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介護者が見たバニラエア問題

 バニラエアと車椅子使用者が奄美大島空港で搭乗トラブルを起こしたという。この問題を現場で働く人間の目線で話してみようと思う。


 まずはSankeiBizから記事を引用してくだんの事件をおさらいしてみよう。
 引用元。
 http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170630/mca1706301720014-n1.htm

 奄美空港で格安航空会社(LCC)のバニラ・エアを利用した車いすの障害者の男性が階段式タラップを同社から介助を受けられず自力で上った問題で、石井啓一国土交通相は30日の閣議後記者会見で、「(バニラに対して)サービスの在り方について検証するよう指導している」と話した。

 バニラなどによると、半身不随の男性が5日に関西空港行きの便に搭乗する際、同行した友人が車いすごと持ち上げようとすると、同社が業務委託している空港職員が制止し、担ぐのは同社の規定に違反すると指摘。

 職員が「同行者が手伝い、自力で昇降できるならいい」と発言したため、男性はタラップを1段ずつ、腕を使ってはって上り搭乗した。

 引用終わり。



 これに対して航空会社の対応より障害者本人を非難する声があがっている。


 どちらに責任があるのか?
 どうすればいいのか?
 今まさに障害者の移動を介助する現場で働く私に直結する問題なので、現場目線で考えてみよう。

 まず、自己紹介しておこう。
 私は介護福祉士だ。それに視覚障害、精神障害者、身障者の外出をサポートする資格を持っている。
 彼らが遊びに行ったり旅行するときに付き添って車椅子を押したり排泄のお世話をしている。
 はっきり言って3Kの仕事であるし、時給も800円とけっして高くない。また、移動距離が短い場合が多いので、炎天下で車椅子を押して200円ぽっちしか貰えないこともしばしばだ。

 それでいて、ちょっとした不手際が人命事故につながるのでハッキリ言って割に合わない。
 よく、映画なんかタダで見れるんでしょ?と聞かれるが、付き添っている方は、発作や排泄の心配をしてピリピリしている。とても鑑賞できる状態じゃない。

 そういうわけで実際に働いている人間の意見がまったく伝えられていないので筆を執ることにした。


 まず、バニラエアの対応から見ていく。

 結論を先に言うとバニラエアは完全に悪者じゃない。一生懸命対応しようとしていたが、詰めが甘かった。

 障害者の円滑な移動に関してバリアフリー新法という法律が施行されている。
 これによれば、公共交通機関は障害者の昇降や移動が円滑にできるよう設備や人員を整備することが義務付けられている。
 障害者が飛行機に乗りたいといえば、原則として乗せてあげられるよう手を尽くさねばならない。
 具体的にいうと施設をバリアフリー化したり、昇降を介助できる従業員を用意しなければならない。また、障害者にも「これこれこういう設備がある」とわかりやすく案内表示しなければならない。。
 ただし、いきなりエレベーターを増設したり段差を解消するわけにもいかないので、平成32年ごろまで猶予期間がある。

 バニラエアはHPで事前搭乗の申請を募ったり、空港に工事準備をしたり、ゆっくりとではあるが努力していた。
 今回はタイミングが悪かったというしかない。

 ただ、一部にこんな意見がある。

 LCCは廉価が売り物なのだからバリアフリーまで面倒を見切れない。身障者に優しくするコストが運賃に転嫁されてしまうでないか。身障者はLCCを我慢するか、他社に当たれ。

 これは間違った考えだ。バリアフリー新法にLCCは適応除外とは書いてないので、いずれ経費は必要になる。

 そして利用する側も移行期間であることを考慮して、事前連絡などの協力はしなければならない。

 コストが手間がとか言ってる場合じゃないのだ。なぜならバリアフリー新法には罰則があって、行政による厳しい指導もある。今回の件がそうだ。

 くだんの男性が「障害者でもスグに乗れなくてはいけない」趣旨の意見を述べているが、もう少し待ってやれよというしかない。

 ボーディングブリッジを伝って、ロビーから車いすのまま機内へ、というわけにはいかないのだ。

 実はボーディングブリッジをレンタルする費用は馬鹿にならない。牽引する車やドライバーも航空会社が手配する。LCCはかわりに昇降階段を使うことでコスト削減している。

 問題はここだ。

 男性は「車いすを介助者数人で担ぐ」という提案をしたそうだが…。


 はっきりって、ありえない。一歩間違えれば車いすごと介護者まで転倒してしまう。それに階段が急すぎて危険だと空港職員も指摘していた。
 では、どうすればいいかというと、車いすから降りてもらって、体を両サイドや後ろを支えながら、ゆっくりと昇ってもらう。
 もし、歩くことができない場合は、ハンモックのような帯に座ってもらう。これを二人で前後から担ぐ。それが出来るのも狭い階段だけだ。
 タラップのように壁に囲まれていない場所では危険がある。

