと告げると困ったことがあったら是非相談して欲しいと言われていた。
「やはり、一度お師匠さまに会ったほうがいいと思います」サリアル教授は明日の予定を聞いてきた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