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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
125/161

125:祭りの計画2

 早速、ザクスが先頭に立って農場を案内し、『グレーナ草』の生育場所へ案内する。
「これは・・・、見事ですね」
「ザクスー、魔法使わないって言ったのに使っちゃったの?」
「ごめん、リュージ。種はまだあるからさ、先に薬を作りたいなと思って」
「え?ザクス君も魔法使えるのかい?」
「はい、最近少しだけ使えるようになりました」

「そうか・・・、リュージ君。もし良かったらだけど、王国の研究チームと情報交換しないかい?成果にはきちんとした形で応えるし、職員の行き来も出来れば嬉しいんだけど」
「うーん、純粋な研究者と言えば今のところザクスだけですよ。後でガレリアさまと相談しますが、ザクスと契約した方がいいかもしれないです」
「俺はこの農場で研究出来れば十分だよ」
「ザクス、進路はよく考えて決めろよ」
「ザクス君。兼任でも良いし短期契約やその案件に対しての契約でもいい。よく考えて欲しい」
「わかりました、ガレリアさまとリュージと相談して決めます」

 それからユーシスを先頭に定番の見学コースをまわる。
ダールスはそんなに植物に興味がないようで、所々にいる警備に向かって一瞬だけ殺気を込めるという遊びをしていた。
若すぎる者でも瞬時に場所を把握すると、背後にいるセルヴィスを見て剣の柄から手を離す。
「何名か、うちに寄こさないか?」
「本人が希望するなら、いくらでも紹介状を書くさ、もし気に入ったのがいたら教えてくれ」
「ダールスさん、こんなお宝を前に何を遊んでいるんですか」
「メフィー、そういうお前だって何人かアタリをつけているんだろう」
「はぁ、感で本音に当てるのは辞めて欲しいですよ」

 広くて涼しい場所を見つけたのか、オープンサロン前でダールスが木剣を構える。
セルヴィスもヴァイスに練習用の木剣を借りると、演舞のような戦いがはじまった。
戦闘からも長く離れ、ワイン樽ばかり運んでいたせいで、スピードが落ちてパワーがあがったセルヴィス。
方や、第一線で騎士達を率いて、今もなお走り抜けているダールス。

 手が空いている弟子達が見守る中、徐々に劣勢に陥るセルヴィスに息をのむ。
ヴァイスは感心しながら、一瞬たりとも見逃さないように戦い方を見守っていた。

「お前達何をしている、この場所の価値がわからないのか」
間もなく勝負が決するという場面で、やってきたラザーに模擬戦を止められてしまった。
「ダールス、俺の負けだよ。正直助かった」
「セルヴィスよ、酒場の親父相手にむきになった。今度飲みに行きたいんだが行ってもいいか?」
「ああ、歓迎するよ」

 二人は和解したかのように握手を交わすと、ダールスはこの場にいる者達に稽古をつけてやると言い出した。
ラザーが場所を変えてやるように言うと、ダールスは渋々移動を始める。
メフィーは仕方なく後を追うことにし、ヴァイスは今日一日ダールスの後をついて行くようだ。

 セルヴィスは後ろ髪を引かれる思いでガレリアについて行き、ユーシスとナディアと一緒に再び打ち合わせを開始した。
ラザーは何点か案を持ってきたようで、是非この農場の意見を聞きたいそうだ。

 まず、ワイン騒動で化け物となったノルド子爵の別邸だが、現在取り壊しが進んでいる。
早く処理をしたいようで、更地にしてから協会による浄化の祈りを捧げた後に売却されるらしい。
別邸が多くある貴族の住宅区画なので、売る人にはある一定以上の地位が必要になるそうだ。

 次に祭りのメイン会場の候補だが、やはり中央広場から商業区画へ向かう道をメインに考えているようだ。
中央広場にはいくつかのベンチがあるようで、撤去可能らしく緊急時にはここにテントが張れるようになっていた。

「リュージ君、この中央広場に何か水に関係した物を作れないかな」
「うーん、普通に考えると噴水かなぁ」
「噴水とはどういうものかな?」
「水が常時噴出しているタイプと、時間で突然噴出すタイプがある、水がメインのオブジェクトですね。マイナスイオンとか考えるなら霧状になっても面白かな」
「それはリュージ君が作れる物なのかい?もし良ければ専門職も連れて一緒に見て欲しいんだが」
「ガレリア先生、エントさんと一緒に行きませんか?こちらは日程を合わせます」
「うむ、エントなら私から言っておこう。国の仕事なら最優先で何とか出来るはずだ」
「はい。ラザーさん、後は石工の方を都合つけて頂ければ」
「ありがとう、リュージ君。良ければ明日にでも行きたいのだが」
ガレリアを見たら大丈夫そうなので了承する。

