第1話:ルーンと言う少女
「うん。なかなか旨いなこれ…」
そう言って何だか分からない動物の肉にかぶりつく。
森の中に飛ばされてから三日目になろうとしていた。言われた通りにあの少女を捜そうにも名前すら分からないし、幾ら森を彷徨っても村や街にも出ない。
生きる為に食物を採るのにも慣れて来る始末だ。まさか自分で火を起こす事になるとは思ってもいなかった。
今食べているのは何だか兎の様な可愛らしい動物で最初は何だか食べるのに抵抗があったが今ではスッカリ主な食料だ
「あー、何時までこんなサバイバルな事しなきゃならないんだ?大体人に会ってないぞ。本当に人がいるのかここは…」
何だか悲しくなってきた。あー、でも夢じゃないんだよなぁ…本当に現実って傍迷惑だよなぁ…
「はぁ…ごっそさん……そろそろ行くか…」
行く当てもないが動かなければしょうがない。そう思って立ち上がる。その瞬間…
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
結構近くから女の悲鳴が聞こえた
「…熊か露出狂でも出たのか…?」
どちらにしろ人がいて、助けを必要としているのだろう。司羽は悲鳴の聞こえた方へ急いだ
『グルルルル…』
「ひっ…」
普通の熊を更に巨大にした様な生物が少女にジリジリと近寄る
「いや…誰か…助けて…」
『ルガァァァァ!!』
少女が眼を閉じた瞬間に、その生物が少女にとびかか…ろうとしたのだが…
「人様を襲うなど…付け上がるなぁぁぁぁぁっ!!!」
ドゴッ!!
司羽はその生物の顔面に右ストレートをぶちかます。司羽は素手での戦闘は得意ではないが、それでもその生物には十分だったようだ。泡をはいて崩れ落ちた
「ふぅ…間に合ったか…」
司羽は少女の方を見る。そこにいたのはさっきの少女と同じくとんでもない美少女だった。金髪の長い髪に意思の強そうな碧い瞳。発育はまぁまぁだが、背がそれほど高く無いのでまぁ悪くはないはずだ
「お、おい…大丈夫か…?」
スッカリ腰を抜かしているらしい少女に近寄り声をかける
「た、助けてくれてありがとう…で、でも…腰が抜けて立てない…」
少女はあはは…と笑いながら言った。司羽はそんな少女を見て少し考えた後背を向けた
「ほら、おぶってやるから乗りな。」
「…え。いいの?」
「良いから早く乗れよ」
そう言うと少女は怖々と背中に乗って来た
「ん…ありがと…」
「どう致しまして。所で…少し聞きたい事があるんだが…」
少女は首を傾げて司羽の言葉に耳を傾けた
「ボクの名前はルーン!これでも魔法とか使えたりするんだよ♪」
ふむ…質問は一通り終わり少女…いや、ルーンとも大分打ち解けた。ルーンが言うにはここの森は魔法磁力だかの関係で魔力の流れが見えない人が入ると出られないらしい。が、ここでは良質のアイテムが取れるらしい。まぁ取り敢えず出れる様なので、ルーンが住んでいる場所に行く事になった
「それで…?魔法とやらが使えたりするのにあいつに襲われて泣いて居たと…」
ジロ…とルーンの方を見る
「うにゅ…だっていきなり魔力が足りなくなるなんて…つまりあれだよ想定外ってやつだよ♪」
話を聞く限り魔力ってのは日常で蓄積されるらしく、人によって限界があり、限界が大きい程回復もまた速いらしい。ちなみにルーンの話ではこの森は魔力の回復が出来ないと言う事だ。あの野郎…なんつー危険な場所に連れて来やがった…。
「でも、司羽が助けてくれたんだから何にも問題ないよ♪」
そう言って、ルーンは首にギュッと抱き付いて来る
「あーはいはい、抱き付くな戯れつくな…で?後どれ位で付くんだ?」
「もうすぐだよ♪ここまで出ると魔法磁力の効果もないしね♪」
ルーンがそう言った途端に森の奥から光がさした。司羽は急いで光がさす方に向かう
「おおぅ…デカいな…あれは豪邸と言うやつだな…」
森を抜けた先にあったのは大きな家。正確には森の中の木が生えていない所に家が立っている感じだから、抜けたと言えるのかは疑問だが…
「まぁ大きいよねぇ…独り暮らしには大きすぎるよ…」
「ん…?独り暮らしなのか?」
そう言うと、あれ?言ってなかった?と返して来た。ルーンが一瞬哀愁を帯びた眼をしたが、司羽は気がつかなかった
