挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

とある都の条例に基づく、童話『ジャックと豆の木』に対する法学的解釈における見解

作者:朝比奈和咲
 童話『ジャックと豆の木』に対する偏見の強い作品です。もし、童話『ジャックと豆の木』に対してのイメージを壊したくない方は閲覧しないことをおすすめいたします。
 なお、私は『ジャックと豆の木」にはなんの恨みもございません。また、この物語はフィクションであることを明記しておきます。
 例えそれが架空の世界のお話であろうとも、○△都は犯罪行為を許しは致しません。○△都は都の条例に基づき童話『ジャックと豆の木』を発禁処分に致しましたので、ここにその主を通達致しますとともに、出版社は御対応をよろしくお願い致し(そうろう)
 都の見解は以下の通りによる所存でございます。何とぞよろしくお願いいたす。

 都より厳選して選び抜かれた秩序や法律に詳しい方々によって構成された第三者委員会の見解は以下の通りになります。


 被告人ジャックの犯罪行為について以下に明記する。

 被告人ジャック(以下ジャックとする)の行動と共に我らの見解を述べていきます。
 ある日のこと、貧しい家に生まれたジャックは母親におつかいを頼まれました。その内容は「街まで行って、ミルクを買ってきて」との内容で、その案件を承諾したジャックは、母親からミルクの代金としていくらかのお金を貰いました。そして街に向かうため、通過せざるを得ない森に入りました。
 が、森で一人の妖しい男に出会います。その男はジャックを呼びとめて、ジャックに怪しげな豆を買わせようと致します。そして、ジャックは母親からミルクの代金として受け取った代金でその豆を購入致しました。そしてミルクを買うことなく帰宅をしました。
 はい、ここでジャックに詐欺罪が科せられます。母親とのミルクを買う約束を反故にしただけでなく、その代金で別の物を購入したからです。つまりジャックは母親を騙したのです。当然、騙された母親はそのことを知り激怒します。当然です、当たり前です、ここに二人の間に親子関係が成立していなかったら母親はジャックを告訴していたかもしれません。
 話を進めます。ジャックは母親に怒られたことを不服として不満をたらたら言いながら、夜中にその豆を自分の家の前に広がる平地(土地の所有権不明)に蒔きました。翌朝になり、ジャックが目を覚ますと辺りが暗いのを不審に思い、外に出ます。すると、昨日にジャックが蒔いた豆から芽が出て、それは一晩のうちに大きく、太く成長してしまい、ジャックが気付いた時には雲を突き抜けるまでの巨大な豆の大木になっていました。
 ここでジャックがこの大木を見て以下のように考えたと書かれています。
 ―うわぁ。なんて大きな豆の木なんだ。これをつたっててっぺんまでのぼっていったら、どこまでいけるのだろう―
 はい、ここでジャックには実効支配による土地の不法占拠が適用されるとともに、他者への領有権の一つの空中権の侵害にもつながります。現に、ジャックの母の家は朝だというのに、この豆の大木のせいで陽射しが窓から入らないという不利益を被ったからです。だが、ジャックはそのことに気付かずに(あるいは気付かないふりをしていたのかもしれない)この豆の大木をのぼって行く決意を致します。
 ジャックは豆の大木をどんどんのぼって行きまして、そして雲の国に辿りつきました。入国審査もせずにパスポートも無しに他国に入国したということは、国際法で定められた不法入国罪が適用されます。
 雲の国に着いて、彼は雲の国をうろうろして、そして一軒のとてつもなく大きな家を見つけます。その家に、彼は在住している被害者の鬼(氏名不明につき仮名)さんの許可もなく侵入いたします。住居不法侵入罪がここで適用されるのは言うまでもありません。
 その家に侵入したジャックは、珍しい物を鬼さんが使用しているところを目撃いたします。それは金を製造するニワトリでした。そのニワトリを使用して鬼さんは金をいくつか製造した後に、鬼さんは素敵な音楽を奏でるハーブを用いて眠りについたとされます。
 ジャックは鬼さんが所有する二つの物を家に持ち帰れば、きっと我が家は裕福に暮らしていけると考えました。そしてそれを実行に移します。ジャックは眠りについている鬼さんに気付かれぬようにニワトリとハーブに近付き、それを奪って逃走を謀ります。
 ここでジャックには盗難または横領罪が科せられます。
 逃亡を試みたジャックでしたが、その逃亡はハーブに付属していた盗難防止機能(所有者以外がハーブに触れた時、そのことを所有者に伝える機能)の作動により、所有者である鬼さんに気付かれてしまいます。眠りから覚めた鬼さんは、急いでジャックを追いかけ始め、ジャックに対しすぐにその場で制止するように求めます。
 だが、ジャックは止まりません。逃亡を続けます。ここで、強奪罪が科せられます。また、ジャックは追いかけてくる鬼さんの追跡を振り払おうとして、数回の攻撃的行動も確認されています。暴行罪です。
 入国した場所にある豆の大木に先に辿り着いたジャックは、自国に戻るためにその大木を急いで下りていきます。その様子を見て鬼さんもその豆の大木を不慣れながらも急いで下りてジャックに追いつこうとします。
 先に自国に辿り着いたジャックは、豆の大木を下りながら追っかけてくる鬼さんを見て、なんとかしなければと思い、家から斧(刃渡り二十センチ以上)を持ってくると、その大木を鬼さんがまだ下っている最中なのにも関わらず斬り倒そうとします。この状態で大木が切り倒された場合、鬼さんは地上からはるか高いところから地面に落下することになり、死に至る結果を招くことは誰にでも分かることです。
 そして、ジャックは冷酷にもそれを実行しました。ジャックは斧を大木に打ち付けます。一、二、三、四回目ぐらいで大木は傾き始め、亡くなられた鬼さんは必死に「止めてくれ」と叫んでいたそうです。しかし、ジャックはそれを聞かず、五、六、そして七回目。ついに大木は大きな音を立ててゆっくりと倒れて行き、大木にしがみ付いていた鬼さんは、全身強打による内臓破裂と脳挫傷により、まもなく死亡いたしました。
 外での騒ぎに気がついたジャックの母親は驚きと共にジャックに問いただします。ジャックが母親に事の内容を打ち明けると、その後母親は何事もなかったかのように振る舞い、そしてジャックと母親はその後、鬼さんから奪った二つの物を使用して幸せに暮らしたそうです。
 なお、鬼さんの遺体は現在も発見、確認されておりません。

