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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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035:サティス家

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 品種改良グループの教室に着くとグループの皆に挨拶をする。
ローレル教授に入部届けを出すと教室の半分が歓声と落胆に別れた。
基礎薬科グループの顧問は「うちと品種改良グループは共同研究もしているぐらいだから、こちらに入ったのと同義だな」と謎理論を展開している。ザクスとレンがこの教室にいるので問題ないと言えば問題なかったが・・・まあ深く追求しても仕方がないのでつっこまないことにする。
ついでに畑の開墾及び使用許可証を提出した。

「お、早速開墾するのかい?」とザクスが聞いてきたので「今日やれる範囲でやってくるよ」と言うとザクスとレンがついて来る。基礎薬科グループ顧問も今日は私の番だなとついて来る気満々だった。
開墾予定地を鍬で開墾する、今回は魔法を使ってあっという間に耕すような事はしない。
多分しないんじゃないかなぁと思う、朝練の武器を振るよりよっぽど馴染むこの体が恨めしい。

「リュージー、春まではまだ時間があるけど今から開墾する必要なくはないか?」とザクスが聞いてくる。
「ちょっと作りたいものがあるんだよね。香りの良い何かにするか美味しいものにするかは考えないとだけど」と言うと「香りに興味を持つなんて良い着眼点だね」と顧問が感心している。
「それは液状石鹸の関係?」とレンも興味津々のご様子だ。
そういえば【グリーンフレグランス】に行こうって話しが出ていたので何時にしようかと相談を始める。

「おや?あの店の事知っているのか。スポンサーが撤退するような話が出ていたようだが・・・」と顧問が嫌な発言をしてきた。
もともと「とある貴族」がスポンサーになり、かわいい商品やアメニティ商品・石鹸関係を扱っているお店で価格帯としては結構強気の商売をしていたらしい。
ところが通常商品はポツポツとしか売れず、石鹸関係は過剰在庫の上、香りも悪くそろそろ撤退も考えなさいと内々に話が出ていたようだ。
基礎薬科グループへも冒険者ギルド経由の依頼で相談が来ていたようで、香りの抽出という面と元になる植物がないという2点で早々にお断りしていたそうだ。念の為どこの貴族か聞いた所、明日来るサティス家だった。

 話を聞いている間も掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って・・・、どこかの飲み会のコールみたいだった。結構耕せたと思うのでこっそり開墾の魔法を唱えて畑から離れる。
「それでこの液状石鹸だけど、なくすには惜しいものなんだ」と顧問が続ける。
どうやら椰子みたいな植物から取れるものらしく、特殊な加工を経て液状石鹸に、その後に更に加工をして固形石鹸にするらしい。これが一部の飲食店と貴族家で流行ったのだが衛生上は是非続けて欲しいと基礎薬科の顧問らしい事を言う・・・顧問だけど。
薬学の基本とは洗う事だというのがこの顧問の持論らしい、ポーションや毒消し・各種薬などは統一規格を大事にしている。混ざり物は厳禁だし、どんな副作用が出てしまうか分からない。また最近は飲みやすさなど別のアプローチをする学生も出てきた。
「動植物が人へ与える影響と過ごしやすさを追求するのが基礎薬科グループなんだ」と目をキラキラさせてこちらを見てくる。救いを求めるようにザクスを見ると「こうなったらしばらく放置しておくしかないんだ」とため息をついていた。

 問題は何個かある、日本基準の表現をするなら今は11月下旬のようだ。
この地域は冬にはそこそこ雪が降るらしく風もそこそこ吹くようで、こうなると選ばれるのは寒さに強い植物で美味しいか香りが良いものになる。
そして総合的に考えてビニールハウスにする必要が出てくる「ビニールかぁ・・・」さすがにビニールはないと思う。
候補は煮込み用のトマト(縦長っぽいやつ)やラベンダー・金木犀・バラってところかな?ゆずやレモン・りんごなんかも悪くはないと思う。

 じゃあ明日の準備もあるのでと畑に一振りだけすると、一瞬沈み込むような音がしてふかふかの畑が完成した。
「「「今のどうやった(の)」」」と質問を受けたけど「秘密だよ」と鍬を仕舞うと「土魔法いいなぁ」とレンが呟く。
一度寮に帰って明日の準備を考えてみるよと言うとザクスとレンも一緒に帰ると言い出した。
教室に戻ると試験対策している人も多いので特に終了時間は決まってないようだった。
挨拶をすると3人で教室を後にした。

