侍HOLE!!(32/37)PDFで表示縦書き表示RDF


侍HOLE!!
作:詩音



さんじゅうに。





「何に謝ってんだよ。」
「……え?」
 目の前にあるのはあたしより少し広い背中。聞こえたのは懐かしくさせる大好きな声。
「無事か?寿々。」
「健ちゃん……!!」
 武士数人を吹っ飛ばし、あたしをかばうようにして健ちゃんは現れた。
「何で健ちゃんがここに……」
「俺だけじゃねぇよ。」
「?」
 健ちゃんがニッと笑って外を指差す。
「寿々ー!!」
 小さな体で刀を振り回す幸宗の姿。あたしの視線に気付くとぶんぶんと手を振ってきた。
「幸宗……」
「若い者にはまだ負けんさ。」
「静さん!!」
 元気に長刀を振り回す静さん。そして――
「私の弟子を返してもらいにきました。」
「先、生……」
 金色の髪をなびかせて、先生は敵を倒す。
「皆で迎えに来た。」
「……。」
 必死に戦う皆を見て、あたしも闘志が湧いた。
「健ちゃん、他に刀無い?」
「お前は刀よりこっちだろ?」
 ずっと健ちゃんの背中に担がれてた包み。渡されたのはあたしが使ってた長刀。
「これ……」
「持ってきた。これがお前の武器だろ?」
「ありがと。」
 戦ってる最中なのに、あたしは幸せを感じていた。


「一通り片付いたな。」
「あれ、他の皆は?」
 伸びてる武士達を無視してあたしは健ちゃんに聞いた。今ちゃんと立てるのはあたしと健ちゃんの二人だけ。
「他のところに移動したんだろ。幸宗はたぶん警察呼びにいった。」
 敵の刀を取り上げてまとめる健ちゃん。
「そっか。」
 納得して健ちゃんの手伝いを始める。
「あのさ。」
 不意に健ちゃんが口を開いた。
「?」
「俺怒ってんだけどわかった?」
「え、健ちゃん怒ってるの?」
 全っ然気付かなかったけど。
「……寿々、お前こんなとこで何やってんだよ。」
「えっと……」
 雄吉さんから情報をもらうため、なんて言っていいのかな。
「まぁ雄吉さんから聞いたからわかってるけどな。」
 ……バレてたー!!
「何で知ってるの?」
「後で話す。それより、何で話さなかった?」
 真っ直ぐあたしを見る健ちゃん。
「俺らってそんなに頼りない?」
「違っ!!話す暇がなかっただけだから!!」
 そんな悲しそうな顔しないでよぉ……
「とにかく、一人で何でも抱えんなよ。」
「……ごめん。」
 確かに考えなしだったかもしれない。あたしは素直に頭を下げた。
「あ、それと。」
「?」
「その格好、馬子にも衣装で似合ってるよ。」
 不敵な笑みを浮かべ、健ちゃんは言う。
「……健ちゃん、後でしばくから覚悟しといて。」
 ちなみに、あたしも満開の笑顔で応戦させてもらった。


 戦は終わった。両方とも犠牲は多かったけど、幸いあたし達は深手を負わずに済んだ。
「ねぇ、雄吉さんが教えにきたの?」
 殺そうとしてた人のやる行動じゃない気がするんだけど……。
「こんなに大規模になるとは予想外だったらしい。」
「だからビビって先生に言いに来たんだって。」
「ふーん……。」
 相変わらず小心者なんだ。まぁ人のこと言えないけど。
「皆さんお疲れ様です。」
 先生と静さんはのんびりこちらに近付いてくる。今回も警察のお世話になったあたし達は事情聴取を受けたのだ。勿論大人のみ。
「まったく……早く帰って休みたいってのに。」
 愚痴ってた静さんだけど、顔は凄く生き生きしてた。やっぱり運動は良いもんだね。
「あの、雄吉さんって情報とか言ってなかった?」
「いや、何も?」
 あのクソジジイ……
 握り拳を作り、怒りを堪える。

「あっしを呼びましたかい?」
「……出た。」
 身軽ななりをして雄吉さんがひょっこり現れた。
「出たとは何ですかい。」
「あー、すいません。ってそれより情報くれる約束じゃないですか!!」
 またあたしを騙したの!?
「情報ならもうあるはずですぜ。」
「は……?」
「烏はこの城の殿様でさぁ。」
 和やかだった皆の空気が変わる。
「あの人が烏なの……?」
 驚きのあまり声がかすれる。
「そうですぜ。」
「烏は今どこにいるんだ?」
 健ちゃんが雄吉さんに詰め寄る。
「この城の本当の姫と逃げていやす。」
 小さく舌打ちして、健ちゃんが外へ向かおうとする。
「健ちゃんどこ行く気?」
「……追う、まだ近くにいるはずだ。」
 早足で健ちゃんは部屋を出ていった。
















ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう