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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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146:情報交換

「サラちゃん、ここ凄い成長したね」
「うん、お水のお姉ちゃん・・・。あ、こう呼んじゃいけないんだった」
「水の精霊さまって呼ばないと怒られちゃうよ」
「うん、その精霊さまが手伝ってくれたから、こんなにも大きくなったんだよね」
「リュージお兄ちゃん喜ぶかな?」
「うん、きっと喜ぶよ。それまで内緒ね」
「うん、内緒にしよう」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 噴水の件が一区切りすると、再び農場へ戻ることにした。
王妃かローラが残っていたら手紙を渡したいと思う、そういえばセルヴィスにも渡す必要があった。
農場を一周したケインとフリーシアはとても感動していたみたいで、特にこれから希望する仕事がないなら一緒に働かないかと問いかけた。二人は元々商家の出なので、是非ここで働きたいと言ってた。

 二人についてはまず屋敷を接収され、王都で生活する支度金をアーノルド家で相殺した。
馬を含む馬車については自分の管理下に置かれ、必要なら貸し出し又は資金が貯まったら買い取りという形になった。これは二人が1からスタートしたいと望んだ事で、余った支度金は必要ないと言わたので預かりという形にしている。

 因みに、ブラウニーも一緒についてきたようだった。
よく、ブラウニーは人につくか?家につくか?の議論がされているようで、このブラウニーは人につくタイプだった。
部屋は必要か確認すると、屋根裏部屋を借りられれば十分だと言っていた。
そもそも屋根裏部屋が存在するか見たことないけど、広い農場をとても喜んでいたようだ。
もし紹介が必要なら、人間形態で挨拶して欲しいとお願いすると、飛び回る姿を止め丁寧に挨拶してきた。
二人とブラウニーには数日ゆっくりして貰い、ナディアに仕事の手ほどきをお願いした。

 ユーシスに王妃かローラが来ているか確認すると、二人の仕事は終わったようで、間もなく事務棟にやってくるようだ。いつの間に仕事という表現をするようになったかは不明だけど、二人に話したい事があると告げると間もなくやってきた。

「リュージさん、おかえりなさい」
「リュージさん、うちの息子の為にごめんなさいね」
「いえいえ、それは問題ないです。楽しい旅でしたし」
「それで、ローランドはどこにいましたの?」

 この農場のセキュリティーは高いとは言え、国の最重要機密をペラペラ話して良いものではない。
手紙を預かっていますと伝え、持ち帰って読んでもらう事にした。
ローラはこれから一緒に寮に戻るので、どこかのタイミングで確認するらしい。
差出人を見て「まあまあまあ」と微笑む王妃、ローラの好奇心は止まらないが、吉報と思ったローラは帰り道に質問攻めをするだろうなという雰囲気をかもし出していた。

 久しぶりに特待生が全員揃った寮は、少し懐かしさを感じた。
寮母に帰宅の挨拶をすると、祭りの準備期間なので忙しく行動すると伝える。
目を細めた寮母は、あなた達の帰りを待つのも楽しいわと柔らかな微笑を浮かべた。

 侍女二人からは、王国マナーグループとティーパーティーグループの二つの団体から、お礼が届いたと言いチケットを出した。それは、王子とセレーネのお披露目ダンスパーティーだった。
二つの団体のなるべく家格が上の者の権利を使い、なんとか滑り込むようにチケットを得たのだった。
王子達のお披露目は何段階かに分かれていて、身内・国外+重鎮・その他貴族家とイベントが行われるようだ。
純粋にコネを使わないなら、とてもじゃないけど末席にもいられないはずだった。

 風呂を準備し、食事を済ませると談話室で話に花が咲く。
静かに話しているつもりだけど、レイシアの妊娠・出産の話をすると、ザクス・ヴァイス・ローラが驚きのあまり止まっていた。そして、ザクスが「ローラも叔母さんになるのか」と言うと、「私はおばさんじゃありません」とムキになった。

 王都にいたヴァイス達は、相変わらず稽古に夢中だった。
8月いっぱいは濃密な稽古をするみたいで、場合によっては就職の斡旋や紹介などが行われるそうだ。
ヴァイスは既に声を掛けられているみたいで、他は成長具合を見て判断するらしい。
ベリアが熱心に稽古をつけている、キアラとマーリンも順調らしい。

 ザクス達はグリーンカーテンの設置を行った際に、簡単な営業活動をしたらしい。
化粧水を実用化させて、スポンジの売り込みもしたようだ。
サンプルを置いてレイクの名前を出すと、商業ギルドで近々取り扱うかもしれないことを匂わした。
今考えるとグリーンフレグランスで出している石鹸とセットにすると良いかもしれない。
その事を話すと、レンとローラが食いついてきた。ザクスは開発した段階で満足しているので、販売は専門家に任せれば良いというスタンスだった。

 ローラからは学園で育てている、グレーナ草が順調だと報告を受けた。
学園が休み期間中も交代で世話をしに行き、時間が空いたら農場で母と一緒に畑仕事をさせて貰ってたと言っていた。農場で聞いた話だけど、ローラがフリーで動く時はヘルツがきちんと護衛をしていたらしい。

