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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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129:西瓜の試練

 視察が終わった翌日の金曜日、今日は女性チームが視察で周る予定と聞いている。
男性チームは普通に講義を受け、それぞれのグループ活動へ出た。
今日は魔法科の戦闘訓練をする日で、しばらくは自分の出番がないようだったので、それぞれの戦い方を見ていた。
新入生達は瞑想や魔力の練り方など、基礎的な努力をしていたので、じっと見守ることにする。
魔法科の生徒が魔法科の教授を目の前にして、自分に教わる事なんてないなと思っていると活動時間は終わった。

 土曜日は王国マナーグループとティーパーティーグループによるお茶会を予定していた。
朝早くから侍女二人と農場へ向かい、レンとザクスはゆっくり来るそうだ。
ローラにはあまりに王妃がいる率が高いので、誰かと一緒ならいつでも農場へ来て良いよと言ってある。
でも、今日は2グループに捕まる可能性もあるから、そこだけは気をつけて考えようなと話してあった。

 農場へ到着すると、『オープンサロン』を開放する。
次々と集まる王国マナーグループがアイの掛け声で一旦集合すると、自分と調理場の責任者に挨拶を行う。
メニューは既に打ち合わせが出来ていて、材料や調理場からの手伝いはきちんとお願いしてあった。
次回からは有料とは言ってあるけれど、この場所を開放する予定はないので、そこの所だけははっきりして欲しいと告げた。今回は成功しても失敗しても農場としてはノータッチだ。

 それぞれが準備に入り、侍女二人からお礼を言われると、今日の仕事に入る事にした。
まずはユーシスとナナとナディアを呼ぶと、それぞれの進捗状況と備品発注の指示を出す。
祭り実行委員会は次の月曜日に予定していて、今日は午後にラザーがやってくるらしい。
土曜日はガレリアと打ち合わせをする日なので、空いた時間は自分に出来る事をしようと思う。

 ナナとユーシスにはワインバーの出店用のグラスを、ガラス工房へ頼みたいとお願いをする。
なるべく透明なグラスで爽やかさが出る、白用のサングリアが映えるタイプを1種類。
後は赤用のグラスも同じタイプか、少しバリエーションを変えたものを工房と相談して欲しいと伝えた。
予定では、外食の一食分の金額でサングリアをグラスごと販売し、グラスの返却があった場合には半金を返金したらどうかとナナに相談する。
最悪、全部グラスが手元に戻ったら、それはそれでワインバーの備品として使おうと思う。

 続けてナディアに醤油と味噌の経過を聞いたけど、そんなにすぐにすぐ出来るものではない。
数ヶ月先の味見を楽しみにしようという感じだ。ナディアには醤油が出来たと思ったら、調理場の責任者にとうもろこしを焼きながら、醤油をハケで塗って試して欲しいと伝えてある。

 グリーンガーデンの網については、ユーシスが指揮を取って人を派遣し、大きさを決めて発注してあるそうだ。
優先は勿論王家のもので、間もなく網が完成するらしい。
網の設置までこちらが行うかどうかは、ユーシスがきちんと先方と話してあるので安心だった。

 ナディアとナナに「昨日は楽しかった?」と聞くと、「秘密です」と返されてしまう。
どうやら、金銭面の気遣いと共に、男性チームに「どこに視察に行ったか聞くのは止めよう」と協定を結んだそうだ。
その代わり、こちらの情報も秘密ということになっているらしい。
ブルーローズの視察はやましい事はないし、取引先としてみんな知っている。
ただ、女性が接待するということに過敏に反応しているだけかもしれない。

 大体の打ち合わせが終わると、寮のメンバーが勢揃いでやってきた。
ザクスは今日もへちまに夢中で、何個かのスポンジと化粧水を作り上げていた。
後は薬効と香りをどうにかしたいと色々試していたようだ。レンとローラはそんなザクスについて行っている。

「ヴァイスとティーナはどうかな?魔道具は発動出来そう?」
「一週間みっちり講義を受けたからな。後は実際試してみないとだけど、今日はみんなこっちに来ているからここで特訓かな?」
「私はもう大体掴んでいる。きっと平常心でやれば発動できると思う」
「二人は収納持ってきた?」
「「勿論」」

 二人の収納には魔力と非常に相性が良い、小粒の紫水晶を仕込んであった。
三人で季節の畑に行くと、特大のスイカを見つける。
まずはティーナがチャレンジすることになった。

「まずは平常心、瞑想の講義で覚えた感覚は考えない事を考える事、意識しない場所を意識する事」
まるで水面に一滴の雫を垂らした後、同心円状に広がる波紋の後のような静寂が訪れて・・・、ティーナは紫水晶に指で触れた。紫水晶が初めて主人の魔力を認識したかのように、一瞬光るとエコバックが収納へと変化する。
エコバックの口を広げて、はちきれるんじゃないかという大きさのスイカを近づけると、吸い込まれるように収納した。
「ティーナ、おめでとう。それはご褒美で持っていっていいよ」
「やった。リュージありがとう」
「それじゃあ、あっちがとうもろこし畑だから、このくらいのサイズ以上のをもいで良いよ。誰かいると思うから取り方が分からなかったら聞いてね」
「わかった」
ティーナは軽快なステップでこの場を後にすると、ヴァイスも気合が入っていた。