「取り敢えず入って♪というより私が歩けないからそうしてもらうしかないんだけど♪」
「了解」
ルーンが鍵を出して司羽が受け取る。鍵を開けて中に入ると西洋風の作りになっていた
「すぐそこの部屋だよ、リビングになってるから♪」
促されるままにリビングに入るとそこもまた広かった。取り敢えず司羽はルーンをソファーに座らる。ルーンは降りる時に少し渋ったが無理矢理剥して座らせた。
「あー我が家だぁ〜♪何だかんだ言ってここが一番落ち着くなぁ♪」
ルーンは寝っころがりながらそう言った。
「我が家ねぇ…まぁ確かに落ち着く場所ではあるな…」
あれから三日間帰っていない地球の我が家を思い浮かべて言った
「うにゅ〜♪そう言えば司羽は何処に住んでるの?森の事も知らなかったし…旅してるとか?」
「俺は…この世界に来たばかりだからな…」
司羽はルーンに自分のここに至るまでの事を簡単に話す
「白銀の長い髪の女の子かぁ…」
そう言ってルーンは、うーん、と考え込む
「ああ、何か知ってる事とかないか?」
司羽が聞くとルーンは知らないと首を横に振る
「名前も分からないなんて幾らなんでも調べようもないし…」
「だよなぁ…せめて何かヒントが欲しかったよ…はぁ…」
司羽が溜息をつくとルーンは何かを思いついた様に指を立てた
「でも違う世界から来たって言う事は司羽は今は家無き子なの?」
家無き子って…まぁ間違いじゃないので頷く
「そっかそっか♪ならさ、取り敢えずはここに住まない?ね、いいでしょ?」
嬉々として提案するルーンに司羽は少し考える
「俺は男だぞ?」
「見れば分かるよ?」
ルーンは意味が分からないと言う風に首を傾げる。
「…お前には警戒心って物が無いのか…」
「うーん、大丈夫だよ♪だって、襲うならさっきだって出来たでしょ?だから大丈夫♪」
まるっきり安心しきっているルーンを見ていると何だかこんな口論をするのも馬鹿らしく思えて来た
「じゃあ…厄介になろうかな…」
「うんうん、それが良いよ♪」
司羽の返答にルーンは嬉しそうに答えた。
ルーンが寝静まり。司羽は慣れないベッドで寝る事に悪戦苦闘していた
「まぁ、取り敢えず寝床は確保か…」
司羽は天井を見ながらそう呟いた。今回は本当にラッキーだった。もしかしたら死ぬまであの森に居続けなければいけなかったかもしれない。ルーンと出会えてなかったら…
「あまり考えたくないな…」
司羽は溜息をついた。その時
「何溜息なんかついてるのよ。ポジティブにいきましょうよ♪」
そこに現われたのは白銀の少女。司羽は息を飲んで少女を見つめた
「お前…」
「三日振りの再開ね」
少女はにこっと笑った。儚げな風貌。自分より二十cmは小さいであろう身長とその夜に輝く髪がそれを引き立てる。
「あんたなぁ…名前も言わずにあんな森に一般人を置去りにしやがって…」
司羽はまた溜息をついた。それを見て少女はクスッと笑った。
「また予想外。怒らないんだ?」
「……」
そう言えばおかしいな。別に俺は聖人君子じゃない。あいては女と言えど多少位は苛立っても良い筈だ。なのに怒りの欠片すら沸いてこない
「あの兎っぽい動物にカルシウムでも大量に入ってるんじゃねぇの?」
「うーん、そうかもね♪」
少女は楽しそうににコロコロと笑った。そして、しばしの沈黙
「それで、何で俺をここに…?あんたは何がしたいんだ…?」
少女は薄く笑う
「さぁね…こうする事は決まってたけど、何で貴方を選んだのかは分からない…ただ…」
そこで少女は言い淀んだ。まるで自分で何を言いだしているのか分からないと言う様に…
「まぁ、これからは好きにしたら良いよ♪此所で暮らすも私を捜すも貴方次第。名前はやっぱり貴方が調べる事になるけどね♪」
少女はまたクスッっと笑って言った。それに、司羽はまた溜息をついて返した。
「それじゃあ、またね♪ごめんなさい。そして、ありがとう…」
少女はフッと消えた。よく見ると入口のドアが開いている。
「土足じゃなかったし。なんつーか…礼儀正しいなぁ…」
『ごめんなさい。そして、ありがとう…』こんな事を言われるなんてな…。あいつもこんな事する気はなかった…とか…
「…はぁ…もう考えるのは止めるか…」
司羽は毛布を引き寄せて、眼を瞑った |