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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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132:駆け足

 ヴァイスが朝から出掛けている頃、ティーナはとうもろこし配りに精を出していた。
ギルドの職員から冒険者仲間、雑貨屋・武器防具屋・道具屋など多くの場所をまわっていた。
ヴァイスは出掛ける時に一緒にダールスの元へ行かないか質問をして、ティーナは現状の立ち位置をきちんと考えて断る事にした。

 騎士の戦い方では冒険者をやってはいけない。
それは対人での戦い方の強さを求めるより、モンスターに対していかに優位な攻撃手段を持つか?手数とカードを増やすことに念頭を置いていたからだ。そんなティーナは冒険者仲間から戦い方の指導を受けてた。

 昨日に引き続き、ザクスが化粧水とスポンジの作成の為研究棟に篭ると言うと、レンとローラがまた見学するようだった。
一緒に農場へ行く合間に、色々とザクスに質問をすることにした。

「研究って順調?何か出来る事とか手配があったら言ってね」
「リュージ、ありがとう。ちょっとさぁ、サンプルが欲しいんだよね。さすがにレンやローラに試してもらう訳にもいかないじゃん」
「そうだね、じゃあ誰にも試してないの?」
「ねえ、リュージ聞いてよ。今のザクスのほっぺプルップルなんだよ」
「リュージさん、ほんっと凄いんです」
手の甲でザクスの頬を触ると、吸い付くようなもちもち具合だ。

「これ、男がこの肌だと気持ち悪いよね」
「炎症とかにも効きそうなんだよ。そうだ、サンプル用の小瓶とか用意出来るかな?」
「じゃあ、ユーシスさんかナナさんにお願いしよう。それで、農場の希望者に少し試してもらうか」
「「ええぇぇ・・・」」
「二人は後でね。ザクスがOK出したらまわすから」

 農場に到着すると、午前の光景として多くの洗濯物を干す職員達がいた。
さすがに多くの職員が暮らしているだけあって、晴れている時は洗濯物も多く出る。
これも役割分担で仕事の一つとしているので、子供が走り回る姿もほんわかしていた。

 ユーシスを見つけると、早速サンプル用の小瓶を20個程お願いしてみる。
「ザクス、スポンジは結構出来たんじゃない」と聞いてみると、研究棟から大量に持ってきてもらったので、ユーシスに色々な場所に配ってもらった。もちろん、使った人に意見を聞いてもらう事も忘れずにお願いをする。
ザクスは化粧水にレモンかゆずを使いたいと言うのでOKを出す。
そして「水も大事なんだよなぁ」と言うので、ワァダをつけることにした。

 いったんみんなと別れて執務室へ行く。
打ち合わせは昨日いっぱい出来たので、今後の課題を出して準備をしていこうと思う。
まずは、これからある予定を整理してみよう。年内の自分に関係ありそうな予定はこんな感じだった。

 夏祭りの準備から実施:5月後半~7月のいつか
収穫祭(縮小バージョン):9月後半~10月いっぱいのいつか
王子の発見・観察・場合によって護衛:4月最終週~最長10月いっぱい迄(3~6ヶ月)
婚礼の儀:11月を予定
学園の夏期休暇:7月中旬~8月いっぱい

 祭りでは出店を3店舗予定している。うまくいけば焼きとうもろこしと何かで、ワインバーからはサングリアを予定している。
アーノルド家のワインが出せないのは辛いけど、もし希望するならセルヴィスの方からもう1品出してもらっても良いと思う。

 土日でメフィーも農場に来るようになって、『グレーナ草』の生育状況を見ると、ザクスに色々相談しているようだ。
そういえば、今日のザクスはワァダを連れていたけど、いずれ二人はバッティングするから会ったら会ったで仕方がないだろう。
噴水の件ではメフィーも巻き込めたら良いと考えていた。

 サングリアで梅酒用の瓶を何個か渡してしまったので、少し多めに瓶の作成を依頼した。
グラスもお願いしているし、試作で風輪を何個かお願いしている。
一度工房へお邪魔してお礼を言うべきかもしれない。

 秋の収穫祭では初めての事なので出来る事は少ないと思う。
縮小してやるようなので、特に打診も受けてないので考えない事とする。
王子の婚礼の儀についても同様だ。これは王家と貴族による結びつきと、国民へのアピールが目的である。
招待されることはまずないだろう。

 そう考えると、後は王子を探しに行く日程だけがネックだった。
噴水の事もあるので、出来れば祭りが終わってすぐ行くのがベストだと思う。
王子の護衛は最悪ずっと見つからなくても良いようで、婚礼の儀までに戻ってくれば良い。
これはあくまで王家の務めを勝手にサポートしているという形なのだ。

