じゅうに。
「ほっ、よっ、とっ……」
廃れた神社ではカンカンとぶつかりあう音が響く。
「順応能力が高いようですね。もう使いこなしていますよ。」
「ありがと、ございますっ。」
先生に褒められるのは物凄く嬉しい。けど、稽古の真っ最中に褒めないでください……かなり必死なんで。
「休憩しましょうか。」
相変わらず先生は汗一つかいてない。あたしは手で扇ぎながら長刀を地面に置いて座った。
「貴方が来てもうすぐ一ヶ月ですね。」
もうそんなになったんだ。自分じゃ毎日に必死過ぎてわかんなかった。
「元の時代へ、帰りたいと思いますか?」
「え?」
「例えの話ですよ。私には未来に送り届ける力はありません。もしも、もしも帰れるとしたなら寿々さんは帰りたいですか?」
「……。」
唐突すぎる先生の質問に、返す言葉が見つからない。
ただ、あたしの頭の中に江戸と現代、両方の思い出が映画のようになって入り交じる。
「……すみません、ちょっとした好奇心です。だから、泣かないでください。」
先生に言われるまで、自分が泣いてるのに気付かなかった。
「すいませ……何であたし……」
着物の袖でぐしゃぐしゃの顔を隠す。泣き顔なんて人に見せること無い、というかあたしは滅多に泣かないのだ。
「今日の稽古はここまでにしましょう。」
ゆっくり立ち上がる動作を見せて、先生は言う。
「だ、大丈夫ですよ、あたしまだ……!!」
「無理はいけません。」
「……っ。」
指で涙を拭われ、あたしは黙った。
「先に帰りますから、夕飯までには帰ってきてくださいね。」
そう言い残して先生は立ち去った。
「……。」
もう涙は止まった。瞼が少し重たくて、水で冷やさなきゃとか頭の隅で考える。
「あたし、帰りたいのかな……」
まぁ実際、いきなりここに落とされたんだし。帰りたいかもしれない。だけど――
「だけど?」
「うーん……え?」
あたしはまた、とんでもないヤツに会ってしまった。
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