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油断
外はまだ暗い。ぼやけた暗さだ。
しかし風は存外に優しい。
涼しくやや冷たいが清々しい。
ここから、また始まるのだ。
今日という一日。
あなたはあなたの戦場にゆく。
私は私の戦場にゆく。
紡ぐコトノハ彩の。
それが私の生きる場所だから。
暗いバス停満員電車。
隣は何をする人ぞ。
食い入るようにスマホを見ながら
ひょっとしたら苦しみ、
思い詰めているかもしれない。
欠伸しながら、恋人との復縁を考えているかもしれない。
子育てに追われ悩み。
今日の会議のプレゼンに胃を痛め。
新しい靴のヒールが高過ぎたと悔やみ。
お昼はコンビニで何を買って食べよう。
進路って漠然としてわかんないよ。
そんなことを思ったりしているのかもしれない。
けれど私は知っている。
やがてお日様が顔を出し、
あなたたちに明るさを振りまくと、
少しだけ、温もりに油断することを。
目を細め、頬を緩めることを。
さあ、ゆこうか。