はち。
「先生は今どこにいるんですか。」
「その前に……喉渇きません?」
「あたしは全く平気です。」
「で、ですがあっしは……」
「それに貴方に出すお茶なんてありませんから。」
笑顔浮かべて言ってやった。あたしだって怒るときは怒る。
「先生のこと、知りたいでしょ?お茶がないと話せませんぜ?」
雄吉さんはニヤリと気味の悪い笑み。
「……雄吉さん、切りますよ?」
「ひっ……!!」
あたしは飾られていた刀をつかみ、雄吉さんを睨む。
「稽古やってきたのはちゃんと見ましたよね?約束は守ってますよ。」
「わ、わかった……話すから刀を……。」
この世界は弱肉強食。今そう実感した。
「刀はこのままで。話を進めてくださる?」
「っ……こことは逆方向の町はずれを知ってやすか。」
「知りませんけど……。」
「先生はそこで賭博の片付けをしてるんでさぁ。」
「賭博の片付け?」
何じゃそりゃ。
「寿々さん……アンタ一体どこから来たんです?賭博も知らないなんざ、よっぽど物知らずなのか金持ちなのか……」
戸惑いながらも馬鹿にした表情で雄吉さんはあたしを見る。
「賭博はわかります。片付けってどういう意味ですか?」
「賭博場ってのは裏でいろんな人間が動いてる。それを全部消し去るのが先生の仕事でございやす。」
「それ、殺すってことですか?」
先生が人殺しなんて、絶対ヤダ。
「あの男はいつも警察に渡すんで殺しはしやせん。契約違反だと何度も言ってるのに……」
自分勝手な雄吉さんにあたしは顔を歪めて睨んだ。
「す、すんません。」
「それで先生は?」
「予想以上に相手の人数が多かったらしくて……今捕えられてます。」
捕えられてる?先生が?
「どこに?」
「町はずれの古びた屋敷に。おそらく殺されるかと……」
「……あたしはどうすればいいの?」
「あっしにゃわかりません。」
「はぁ?」
「で、ですが命の恩人なら助けるべきでしょう!!」
何だよ『でしょう!!』って。口調がまばらだよ、全く人のこと言えないけれども。
「……雄吉さん。」
「はいっ!?」
完全に怖がられてる。
「町はずれまで、案内してくれません?」
「え……」
「良いですよね?」
「えっと……」
「良いですよね?」
「……はい。」
これはこれで便利かもしれない。
あたしは小さく笑みを浮かべて木刀を手に取った。
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