 そうは言っても、やるからにはきちんと仕事として果たしたいと考えていた。
一番大事なのは1箇所目から2箇所目の移動だった。
4月末に出立して今は公爵家にいるはずだ、そして3~6ヶ月の旅の工程なら間もなく移動をすると予想される。
間もなく学園長から説明があるだろうから、準備をしっかりすることにした。

 冒険の必需品である一式は、雪山訓練の時使った装備を貸してもらえるようだ。
薬学科からポーション関係も支給してもらえるので、用意するのは武器防具と食事くらいだった。
調理場の責任者には毎回迷惑をかけているようだけど、少しずつ手軽に食べられる食事を準備してもらっていた。

 ノックが聞こえたので返事をすると、ナナがガレリアとセルヴィスを案内してきた。
王子の護衛の事は話してあったので、残せる引継ぎ事項を説明していこうと思う。
屋台の話になったので、とうもろこしは確定にした。
醤油が完成したら焼きとうもろこしで、間に合わなかったら茹でたもので対応する。

 ワインバーからはサングリアを出す予定なので、セルヴィスに確認したらそれでOKのようだ。
ただ、これはアーノルド男爵領のワインではないので、もう一品出してはどうかと聞いてみた。
「ふむ、そうなると良く出ているピザを出したいのだが・・・。あれは釜の問題もあるだろう」
「そうですね、いっそ揚げピザでもやってみますか?」
「あれを揚げるのか?大きいだろう」
「それは一人で食べられるサイズで考えましょう。カルツォーネですね」
ナナにメモを渡し調理場の責任者へレシピが届くように伝えてもらった。

 ガレリアからは噴水のお披露目と、大体の日時と設計について話があった。
紫水晶も多めに仕入れてくれるようで、準備はエントとガレリアに任せば大丈夫なようだった。
後は逆算して一回戻ってくるか、それまで待つ必要がある。

 王家からのグリーンカーテンの依頼は宮廷魔術師団も興味があるようで、ユーシス宛に準備が整ったことが伝わりザクスが代表して行く事になった。勿論人手の件もあったので、ユーシスが付き添って何名か出す予定と聞いている。
そんな話をしているとノックが聞こえてきた。

「リュージ、今大丈夫?」
「ああ、ザクス・・・って凄い人数だな」
「グリーンカーテンの設置に行って来るんだけど、メフィーさんが来たいっていうんだ。大丈夫かな?」
「ザクスが大丈夫ならいいよ。ローラも一緒に行くなら少し護衛を増やしたいけどね」
「リュージさん、今日は農場で見学しています」
「ローラ、ごめんね。ヴァイスかティーナがいれば安心だけど」

 ザクスはユーシス・レン・ワァダ・メフィーを連れていくようだ。
現場では数名手伝いが出てくれるらしい、網をかけたせいで警備に不備があったらまずいからだ。
大人数が出て行くと、入れ替わりにヴァイスとマインがやってきた。
ローラは農場からの警備と一緒に精霊さまの畑へ向かった

「マインではないか?どうした?」
「セルヴィス殿、お願いがあります」
「ちょ、ちょっとまって。なんでヴァイスがマインさんと一緒にいるの?」

 ヴァイスが朝からの訓練について説明を始めると、マインがダールスの娘だということに驚いた。
源氏名があるのは問題ない、多分そういうものだと思う。問題は何故ダールスが娘の事をセルヴィスに任せるかだった。

「父は古い考えの持ち主で、女性は剣を持つべきではないと言うのです」
「ほう、それにしては鍛えているように見えるが」
「はい、父と騎士が訓練している姿を見て、影ながら訓練をしていました」
「さすがに一緒に暮らしていれば、家族が訓練しているかしていないか分かるか。やつは頑健な肉体から繰り出す攻撃を得意としていたからな」
「セルヴィス殿の技は、どれも流麗にして素晴らしいと聞いております」
「誉めても何も出んよ。今はただの酒屋の親父さ」
「でも・・・」

「先日、やつにも負けたしな。どうしてもと言うなら・・・ベリアか」
「ベリア・・・さん?」
「ほら、あそこで稽古をつけている男だ。今いる面子ならやつが一番動けている。もしくは同年代で剣を学んでいる女性でも探したほうが良いな」
「ヴァイス、キアラさんなんてどうかな?」
「キアラかぁ・・・。セルヴィスさん、今日はまだいますか?」
「ああ、夕方には店に出るがな」
「じゃあ、呼んでくるので少しだけアドバイス貰う事は出来ますか?出来ればベリアさんの許可も」

セルヴィスが頷くと、ヴァイスは早速キアラの家に向かった。


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