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かわいそうな…
作:浅葉りな


 強い強い風が吹いてきて、彼は飛ばされてしまいました。春の嵐です。遭ってしまったら、おとなしく耐えるしかありません。雨と風がおさまってくれるまで、なにひとつできることはないのです。そうしてどこまでも飛ばされていくうち、彼はうっかり自分のことを忘れてしまったのでした。
 なすすべもなく湿った地面に身を投げ出していた彼を見つけたのは、毛むくじゃらの大きな生きものでした。体の割に小さな鼻とひげをぴくぴくさせながら生きものは言いました。
「こんなところでなにをしているんだい?」
「なにをしたらいいかわからないでいるんです。ぼくは記憶喪失なんです」
 彼は、困っている自分に一番はじめに話しかけてくれたこの生きものを頼ろうと心に決めました。ほかにどうすることもできなかったのです。
「ああ、それはかわいそうに。でも大丈夫、きみがこれからどうしたらいいかはぼくが知っているからね。さあ、行こう」
 言うなり、生きものは彼を抱えて歩き出しました。しばらくして、生きものは地面にあいた穴にもぐりました。そして立ち止まって言いました。
「きみの役目はね、ぼくに食べられることさ」
 彼――ヒマワリの種は、なにか言うひまもなく、腹を減らした野ネズミに食べられてしまったのです。合掌。                                                                                                                                                                                                      














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