 最後にグリーンカーテンについて、王族の住む区画の一部に作りたいと依頼があり、確認して欲しいと言われたそうだ。
これもガレリアが了承したので、材料が届き次第製作に入る予定だ。
問題は特注品の網で、一回作ったので大丈夫だと思うけど、この地域ではあまり使うものではないので手配の問題があった。
グリーンガーデンは王妃がとても感動したようで、農場に来ていない時の集まりの度に話題に出していたらしい。
何件かの貴族家からも、製作依頼や見学に来たいと話があがりそうだ。これはザクスと分担して作業をしようと思う。

 ふと、ゴルバと一緒でどっちがメインの仕事なのだろうと思う、王妃が農場にいる率がかなり大きいので、いっそ外部顧問にお願いした方が良いのかガレリアに質問してみた。
王妃の影響は大きいので、それは止めておいた方が良いだろうという結論だった。

「農場とワインバーは、もうどんな店を出すか決まりましたかな?」
「そうですね・・・。ナディアさん、何か出したい物とかありますか?」
「ええ、私はこの前頂いたとうもろこしが良いかなって思うわ。あれなら塩加減だけ気をつければいいし」
「いいですね、あれは焼いても美味しいんですが。醤油があればねぇ」
「リュージさん、醤油って何ですか?」
「大豆を使った調味料ですよ。今、畑で育てている枝豆が成長した姿ですね」
「それは何時ごろ作る予定ですか?」
「うーん、まだ材料が揃ってない感じなんだよね」

「ユーシスさんは何か案ありますか?」
「食堂で出てきたホットドックはどうでしょうか?あれならパンを二つに割って焼いて、ソーセージを炙りケチャップをかけるだけなので味付けも安定するでしょう」
「リュージ君、ここは食の宝庫だね」
「ありがとうございます。ただ、パンをどうしようかなと。柔らかいパンなら加工をしやすいんですが」
「ああ、国からまだ規制がかかっているのか・・・」

 学園でも柔らかいパンを出すことはしていない。
貴族家では徐々に柔らかいパンを焼いて出している事はローラから話を聞いているけど、この前参加した料理人達はあくまで新しい料理法なのでとゲストにレシピを漏らす事はしていなかった。

「セルヴィスさんは何か案ありますか?」
「ふむ、難しいな。出来ればその日の営業を止めたくはないので、誰でも料理出来る物が良いと思う。心情としてはワインを使った何かを出したいんだが・・・、何せ量がな」
「この農場の分も使いますか?」
「いや、それは息子と約束をしている。ラザーさまには悪いが、何か大きい力で元の出荷に戻しても、次に同じような事が起きたら、ワイン文化まで廃れてしまうだろう」
「構わんよ。王様もその辺は承知してくれているようでな」

 案として出たパンコンテストは開催するらしい。
これは王都で店舗を構えているパン屋限定で、バケット部門とその他部門に分かれるようだ。
当然、今回パン教室に参加した人達には、自重して欲しいと内々に通達されていた。

 屋台については組み立て式で、出展してくれる業者には無料で貸し出ししてくれるようだった。
農場から2店舗にワインバーから1店舗出す事に決めた。
メニューが偏りすぎると断られる可能性もあるようだけど、今まで出たメニューなら問題ないようだ。
ラザーはワインの変わりにエールの大量発注をしないといけないと言い、噴水とグリーンガーデンの準備が出来たら連絡を貰えるそうだ。

 打ち合わせも大体終わったので、場所を移すことにした。
ナディアには食堂にレモン・ゆず他、果物類を多めに持ってきてもらうようにお願いをする。
調理場の責任者を呼ぶと、こそこそと大事な事を決めることにした。

「ガレリア先生、今度ブルーローズの視察へ行きます」
「そうか、先方も是非来て欲しいと言っていたからな」
「そこで、ユーシスさん。予約をお願いします」
「はい、何名で行きましょうか?」
「今いる人で絶対行けない人いますか?これは視察で仕事です」

 ガレリア・セルヴィス・ユーシス・調理場の責任者・ザクスに自分がここにいる。
そこにヴァイスと寮の執事も様子を見て誘う予定だった。
それぞれが、「私が視察に行っても」とか「もうそんな年じゃない」とか「女房子供が・・・」と声が聞こえてくる。
「それって・・・、自分が行くと遊びに行くと思われるのかな?」

 そこに果物をワゴンで持ってきたナディアが現れた。
「リュージさん、どこかに行かれるんですか?」
「ナディアさん、ありがとう。ちょっと視察についてです。誘いたいんだけど、ちょっと祭り関係でいっぱいお願いしたいから、また今度お誘いしますね」
「そうですか・・・、それでこの果物はどうしましょう」

 今回の祭りで問題点の一つと言えば、ワインが少ないことだった。
セルヴィスの葛藤を解決する手段を考えるなら、単純に増量すれば良い。
この世界では15歳で成人となるが、比較的小さい頃からワインに親しまれている。
ワインのボディーを崩さず、女性や子供でも祭りを楽しむ方法、それはサングリアしかないと思った。
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