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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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053:腕輪

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若干短めの文量です。
キリがよかったので続きは次話にもっていきます。
 夜を越えると動きがあった、ヴァイスとティーナがレンの許可を得て見回りをしたようで屋敷内を伺う怪しい男を捕まえたそうだ。そして当主の仕事をサポートしていた男性が一人消えていた。
とある一室で両手を縛られている男は定期的に加工した薬湯の原料を持ち込んでいた事が分かった。
部屋には当主とルオンと特待生の5名が集まっている、最後にこの男の購入窓口を担当している侍女が現れた。

 失礼しますと入室した侍女は一目見て状況を悟った。
「やはりルオンさまを苦しめたのは私だったのですね」と言うと侍女は袖をまくった。
そこにはルオンと同じ腕輪が片方に嵌められていて、同じように皮膚が斑状に変色していた。
崩れ落ちるようによろめく侍女をルオンが支える、そして彼女に罪はないと周りに訴えかけた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 今から十年前、ルオンは自領で剣や馬術など貴族に必要なスキルを学んでいた。
少しスパルタすぎるのではないか?という位の練習量を勢力的にこなしていると、ある日糸が切れたように体調を崩してしまった。この侍女も幼い頃よりルオン付としてお世話を担当していて、突然の風邪らしき症状に大きく慌てていた。
寒い季節だったが今まで病気らしい病気を一つとして罹らなかったルオンはこの時流行病を疑われた。

 自領には高位の神聖魔法を使えるものがいなく薬草に頼るのが常だった。
そんな折一人の男が現れたのだ、今思うと怪しい事この上なかったが貴族との繋がりを求めていて『お近付きの印』として加工した薬湯の原料と1対の腕輪を持ち込んだのだった。
【安寧の腕輪】と【慈愛の腕輪】だった。

 ルオンに【安寧の腕輪】を渡し、薬湯を入れると一気に症状は落ち着いた。
名前の通り心に安らぎを与える腕輪と理解して、侍女は誉められたのをとても喜んでいた。
同じ趣向を凝らした腕輪を侍女も一緒に嵌めるのは少し憚られたのでその存在は片隅に追いやられていた。

 ある日ルオンがその腕輪をはずそうとすると腕にピタリと吸い付いている事に気がついた。
特に不便を感じる訳でもなく心が安らぐ、その比重が大きかったので大して問題にはしなかった。
しばらくして体調が悪くなる、そして頻度が多くなってきた。
元々外で動くのは貴族の当主候補としての責務であり、体調が悪いと心なしか周りが優しくなる。その事に甘え次第に室内にいる事が多くなっていった。

 あれ以来、あの男の使いとして来ていたのが今捕まっている男だった。
今思えば薬湯を飲み腕輪を嵌めてから体調を崩していたように思えている。
侍女は【慈愛の腕輪】の説明を受けていた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 ヴァイスとティーナは腕を縛られている男を警戒していた。
ルオンに許可を取り腕輪を鑑定させてもらった。
【安寧の腕輪】:慈愛の腕輪と対になる。心の平穏を得る、平穏を得たと安心すると全体的な抵抗力が落ちる。装着者の生命力を吸い取り縮小拡大する。
捕まった男が言うには薬湯に毒など入っていないと無実を訴えていた。

「薄々感じてはたのです、薬湯を入れた数日以内にルオン様が体調を崩すこと。そしてその男が確認に来ている事を」そしてもう一つの腕輪に縋ったのだった、侍女に鑑定をすると話すと腕を差し出してくる。
【慈愛の腕輪】:安寧の腕輪と対になる。安寧の腕輪による副作用の半分を肩代わりする。装着者の生命力を吸い取り縮小拡大する。

 ルオンは毎年大きな病に罹っても、かろうじて年を越す事ができていた。
次第に不安になってきた侍女はルオンに相談するとルオンは考え込んでいた。
この頃になると侍女に特別な感情を持つようになり『共通の秘密』は二人の恋の燃料となったようだ。
貴族の当主候補となれば相手も貴族となる、側室として迎える選択肢もなくはないが十代の若者が選択するには純粋すぎたのだ。

 この男を追えば腕輪の事を調べられるし、薬湯は疑わしいというだけで証拠を探そうと動くと色々と周囲にバレてしまう。「レンには悪いけど、しばらくは病弱な兄として過ごした方が自領の民にも良い結果を産む」と思っていたそうだ。
「俺は無実だ、解放しろ」と大声で喚く男にヴァイスが「今本当の事を言えば罪を軽減できるように取り計らうよ」と小声で囁く。押し黙る男にザクスが「残りの薬湯ってまだあります?」と侍女に聞く。
侍女はまだ大量にあると言うと「じゃあ煮詰めてこの男性に飲んで貰いましょう、薬学科だからきれいに効能を抽出してあげますよ効能もウン十倍にしてね」とザクスが微笑んだ。

 当主が別の家人を呼ぶと男はあっさり白状した。
薬湯には極微量の毒の成分があり、健康な人なら相当量を飲まないと気にならないくらいの品質だった。
俗に言う『法定量を超えてるけど直ちに影響は出ない数値』らしい。
男は隣国のある組織に所属していたけど今は基本的に行商人として生活していて、定期的に接触を受けて多額の金額と引き換えに薬湯をここに届ける契約となっていたそうだ。
事業に失敗した時に補填として脅されてやったと話していた。

 供述をしたので一先ず状況を整理して王国に報告することになった。
「全部話したんだから開放を・・・いや、重罪でもいい。とりあえず俺の身柄を確保してくれ」と男が項垂れていた。
捕まった時点で終わる実行犯だ、トカゲの尻尾切りをされるか踏み込んでいれば消される可能性も出たのだろう。
当主は家人を呼び何点か指示を出した後、ルオンを別の部屋に連れ出した。

 男は厳重に拘束をされるとヴァイスを伴って官憲に行く事になった。
貴族への敵対行為は基本的には王国への敵対行為と同義である。
厳しい取調べの後しかるべき刑に処することになるそうだ。
侍女は屋敷内での軟禁扱いで外出を禁じられ、消えた家人については独自のネットワークで調べるようだ。

 ここで残った4人は話し合いをする。
まずザクスが学園に行きこの薬湯を調べて拮抗薬を作れるか考えてみるらしい。
長期間の服用なので、すぐにすぐどうにかなるものは難しいと言っていたがやらないよりはマシだろう。
ティーナは侍女に付き添うと言っていた、第三者の人が付き添っていた方が落ち着くだろうという配慮だった。

 レンと一緒にさっき指示を受けた家人に手配状況を確認すると1点だけ対処できずにいた。
「ルオンさまと侍女の腕輪を何とかしないといけません、付与魔術師に相談するか協会に相談するか正直わからない状態です」と考え込んでいた。
サリアル教授に相談するなら迷わず学園に行くべきだろう。外す事が出来ないと言えば大抵は呪いだろう。
付与魔術師に知り合いはいないけど相談すればアドバイスは貰えるはずだ。
解呪と言えばやっぱり協会も関わって来る事だろう、セレアも良くなった事だしこの前行った協会に相談するのも良いかもしれない。寄付金は必要になると思うと家人に伝えると「心得ています」と回答があった。
レンは「今日は兄についてる」と言うので、腕輪の手配は任せてと話すと午前は協会に行く事にした。
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