久しぶりに明日は非番だ。
仕事に一段落つき、外にでると、もう辺りから冬の冷たい空気が肌に感じられた。
都会の夜はなんて明るいのだろう。いまさらそんなことをふと思い、一人でくすりと笑ってしまった。
最近はこの都会を見ることなく、休む暇もなく働いていたせいだろうか?
――契約者…
契約者は主に夜活動する。
彼らを追う我々の生活も、自然と夜に向いているのだろう。
知らず知らずのうちに、自分でも気がつかない疲れがたまっていたのかもしれない。
一度背伸びをし、私は乗り慣れた愛車を走らせた。
夕飯はどうしようか。
ひとりでレストラン?それともコンビニ?
…うーん…
しばらく考え、前方に見えたコンビニにベンツをとめた。
今日は疲れたし、明後日のためにも早く寝よう。
1
「…霧原、さん?」
入ってそうそうに声が聞こえた。
まさか自分に向けられた声だとは思ってもみなかったため、思わずあたりを見回した。
黒い髪でTシャツとジーンズ…
今はコンビニのロゴマークが刺繍された制服を着てはいるが、すぐにわかった。
「李、君…?え、どうしたのこんなところで…」
動転して分かり切ったことを聞いてしまった。
恥ずかしい…。
「僕ですか?…バイトです。霧原さんは、お仕事の帰りですか?お疲れさまです。」
…いつもと同じ…
笑顔の彼に会えて、少し嬉しかった。
「え、えぇ…。李君もバイト、大変ね。」
「ありがとうございます。…あ、携帯…でなくても、いいんですか…?」
「え?…あ…」
いまのいままで、携帯がバイブしていることに気がつかなかった。
2
「…で?コンビニでバイト中の彼と偶然あって、私の電話にでるのが遅れたと?」
一旦外にでて電話にでると、相手は高校時代からのつきあいの香那美だった。
「だからごめんって!悪かったよ、香那美…」
「ふうん…ま、いいけど?…それで、噂の彼とはどうたったの?いい雰囲気?」
相手がにやりとしている顔が思い浮かぶ。
私は少しムキになって答えた。
「だから、そんなんじゃないって、何度もいってるじゃない!彼とは、ただ以前事件で知り合って、それで、たまに偶然街中で…何回か会うって、だけで…」
「へえ?偶然?偶然にしちゃ、仕事で忙しくて、なかなか休む暇もないあんたとよく会うって、なんだかね―………
――運命とか?」
「だーかーらー!」
「わかったって。まったく、あんたってからかいがいがあるよねぇ」
「まったく、人で遊ばないでよ…それはそうと、何か用事があるんでしょ?」
「え?えーー…なんだっけなぁ…」
「ちょっとぉ!」
「冗談、冗談。明日、美咲も非番でしょ?」
「そうだけど…?」
3
電話を終えると、李君がそこに立っていた。
「え…ど、どうしたの?お店は?」
「ちょうどさっき、交代の時間だったんです。だから今日のバイトはもう終わりました。霧原さんは、もう電話の方、終わったんですか?」
「うん、ちょっと友達からね…明日非番だから」
「そうなんですか…。じゃあ、僕はこれで。
――おやすみなさい」
彼が笑顔でいった。
「うん、おやすみなさい」
私も笑顔でかえす。
彼にあえて、少しだけ元気がでた気がした。
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