 噴水の件が終わったので、後はゆっくり1週間を過ごし祭りの日を待つだけとなった。
そうは言っても、自分は3日間お昼にナポリタンを食べ、ギルドと隊長への報告、セルヴィスへの手紙の配達、製麺所の確認と忙しい日程が詰まっている。
水曜日には王都に店を構えているパン職人によるパンコンテストと、農場のパン教室に出席した者のパンコンテストがあり、噴水の稼動は祭りの前日の深夜に予定している。
祭りの日には全員で見学しようと約束し、早めに休息を取ることにした。

 自室に戻ると魔力量強化の為に、癒しの水の魔法を唱える。
ケインの回復に全部使ってしまった為、また1から集めないといけない。
そういえば、「この雫をザクスに見てもらうといいよ」ってレンが言ってたけど、すっかり忘れていた。
後で覚えていたら確認しようと思う。

 翌日からは大忙しだった。
日曜なので学園への報告は後回しにして、朝一番に農場へ行きセルヴィスに会えたので手紙を渡す。
その後すぐに冒険者ギルドへ報告に行くと、その足で商業ギルドのレイクに面会に行く。
製粉業者が新しく始めた製麺工場へ案内して貰うと、生麺と茹でた後の麺を見せて貰い、小さな調理場で塩味の焼きそばのように調理していたので、鷹の爪とにんにくとオリーブオイルを取り出し、ペペロンチーノを作って3人で試食をした。麺は農場の調理場の責任者が太鼓判を押したので問題なかった。
麺の味見をするにはこっちの方が良いですよと、3点セットを置いてくると引き続きの購入はレイクを通してやってもらうことにした。

 午後はこれからの季節の畑について指示を出しておく。
今はトマトや枝豆をはじめとする植物を育てているが、秋に向けてカボチャや栗なんかもあると嬉しい。
また、桃やリンゴがあっても人気が出るだろうと思う。
これは自分がいるタイミングでなくては一新出来ないので、現場の人達と相談したいと思う。
農作物だけではなく加工にも力を入れるので、枝豆は大豆なので引き続き量産化していこうと思う。

 朝一番にガレリアは、この農場に隣接する敷地の買い取りを始めたようだった。
農場は現在でも十分広いが、まだまだ品物が行き渡っていない感があると、商業ギルドから増産の打診を受けていた。また、ガレリアに敵対する土地持ちの男爵からの嫌がらせが中途半端だったようで、一箇所に纏めて新設すると商業ギルドに相談した結果、立ち退きの話していたはずの男爵から、仕方がないから借地料の値引きをすると急に言われたそうだ。

 ガレリアが常春さまだった頃に、恩恵に与れなかった腹いせのつもりが、要注意人物として根深く拗れてしまったようだ。こうなってはいくら料金が下がろうと、難癖をつけられて面倒な事になるだけだ。
関係をすっぱり切る覚悟で、ガレリア基金に関係する農場やワインバーその他から一斉に×印をつけられることになった。

 夕方近くにも来客があった。
普段はアポイントメントを取っていないお客はお断りをしているけど、ミスディ男爵家と聞いて通してもらうことにした。
すぐ帰るので玄関で良いらしい、当主は夫人を連れて鉢を持ってやってきた。

「お久しぶりです」
「リュージさん、その節はありがとうございました。これ・・・きちんと話すと決めたんだろう」
「ごめんなさい、今になって思うと、とても恥ずかしい事をしたと思います」
「分かって頂けたなら良いんですよ。もしかして?」
「ええ、私達二人と家人に手伝ってもらって、こんなに立派なプチトマトが出来ました」
「良かったですね、それをどうしてこちらに?」
「恥を忍んで多くの方に聞きました。もし女神さまや精霊さまへ捧げるならば、協会も良いけれどもっと相応しい場所があると」
「それがここだと?」
「ええ、間もなく女神さまへの豊穣と感謝の祭りがあります。このまま食べる事もなく、その実をダメにしてしまうならば相応しい場所へお届けするべきだと」

「うーん・・・」
「リュージ、何か困りごと?」

 緑の精霊さまがやってきた、その後ろには黒アゲハのような漆黒の羽が見えた。
お願いしますと頭を下げる二人に、黒アゲハが鉢のほうへ飛んでいく。

「まあ、美味しそう。これ頂いてもいいかしら?」
「リュージ、いいかな?あ、この子新しく産まれた妖精さんだよ」
「あなたがリュージさまですね、こんな素敵な楽園をありがとうございます」

 緑の精霊さまに頷くと、黒アゲハの妖精が合図を送る。
すると、別の精霊さまや妖精さんが姿を隠したまま、一粒ずつ収穫すると農場の奥の方へ運んでいった。
頭を上げた二人はとても驚いていた、そんなに長時間頭を下げた訳ではない。
自分の視線を追って二人は振り向くと、その身に対してかなり重いものを運んでいるせいでヨタヨタしている黒アゲハが一般の人に姿を見せないように飛んでいた。

「「あ、ありがとうございます」」
「いいえ、きっと女神さまへ届いたと思います」
植木鉢はそのまま持ち帰ってもらった。

 三日間お昼にナポリタンを食べ、パンコンテストは成功裏のうちに終わった。
オープンサロンで行った、もう一つのパンコンテストもかなり盛り上がったようだ。
直前になって出店するのが難しくなった屋台があり、その穴埋めも頼まれて大急ぎで手配をすると祭りの前日がすぐそこに迫っていた。
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