2
その日ロールは、朝から鼻水がズルズルとたくさん出てきて、どうしようもありませんでした。どうやっても止まってくれず、冗談でもなんでもなく大量なのでお母さんもあきれ、「今日は学校を休んで、一日おとなしくしていなさい」と命じるほどだったのです。
だからロールは一人で自分の部屋にこもっていたのですが、鼻水はとどまるところを知らず、もう3枚目のハンカチがびっしょりになっていました。本当の話、自分の頭の内部にはどんなにか巨大な鼻水タンクが存在し、そこにはどれだけ大量の鼻水がたくわえられているのだろうとそら恐ろしく感じられるほどだったのです。
いったい何がどうなっているのだろうと、ロールは鼻の穴の中をのぞき見ることにしました。だからハンカチを使ってできるだけふき取った後、押し付けるようにして鏡に近寄り、鼻の穴をうんと押し広げようとしたのです。鼻水タンクの中でキラキラ輝いている水面が見えるとでも思ったのかもしれません。でももちろんそんなものは見えず、ただスプーン一杯分の鼻水が、再びポタンと足の上にたれてきただけでした。
ロールは「ひいっ」と声を上げましたが、彼を驚かせたのはたれてきた鼻水ではありません。ガラスを突き抜けるようにして鏡の中から誰かの手が突然現れ、ロールの鼻をつかもうとしたからです。それがとても強い力なので、ロールは痛みさえ感じるほどでした。だけど鼻水のおかげでその手がすべり、彼も一度は逃れることができたのです。
しかし手はあきらめません。指をはじいてピュッピュッと鼻水をぬぐい、今度は鼻の穴の中へ指をねじ込もうとするではありませんか。これにはロールもどうすることもできませんでした。悲鳴を上げながら、鏡の内部へと引っ張り込まれるしかなかったのです。
鏡の内部を通り抜けるというのは、とても不思議な経験でした。あれはガラスの精たちなのかもしれませんが、水銀でできていて本物の布のようにやわらかい服を着た小人たちが、同じように銀色をした帽子をかぶり、ヤリを持って列を作って行進している姿がちらりと目に入ったような気がしたのです。だけどそれは本当に一瞬のことで、ロールはすぐに何もわからなくなってしまいました。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。