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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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136/161

136:レイシア

 二台の馬車を経由してアーノルド男爵領の検問場に到着すると、馬車とは分かれてレンと二人で並ぶことにした。
馬車はすんなり検問を通り、自分達も徒歩で旅をする者が少ないせいか、すぐに担当官のところまでたどり着いた。

「ようこそ、アーノルド男爵領へ。まず名前と旅の目的を聞かせてくれ」
「はい、リュージです。冒険者をしていまして、今回は観光です」
「リュージの妻のレンです」
「おい」
「てへっ」
「いちゃいちゃするなら余所でやってくれ。王国の決まり通り、犯罪をおこさないように。二人とも冒険者なら、まずギルドへ向かうようにな。この大通りをまっすぐ行けばわかるようになっている」
「「はい、ありがとうございます」」

 冒険者カードを2名分確認すると、特に問題なく通された。
担当官が見えなくなってから、改めてレンにさっきの急な設定について文句を言った。
「レン、検問で急に慌てるような設定を言わないでよ」
「えー・・・、だって。その方がこの領で動きやすいでしょ」
「確かに宿屋じゃ節約で一部屋とかあったけどさぁ」
「あら、私じゃ不満かしら?」
「そうは言ってないよ。王子さまの側妃候補にもなってたんだしね」
「それはちゃんと断りましたー」
「うん、魅力的なのは分かってるから普通にして」
「・・・わかった」

 急に顔が赤くなったように感じたけど、まずは情報収集が先だった。
冒険者ギルドに挨拶に行くと、早速受け付け嬢から少し待つように言われる。
少しすると、とある1室に通された。

「ようこそ、当ギルドにおいでくださいました。副ギルドマスターのナタスです」
「リュージです」
「レンです」
ギルドマスターは忙しいようで、この領で起きる事件や事故に対応する、冒険者を統括している事務職員がナタスだった。

 王家の務めで王子が旅に出ている事は、既に王国の冒険者ギルドは周知しており、該当するギルドには、それとなく見守る事と事件があったら事前に排除するように通達されていた。
そして先行して来た馬車は、代官の所へ向かうと客として持て成されているようだ。
今、その馬車を追っていた冒険者を呼びに行っているらしい。

 王子が到着したという情報はなく、スチュアートはこの時間なら政務館で働いているようだ。
ギルドが直接代官や当主を紹介するのもまずいので、その冒険者にはあまり派手な動きをしないように伝えてある。
政務館と代官の家とアーノルド男爵家の3つは、街の人に聞いてもすぐ分かる場所にあるので教えてもらった。
このギルドの特色や、最近あった事件などを聞いているうちにノックがあり、ティーナがやってきた。

「待ってたよ、レン。リュージもおつかれさま」
「ティーナ、元気だった?」
「それは大丈夫、いつも元気」
「じゃあ、先に宿を決めようか」
ナタスに進展があったら報告に来ると言うと、ティーナがとっている宿に行くと伝えた。

 冒険者ギルドは閑散としている、ティーナとレンが先に出て、その後をついていこうと玄関を出ると、片腕でホールドされて喉元に冷たい金属をつきつけられた。
「喋るな、そして不用意に動くな」
「・・・」
レンとティーナは気づかずに歩いていく。

 低く短い言葉を相手に緊張していると、くっくっくから、あははははと笑い声が聞こえ軽く小突かれた。
「来たか、リュージ」
「マイクロさん・・・。レン、ティーナちょっと待って」
「「え??」」
マイクロは駆け寄ってきたレンとティーナに挨拶をすると、「お前達3人、まじで気がつかなかったな。まだまだ教わる事が多いんじゃないか」と、入る姿と出る姿を目撃されていた事を指摘された。

「まあ、それはいいか。それより、レン・リュージおめでとう。お前らいつの間にくっついたんだ?」
「え?レン。とうとう?」
「な・な・な、なんのこと?」
「マイクロさん、本当に何の事だか」
「お前達が来るのはティーナがこっちに来てるから予想してたんだ。さっき、俺に連絡が入ったんだが・・・」
「ああぁ、検問所か・・・。あれはカモフラージュというか冗談というか・・・」
「そうか?でも、レンの顔が赤いぞ」
マイクロとティーナがニヤニヤ笑っていた。

 レンと一緒に誤解を解きながら、まずは宿の手配をとる。
すると、夫婦一緒じゃなくて良いのか?とマイクロからからかわれたので、「マイクロさんは、相手いないんですか?」と反撃を試みる。すると、すかさず「俺も王子と同じで、もてるからなぁ・・・。王子は状況的に婚礼を決めたが、俺が結婚すると悲しむ人が多いから困るなぁ」と真顔で返してきた。
ラース村ではマザーをそれとなく見守り、王都では裏近衛として活動し、アーノルド領ではレイシアを見守っている。
正直頭が下がる思いであっちこっちに移動しているマイクロは、彼女を作る暇はないだろうと思った。