 我々、第三者委員会に所属する私たちはこのジャックが犯した、あらん限りの悪事を見逃すわけにはいかず、今すぐにでもこの場で裁きを下したい所存であります。ジャックの犯した罪状は簡略にまとめると以下の通りです。

 詐欺罪、不法占拠、第三者に対する空中権の侵害、不法入国罪、住居不法侵入罪、盗難または横領罪、強奪罪、暴力罪、銃刀法違反(凶器に斧を使用したため)、殺人罪または動物愛護法違反(亡くなった鬼さんが人間なのかそれ以外なのかの判別がつかないため)、死体遺棄罪。

 ですが、我々はこのジャックに対する一連の行動に対し、不起訴処分に処することになりました。その理由は以下の通りです。

 第一に、この事件が発生してからすでに八十年以上が経っており、既に時効が成立しているかと思われるため。
 第二に、この事件が多分、我々の法律が適用される場所で起きた事件ではない気がするため。
 第三に、そもそもこのお話が童話であり、非実在なお話であるために我々が口を出せるようなことではない(超法的措置)

 以上の三点により不起訴となったわけではありますが、我々はそんなことが言いたいのではありません。
 このお話がいまなおも童話として子どもたちに語り継がれているというのは、健全な青少年に対しあらぬ誤解を招くことに繋がることになり、いつか重大な事件を引き起こす引き金になるかもしれないという危険性を含んでいるかと思われます。
 犯罪は犯罪です。それがどんな環境で育ち生きてきた人であろうと、やっていけないことはやってはいけないのです。
 ですが、ご覧の通りこの童話は犯罪のオンパレードです。一人の少年が犯罪に手を染めてそれを次々と実行して、さらに事後処理を済ませ、そしてその後二人は幸せに暮らすという内容で描かれたこの作品が、子ども達の常識として広まることは、青少年の健全な育成に対する妨げに必ずなることでしょう。
 故に、この童話『ジャックと豆の木』を本日より発禁処分に致します。これは第三者委員会で可決されましたことですので、此処にご報告いたしました。

 なお、成年指定として発行、書店等にての発売は、第三者委員会の審査を通り、認可を受けた物のみ許可されるとします。
 以上で、第三者委員会の見解及び報告を終了致します。


 この報告書の作成者の見解と愚痴(非公表)

 まず、童話を摘発すること自体がナンセンス。報告書の冒頭らへんの語尾が一部乱れたのは、第三者委員会のお偉いさんからの要望。あいつらも暇なんだろうね。
 果たしてこいつらがこの童話をしっかりと読み込んだのかが謎。彼らの都合の良いように解釈されているとしか思えないね。ジャックはお金など渡されてはいない、渡されたのは牝牛。それを街まで連れて行って、売ってお金を手に入れて帰って来てって言われたの。ミルクを買いに行くって、明らかにおかしいじゃねーかよ。
 鬼が完全な被害者として説明されているけど、童話ではそんなことねーぞ。読んでみれば一目瞭然、こいつらはどこを読んだらこんな解釈になるんだよ。
 てか、この条例ってほぼザル法だから笑える。誰が子どもにお金を与えるんだよ。子どもが自ら本屋に行って自分で手に入れた金でこの本を買うわけねーじゃん。あいつらそこが分かってないんだもんなー。金を払うのは大人なんだから、買うのは大人なんだから。成人指定にしようがしまいが、結果は一緒。
 だとすると、この条例で得をするのは○△都の第三者委員会だけだろうなー。こんな下らないことをやって金が貰えるんだから、いいよなー。羨ましいわー。まさに作られた就職先、というより、都民に対する就職詐欺だよな、これじゃ。
 まあ、報告書を作成する俺も、その一員として加わっているのだから、そんな文句は言えねーけど。今日の仕事はこれで終わりか、はい、おつかれちゃん。
 お読み頂きありがとうございました。
 ご意見、ご感想お待ちしております。まだまだ未熟者ですが、何とぞよろしくお願いします。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