「さあ、次はヴァイスの番だね」
「ああ、ちょっと待ってくれよ」
「呼ばれるまでは大丈夫だよ。明日も農場に来る予定だしね」

「今日のお茶会は出ないのか?」
「ああ、あれは二人に任せるよ。来るのも接待もほぼ女性だしね」
「囲まれるのも悪くないだろう?」
「割り切れるならね。勿論、あの店は楽しかったよ」
「随分クールだな。リュージは、恋とか愛とか興味はないのか?」
「そういう相手は欲しいけど、今は状況が許してくれないだろ。王子も探しに行かないとだし、祭りも急に誘われたし」
「そんなにあれもこれもしなくて良いと思うぜ。楽しめばいいんだから」
「うん、だからきちんと周りを巻き込んでるよ。期待してるよ、ヴァイス」
「はぁ・・・、その台詞かわいい女の子に言われたかった」

 リラックスというか、脱力しまくった状態でさりげなく皮袋に触ったヴァイスは、あっけないほど簡単に収納を発動した。
「さすがヴァイスだな、安定している」
「褒めすぎだよ、努力している姿を見せないようにしてるだけさ」
「それはみんな一緒だよ。魔法の訓練だって地味だもんなぁ。ところで、ヴァイスは好きな人いないの?」
「それこそなぁ・・・、早く一人前になって実績積んで弟も引き上げてやらないと」
「お兄ちゃんって大変なんだなぁ」

 二人してスイカ畑をポンポン叩きながら収穫していく。
別に10個でも20個でも持っていって大丈夫なくらい報酬は貰ったけど、時間停止がついていないので必要な分しかいらないようだ。まあ、もうそのお金は飲んじゃったけどね。

 小さな皮袋に10個のスイカを入れて満足したようで、明日は早速配りに行くそうだ。
何故かそういう差し入れには木剣持参という暗黙のルールがあり、差し入れを置いてすぐ帰るのは失礼に当たるらしい。
最低でも10戦かぁと思うと気が遠くなる・・・、しかも1件に一個のスイカはもしかすると多いかもしれない。
そうすると集団で訓練している所に持っていくことになる・・・、誘われたけどやんわり断った。

 事務棟に戻ると、お茶会の準備が整ったようなので、挨拶をしたいと連絡があった。
侍女二人から注意事項が終わり、アイに紹介されて前に出て行くと、スタンディングオベーションで迎えられる。
一瞬身構えると隣から、「頑張って」と囁かれる。まだまだ、この魔力には抗えると思うと一瞬笑った。

「本日はGR農場へ起こし頂きありがとうございます。限られた時間ですが楽しんでってください」
「それだけでいいの?」
「それだけでいいの」
「祭りの準備があるので、何かありましたら近くの職員に話してみてください。では、ごゆっくり」
侍女二人に手を上げて後をお願いすると、アイが王国マナーグループのメンバーに合図する。

 ティーパーティーグループと王国マナーグループは決して主従関係ではない。
二つのグループは信頼関係で結ばれていた。
15歳以上は酒が飲める世界でも、やはり学生だけあってお茶が似合っていた。
普通ランクの茶葉の隣には、輪切りのレモンが置かれていた。

 初めて見た果物に、最初お菓子代わりの物が一緒に出されたと思っていた。
それを見たマナーグループのメンバーが、カップに入れてお楽しみくださいと助言をする。
普通ランクのお茶が、一気に香りと爽やかさに包まれだす。
「レモンティーと言うらしいです、冷やしても美味しいらしいですよ」
「まあ、素敵ね。それは用意されているのかしら?」
「この後、軽食を用意しております。その後にお出し出来る予定ですが・・・」
「楽しみだわ」

 その後は、サンドイッチやお茶に会う甘さ寄りのお茶菓子が出される。
その頃には、「あなたもご一緒しませんこと?」という決まりきったお誘い文句により、王国マナーグループのメンバーも一緒に食事を取ることになる。食材から料理法を想像し、お互いの事を褒めて褒めて褒めまくる。
そのうちガールズトークに突入し、二人の侍女とアイに多くの質問が飛んだ。

 農場も思えばひっきりなしにゲストが来るようになっていた。
それでも、笑いが絶えない農場を作れたなら良かったなと思う。

 最近ゲストの対応はレンやユーシスに任せていたし、今日はアイと侍女二人に任せて大丈夫そうだ。
ガレリアが来る前に畑を一周まわると各所へ挨拶をする。
今日も良い天気だ。ラザーの用事は多分祭りの話だけど、農場として協力出来たらと思う。

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