第6話:影の歌姫
「ふぅ…初日から疲れた…」
授業と放課後の質問責めが終わり、司羽は一人帰路についていた。ルーンはリアと委員会があって一緒には帰れないらしい。と言う事でこれからマスターの所にでも行こうかと思っているところだったりする
「御礼も言わなきゃいけないしな。一日でどうにかなるとは思えないけど白銀の女の子の情報も聞いときたい」
そう独り言を言って店の方に歩く。店までは学院近くの公園を突っ切るのが一番近いのだが、その公園のまた広いのなんのって…。広場が中心にあり、それを取り囲む様に木が大量に生えている。森と勘違いしてもおかしくない様な公園だ
「…にしても広いよなぁ…学院にも森見たいなところあるけど、ここの世界ってどんだけ土地が余ってるんだろ」
司羽がそう言いって森の中に入り、この世界に生えている植物を眺めながら進む。すると暫くして綺麗な歌声の様な物が聞こえてきた
「歌声…?異世界だし、妖精が歌ってても別におかしくないんだろうけど…」
そう言って、ついつい声のする方へと足を向けてしまう。美しくも悲しみがあり、優雅だが寂しい様な。そんな心奪われる歌声の方へと
「…っ…!誰っ!?」
その歌声の持ち主は司羽が近寄るのに気付いて身構えた。
「…ミシュ…?さっきのってミシュの歌だったのか?」
「司羽…?なんでこんな所にいるの?」
ミシュは警戒を解いて司羽に言った
「なんでこんな所にってのは俺も疑問なんだがな…。この先にちょっと用があってな、公園を抜けるのが一番速いんだ。そんでこの森の中に入ったら誰かが歌ってるから見てみたんだよ」
分かりやすい説明するとミシュは何か言いたげにこちらを睨み付けた
「ふぅ、つまり…私の歌を盗み聞きしたってわけね…。」
「偶然だって。だがまぁなかなかの歌声だったぜ?」
「ふん…当たり前でしょ…?」
ミシュはそっぽを向いてしまったが、司羽にはミシュの顔がほんのり赤くなっているのを見逃さなかった
「今度また歌ってくれよ、時間がある時にでもゆっくりさ」
「な、なんで私がそんなこと…。大体、私は人前で歌ったりしたくないわ」
照れているミシュを見て司羽は笑みを零さずにはいられなかった
「気が向いたらで良いよ。…それじゃあ、俺はもう行くから」
司羽がそう言って立ち去ろうとすると
「ちょっと待ちなさい、私も行く」
ミシュがいきなりそんなことを言い出した
「一緒に行くって…何処に行くか分かってんのか…?」
「知らないわ?ただ何となくついて行こうと思っただけ。ダメかしら?」
「いや、ダメじゃないけど…」
「ならいいじゃない」
ミシュはそう言って、司羽について行く事になった。司羽はミシュの独特のリズムに困惑しつつも、苦笑を漏らした
「マスター、司羽です。この度は本当にありがとうございました」
「いや、いいんだ。若者は学ぶべきだからな」
今日もまた安楽椅子に座りつつ、グラスを磨くマスターに司羽は頭を下げた
「で、そっちの嬢ちゃんは誰だ?坊主が言ってたルーンとか言う家主か?」
「え、あ、私はミシュナと申します」
マスターに聞かれて少し緊張した様に答えるミシュ。まぁ俺も最初はそうだったさ。そう思っているとミシュが耳打ちをしてきた
『ちょっと…何よここ…あんたこんな所に何しに来たの?』
『あの人は俺に学院編入をさせてくれた人だ。俺はマスターって呼んでるが、名前も何もかも謎だ』
ミシュに耳打ちしかえすと、ミシュはマスターをジーっと観察する様に見た
「どうした嬢ちゃん?…飲むか?」
そう言ってマスターはグラスに比較的アルコールの弱いカクテルを注いだ。まぁカクテルは普通にアルコール高いの多いし比較的に低いだけだから濃度は低いとは言えない。
「う…私お酒は…飲んだ事ないし…」
「何言ってんだ。少し位飲める様にしとけ、奢りだ」
マスターはそう言ってミシュに進める。と言うか奢ってばかりで客が来てる様にも見えないし大丈夫なのだろうか?と言うかこの世界に20歳以下はアルコールをとってはいけないと言う法律はないらしいな
「坊主もほれ。嬢ちゃんに手本を見せてやれ」
「手本って…まぁ頂きます」
昨日分かった事だが司羽はかなり酒に強かった。マスターも初めてでこの強さは以上だと言った程で、その時にアルコール濃度の高いカクテルも飲んだが司羽はそこまで酷くは酔わなかった。司羽はグラスを傾け、ミシュは困った様にグラスを見つめる
「ほらミシュ、お前も飲んでみろ」
「うー…分かったわよ…」
そう言ってグラスを手にするも、まごつくミシュを見て司羽は苦笑する
「それじゃあ…少しだけ…」
そう言ってミシュはグラスを傾ける
コクッ…コクッコクッ
「………」
ミシュは一口飲んでから一気にグラスを傾け、カクテルを飲み干した。そして沈黙
「………」
「…おーいミシュ…」
パタッ
ミシュがカウンターにとっぷする
「…まさか一杯でブッ倒れるとはな…」
「お、おいミシュ!!大丈夫か!?おーい!!」
揺さぶっても返事がない。
「連れて帰ってやれ」
「……家が分からないんですけど…」
司羽はそう言って溜息をついた
「司羽おかえりー。何処行ってたの?…って司羽その子は…?」
「あー。ちょっとな」
呼び出し鈴を鳴らすと中からルーンが出て来る。ミシュはマスターの言う通りに送って行こうと思ったが、家が分からないので取り敢えず連れて帰ってきた。うーん…何だか犯罪っぽいなぁ…
「ちょっとって…。その子名前は?」
「ミシュ。あ、本名はミシュナだっけか。連絡先知らないから家に連れて帰ってきちまった。少し待ったんだが起きる気配ないし…」
そう言うと、ルーンは呆れた様に司羽を見た
「司羽…それ犯罪じゃないの?…でもどうしよう…」
「うーん…」
二人して玄関先で頭を悩ませてるとミシュが身悶えする様に動いた
「司羽…」
「ミシュ、起きてくれたか」
ミシュは虚ろな眼で自分がどういう状況か確認する
「ここは…?」
「俺のってか、ルーンの家だ。お前がいきなりブッ倒れて、取り敢えず起きない見たいだから連れてきた」
そう言うとミシュはルーンの方を見て、そう…と呟くと力なく背中により掛かった
「つまり私は食べられちゃうわけね」
「何言ってんだ…。そんな気はない」
司羽は呆れた様に溜息をついた
「ミシュナちゃん…だっけ?泊まってく?家まで文書送っとくけど」
「うん。ありがとう…でも文書はいらない…家に誰もいないから…」
そう言ってミシュは再び眠りに落ちた
「えーっと…取り敢えず部屋に運ぶか…」
そして、ミシュはルーンの家に泊まる事になった
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