 そこで昇降機などの器具を使う。

 ちなみに私が使っている機械がどんなかというと、一人乗りのカートにベルト式のキャタピラがついたものだ。耕運機のように二本のアームがついていて、後ろから介護者が支える。
 これで階段をカタカタと昇っていく。

 楽なようで結構重い。電動アシスト機能がついていて押すのは楽だが、支えるために力が要る。スイッチのオンオフのタイミングも気を遣う。
おまけに人命を預かっているので心身ともに消耗する。

 これだけの負担を空港職員に強いるのは無理があろうというものだ。事前連絡を受けてリハーサルや受け入れ準備を整えないといけない。

「すぐに」というのは理不尽な注文だ。


 それで男性は車椅子を降りて自力で登ったというが、これはどう考えたらいいのだろう。


 結論から言うと、パフォーマンスだ。

 脊損の車椅子利用者と接してきた介護者ならピンとくるかもしれない。
 彼らは結構自己中でわがままで気難しい。

 なぜなら先天的な障害者と比べてあきらめというものがないからだ。

「俺は五体満足だった。何でこの俺が!」
「畜生。運命を呪ってやる、世界を呪ってやる」
「俺はまだまだ頑張れるのに、なんでなんだ!」

 こういうやり場のない怒りが鬱積している。
 もちろん、すべての車椅子利用者がそういうわけではない。事故などで後天的に障害者になった人は扱いが難しいのだ。
 まだまだ頑張れる。周囲を見返してやりたい。そういう気概が歪んだ自尊心になる。

 実際に私が研修期間中にある車椅子利用者を介護したところ、とんでもないクレームが介護施設に届いた。

「彼女は優しさを装っているが、僕に対する「特別」な愛情が感じられない。通り一遍のサービスを提供して勤務時間をやり過ごせばいいと思っている。人を見下すのもいい加減にしろ。僕を馬鹿にする冷血なビッチは相応の天罰を受けねばならない」

 悲しいとは思わないか。
 不幸が彼をそこまでひねくれさせてしまったのだ。


 彼らは常に仮想敵を求めている。それが福祉士だったり施設だったりする。今回はバニラエアだったというわけだ。

 そこで被害をアピールしようとして階段を這い上るなどひねくれた行動に出たふしがある。

 だからといって、彼を一概にクレーマーだのプロ市民だの責めてはいけない。

 あなたが突然、下半身の自由を奪われて、「明日から一生車椅子です」と言われたら、どんな気分になるだろう。

 まだ若くて元気が有り余っていれば、怒り狂うかもしれないだろう。

 バニラエア、昇降を断られた「彼」

 双方の気持ちを斟酌しないとバリアフリー問題は解決しない。
誤解なきよう申し上げておきます。
「心理」を理解することと「賛同する」ことは全く異なります。
訴訟をちらつかせたり、取り決めを無視することは決して支持できることではありません。
ただ、騒ぎを起こす障害者の心理を理解しておくことでより適切な解決策が取れるのではないでしょうか。介護福祉士は児童心理学から終末期患者の心情、障害を持つ母親の気持ちに至るまで理解する技術を学びます。そうしないと真のニーズをつかめないからです。
「彼」に必要なケアは精神医療だと私は考えます。
ネットで言われるように障害者を政治利用する介護者や営利目的のプロ障害者も一部にはいるでしょう。
しかし、それはレアケースです。障害者みんながみんな悪質ではないのです。もちろん、法に触れるケースや精神的な支援が必要なケースには適切に対応していなければいけません。
最後にただ一つ言いたいことは、「困った人」をプロ市民やパヨクというテンプレで片づけないでほしいということです。政権与党がいう様に「丁寧に、しっかりと、」状況を見ていくことが大事です。

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