 レンとティーナが同室で手配を取ると、自分は1部屋でお願いした。
その足でマイクロが案内すると言うと、アーノルド家に行くことになった。

「よぉ、おつかれ」
「もー、マイクロさんも人使いが荒いなぁ」
「そう言うなって、近衛の仕事は王族を守る事だろう」
「はぁ、この仕事には文句はないですが、マイクロさんが動きすぎなのは納得いかないです」
「まあ、愚痴は後で聞くさ。ちょっと3人を紹介するぞ、リュージとレンとティーナだ。お前も世話になってると思うが・・・」
「ああ、君が差し入れをしてくれた農場のリュージ君だね。食事はとても美味しかったよ」
「いえいえ。今回、王子の旅で学園生から立候補して、今回は私達が担当しています」
「それはお疲れ様。マイクロさんと一緒にいると言うことは、もう事情を知っているのかな?」

 近衛の発言にマイクロは、忘れてたというリアクションを派手にとっていた。
マイクロが「レンは伯爵家の令嬢で、ティーナと一緒にレイシアの友達だから」と説明すると、屋敷からこちらを覗いているソルトに向かって合図を送る。すると、ソルトからOKの合図が出たので4人で屋敷に入ることになった。
客間の一室をレイシアの部屋にしたらしく、案内をしてくれたソルトがドアをノックした。

「ソルト・マイクロ、ありがとう。レン・ティーナ、リュージさん会いたかったわ」
そこにいたレイシアは臨月間近な身重な姿だった。
「「「レイアシアさま、おめでとうございます」」」
「そんな他人行儀は止めて欲しいな。男爵家に嫁いだから、私もレンさまって言わないといけなくなるわ」
「それは困ります。じゃあ改めて、レイシアおめでとう」
「ありがとう、レン。丁度良いというか悪いというか、折角来てもらったのに案内も出来ないなんてね」
「そんなことないです。レイシアの元気な姿と幸せな姿が見れただけで十分です」
「ありがとう、ティーナ。私、今とっても幸せだよ」

 ソルトと家人により椅子を用意される、しばらくは他愛もない話が続いた。
この領に来た目的の、王家の務めで王子がやってくる可能性があると話し、今回は特別にセレーネが一緒に旅をしていると話すと「あのセレーネがねぇ」とレイシアは驚いていた。
内気で大人しい少女の印象が強かったようで、嬉々として旅に出ると予想された王子が連れていくとは思わなかったようだ。
王子も王子で、間もなく観念しなければいけなかった婚礼も、レイシアがスチュアートに嫁いだので早まってしまった。

 ローラは元気に過ごしていると伝えると、レイシアはとても羨ましそうだった。
スチュアートと出会えた学園生活でも、どうしても王家の一員として見られてしまっていた。
幸せな学園生活だったけど、レン達と一緒だったらまた違った楽しみになったのかなと微笑んだ。

 王妃が頻繁に農場へ来て、畑仕事をしていると話すと、驚き半分納得半分だった。
時々、信頼がある商業ギルドの職員から、匿名の贈り物と称して5月くらいから野菜が届くようになったようだ。
それがどれも美味しい野菜で、レシピも一緒に届くようになったらしい。
王家の力を使えば、食べきれない程の量を送ることも出来るだろう。
それでも送られてくる野菜はダンボール1~2箱分程度の量だと言っていた。

 話している途中でお茶が届き、穏やかな時間が流れている。
夕食と宿泊の招待を受けたけど、まずは王子が来るのをこっそり見守る必要があった。
レイシアがソルトにお願いと言って、王子が現れたら宿屋に連絡をくれることを約束した。
「私は案内出来ないけど、アーノルド領を楽しんでね」と言うと、今日は宿に戻ることにした。
スチュアートには自分達が来ている事を報告し、またお茶や食事をしましょうと約束をした。

 見送ろうとするレイシアがソファーから立ち上がろうとすると、痛っと小さな声を出した。
どうやらお腹の子が少し暴れたらしく、このやんちゃぶりは男の子だなとマイクロが笑った。

「そういえば、マイクロさんとスチュアートさんとヘルツさんで、やんちゃしてたようですね」
「おい、リュージ。どこでその情報を・・・ヘルツか」
「はい、最近はセルヴィスさんとも仕事でご一緒していますので」
「何やら面白そうな話ね、次はその話しを聞きたいわ」

 屋敷を出てからレンとティーナは興奮していた。
最後の姿が、か弱い少女だったので妊婦姿は衝撃的だったらしい。
貴族の妻の役割で言えば、貴族家が存続出来るように子孫を残すのが第一の仕事だ。
そういう意味では、今のアーノルド男爵領は幸せに包まれていた。
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