 寮に帰るとレンが調理場へ声をかけていた。
明日の朝食後なら調理場は使えるらしく、侍女の二人と調理長も興味があるので手伝ってくれるらしい。また、材料もいっぱいあるので好きなだけ使っていいと許可を頂いた。
こっちの準備はレンに任せると男風呂の準備をする。
ヴァイスとティーナはかなり風呂を気に入っているらしく、日頃の鍛錬でもかなりハードなのにグループ活動もかなり気合を入れているらしい。そして毎日風呂場で体をほぐしているようだった。
今日は食事と風呂を終えると早めに自室に入りシールドの魔法の研究に没頭した。

 翌日、今日のゲストが来るのはお昼ちょっと過ぎらしい。
参加メンバーはレンとザクスと自分でヴァイスとティーナはそれぞれお出掛けするようだ。
寮からは寮母が挨拶だけして執事と侍女1名がサポートしてくれる予定だった。
朝練はヴァイスとティーナと自分だけ参加して、その後は朝食をとったらクッキー作りに入った。

 それぞれの前に材料を並べる、今回自分はグリモア【菓子百貨】を広げて作業工程を説明しながら見てまわることに徹しようと思う。粉を篩い生地を作る、型を決めて焼きに入る。調理場から甘い香りが寮内に広がっていく。朝食を終えた後なのに何ホイホイなんだか調理場に人が集まりだした。
「え?おじさま・・・なんで?」いつの間にかローレル教授がお茶していたようだった。
どうやら今日来るサティス家とは日頃から交流があり挨拶だけしようと思っていたようだ。

 調理場ではハーブを練りこんだらどうだとか、お茶の香りも良いとか、穀物であれこれ入れると合うかもしれないと意見を出し合っていた。
多分どれも合うと思うので次回からは食べる方にまわって期待して待っていようと思う。
二回目の焼きに入ると執事が「レン様、サティス家のソラ様がお見えです」と呼びに来た。
「あれ?レン、名前が違ったように思うんだけど」と聞くと「おかしいわね、妹の方が来たみたい」と首をかしげて手を洗いそのまま玄関に向かった。

「ご無沙汰しておりますレン様」と侍女と共に優雅な貴族の挨拶をするソラ。
ローレル教授もレンの隣に立ち挨拶をしているようだった。
どうやら早くに妹が来たのは二日前くらいにセレアが急な病になってしまったらしい。
一晩寝れば治ると思い休養をしたところ悪化してしまったので、昨日は医者を呼んで薬を処方してもらったそうだ。今日をとても楽しみにしていたので午後迄には何とかすると大事をとっていたが更に症状が悪化してしまった。
とても外出できる状態でもないので代理でソラが来たらしい。

 侍女とソラが謝罪をして「姉が心配ですので」と退席しようとしたので「ちょっと待ってて」とレンがクッキーの皿を手に取る。お土産に持たせようとキョロキョロしていたので薄い布とリボンを渡し、レンは手早くラッピングした後小さなカゴに詰めて侍女に持たせる。
「後で様子を見てお見舞いにいくわね」と言伝を頼むと「姉も喜びますわ」と深々とお礼を言っていた。

 第二陣が焼きあがるとローレル教授を交えてお茶会に入る。
「えーと、さっきの甘い香りのものは出ないのかい?」と催促するのを忘れない教授。
ザクスとレンと教授が一緒の席についていて「間もなくお昼ですよ」とレンが嗜めると「これだけ良い香りをさせておいてそれはないんじゃないかな」と悲しい顔をした。

 皿に入った少量のクッキーをにこやかにつまむ教授。
「これは出す所に出せば商売になるよ」と興奮していた。
そんな教授を軽く受け流し話題は先ほどのサティス家になる。
どうやら【グリーンフレグランス】のスポンサーはセレアだったようだ。

 この王国では貴族による統治の他に新種改良・農地開拓・新製品開発に一定の評価が上がる仕組みがある。これは個人でも評価されるが貴族は更に評価が高く、頭が固い当主はあまり新しい事業に取り組みにくいが子息子女に経験として任せる事があった。
「基礎薬科グループの顧問ともよく話すんだが良い事業なんだけどな」とあと一工夫が果てしなく遠かったのが撤退の原因だろうと教授が語った。
午後に今ある在庫を確保しに行こうと話しがあがりレンとザクスと行くことにした。
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