第12話:霧が晴れて
「キャー♪夜這いよ夜這い♪」
「ルーンちゃん良いなぁ…」
司羽の部屋には同じクラスの女子生徒が集まり司羽と司羽の布団の中で眠るルーンを取り囲んでいた。司羽が起きたら既にこの状態だった。同じ部屋の女子の一人がルーンがいないのに気付き、ミシュナが口を滑らせたのが原因らしい
「…おいルーン、起きやがれ。何度このやり取りをすれば気が済むんだよ」
「うにゃ…」
さて、なんでこの馬鹿な首席はこんな時でも布団に潜り込むのでしょうか?鍵かけたような気がするんだけどな。さては魔法で開けたな?鍵の意味ねぇじゃねぇか
「おいルーン、昨日絶対忍び込まないって約束したよな?」
「だってぇ…司羽がいないと眠れないんだもん♪」
ルーンがそう言って司羽にしがみつくと同時に周りからは黄色い悲鳴が上った。そしてその人だかりの中からミリクが割って出て来た
「ルーンちゃん」
「…?」
ミリクはルーンを自分の方に向かせると真面目な、教師らしい顔をして言った
「司羽君は優しかった?」
「司羽は優しいよ?」
再び歓声。司羽は疲れた様に、実際疲れていたのだが布団から起き上がった
「ルーン…あのなぁ…。ミリク先生もいい加減にして下さい。着替えるから皆さっさと出てって出てって」
司羽がそう言うとルーンが名残惜しそうに見つめて来たがサラッと無視して追い払った
「全く…。さてと、今日は…登山にバーベキューだっけか?なんだか小学生の頃を思い出すなぁ…」
司羽はそう言いながら着替えを始めた
「それでは、頂上でバーベキューをするので各自自由にまったりと自然と触れ合いつつ登って来て下さいね♪」
ミリクがそう言って旗をパタパタと振りながら説明する。シノハはと言うと向こうで食材を確認しつつ他の教師に指示を出していた
「ではかいさーん」
ミリクがそう言ってシノハの方に走って行くとシノハは何か恐ろしい物を見るかの様な眼をして逃げて行ってしまった。昨日何があったのだろうか?
「さて、じゃあ登るかこの距離なら十分掛かるかな」
「それは司羽だけだと思うなぁ…」
「同感ね…」
司羽が山を眺めてそう言うと隣りでルーンとミシュナが何だか怠そうに言った
「ああ、そう言えば魔法は使えない様に結界這ってるんだっけ?」
「そうなんだよぉ…自然と触れ合うなら何も坂道じゃなくても良いのに…はぁ…」
『たまには良いじゃないですか。ね?ルーン』
「良くないよぉ…」
ルーンは子供の登山に適しているあまり勾配がキツくない山を恨めしそうに見ながら溜息をついた。
「ほらほら、俺の布団に忍び込んだ罰だと思って登るぞ」
「登ったら一緒に寝ても良いの?」
「ダメだ。てかどっちにしろ入って来るくせに何を言う」
そんな会話を聞いていたムーシェが二人を訝しげに見て言った
「司羽、あんまりそう言う会話を人前でしない方がいいよ。ただでさえ今朝の噂…広まってるよ?かなり脚色されつつ」
それを聞いて司羽は苦い顔をした。ルーンの方を見ると何でもない様な顔をしている。視線に気付いて首を傾げるルーンに司羽は諦めた様に溜息をついた
「司羽、諦めなさい。そして責任を取るか取らないかハッキリした方が良いわよ」
「俺は無実だ…」
そんな事を言いながら5人は山に入って行った
「…さて…迷った」
「うん、迷ったね」
周りには誰もいない。そしてそんなに高くない山だと言うのに雲の中に入った様に視界が悪い
「ルーン、ミシュナ達はどうした?」
「わからない。でも、何か変だよ。この感じ。でも多分、魔法…だと思う」
「だろうな」
司羽にもそれは何となく分かった。この霧からは何か別の力を感じる
「ふぅ…何とかならないのか?多分、このまま登っても頂上着かないぞ?」
「出来るならとっくにやってるってね♪大丈夫、山自体結界の中だからその内解けるだろうし、誰かのいたずらじゃないかな?」
「いたずらねぇ…」
何となく俺とルーンを故意に二人にさせようとしてる気がするんだが。いたずらなんかじゃなくてそれ自体が…
「ねぇ司羽。歩いたってしょうがないし魔法が解けるまでここらで休もっか?」
「ああ…」
司羽は何か違和感の様な物を感じた。霧で髪が少し白く染まった様になったルーンはまるで…
「司羽…昨日リアの髪の毛見たんだよね?」
「ん…ああ。教えちゃいけないらしいからルーンには言えないけど」
水色、あれは完全に違った。それに、何となくだけど雰囲気が違う気がした
「そっかぁ…まぁ、どうでもいいけどね…?」
「ルーン…?」
「何でもないよ♪」
一瞬ルーンが別人の様に見えた。姿だけが同じの別人の様に
「司羽…帰る当てが無くなっちゃったね。これからどうするの?」
「どうするって言われてもなぁ…。どうしようもないよなぁ…」
手掛かりはない、と言うよりも今は何も分かっていないに等しい状況だ。世界単位で隠れんぼなんて見つかる気がしない。目的も分からないし、これは海に捨てた指輪を探す事よりも難しいだろうと思う
「じゃあ、ずっと居ても良いからね?多分もう無理だよ。何にも手掛かりがないんだから」
「ルーン?何言ってるんだ?」
「…………」
司羽の返答にルーンは沈黙する。まるで聞き分けのない子供を見る様な眼でルーンは司羽を見る
「諦めた方が良いんじゃないかなって思ったんだよ。だって特に帰らなきゃいけない理由なんてないんでしょ?」
「まぁそりゃあ…でも、いきなりどうしたんだ?」
「別に…ただ、無理だろうって思ったから…」
ルーンは何かもどかしそうにそう言うと司羽に背を向けた
「僕が言いたいのは無理しないでねって事だよ♪司羽はずっと僕の家に居てくれていいんだって…ね…」
「ルーン…」
「司羽…魔法が解けるよ…」
ルーンがそう言うと同時に霧が晴れていった。
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