にじゅうさん。
「何でついてくんの。」
冷めた目であたしを見る健ちゃん。
「だって……」
健ちゃんが心配だったから。
盗み聞きしてたなんて言えない。しかも今日、仇討ちに行くって聞いたんだから尚のことだ。
「久々の稽古は行かないの?」
「……健ちゃんがいなきゃ面白くないもん。」
嘘ってことじゃないけど、本当はちょっと行きたいんだよね。でもやっぱり心配だから。
「何かあった?」
「な、何が?」
あ……声裏返っちゃったよ!確実に嘘吐いたのバレたよぉ。
「ずいぶん可愛いこと言うなぁ、と。」
不敵な笑みに不覚にもあたしは頬を朱に染めた。
「顔赤いよ。」
「うるっさい!」
健ちゃんはたまに天然。平気で可愛いとか言うからあたしの心臓は大忙しだ。
「ねぇ、健ちゃん今日どこ行くの?」
「……。」
そこで黙っちゃうんだ。わかりやすいなぁ……もう。
「健ちゃん。」
「あ?」
「一緒に、行く。」
「なっ……!」
あたしの言葉に健ちゃんは目を見開いた。
「あたしも一緒に行きたい。」
「馬ー鹿、別に遊びに行ったりしねぇよ。ただ先生が道案内してくれるだけだ。」
ふっと笑顔を見せてあたしの額を指で弾く。
「痛……ならあたしがいても問題ないでしょ?」
「我儘言うなって。」
「……。」
健ちゃんはたぶん知らない。あたしが盗み聞きしてたこと。
「健太君、そろそろ行きますか?」
ゆったりした動作で先生は現れた。いつも通り、何を考えてるかわからない笑みを掲げて。
「はい。」
少しだけ表情を堅くして、健ちゃんが先生に近寄る。
「寿々さん。」
「は、はい。」
先生なら一緒に連れていってくれるってほのかに期待してた。
「留守をお願いします。」
「……はい。」
まぁ脆くも崩れ去ったけど。
「行ってきます。」
「じゃあな。」
「……。」
口を尖らせ、恨みを込めた目で二人の後ろを見つめる。
そしてそれはため息をついたすぐ後のことだった。
「……ん?」
先生の去り際にひらりと落とした一枚の紙。そこには細かく書かれた地図があった。
「これ……」
地図から顔を上げて前を見れば、歩きながらも後ろを向いて小さく微笑む先生がいた。
「ふーん?」
なるほどね。落し物は届けなくちゃ。
あたしは一人ほくそえんだ。
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