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作品中に登場する固有名詞は、現実のものとは一切関係ありません。
癒しの天使
作:御風達弥


現代は、ストレスの時代。だれもかれもが、ストレスと戦いながら生きている。仕事のストレス、友人関係のストレス、家庭のストレス…現代社会は、ストレスがテンコ盛り。

そんなあなたのストレスをすっきり解消いたします。私達は、癒しの天使…。



「…あ〜〜〜〜〜〜………………。…疲れた。」
疲れていた。彼女はあからさまに疲れていた。ストレスたまりまくり状態であった。
うるさい上司、生意気な部下、浮気していそうな恋人、次々に幸せを掴んでいく友人達、最近ハリが無くなってきた自分の肌…。
これでもか、というくらいの、ストレスまみれなのであった。
「…………ふぅ。もう寝よ………。」
たった今仕事から帰って来たばかりの彼女だったが、疲れはピークに達しているようで、メイクも落とさず、スーツ姿のまま、ベッドにバタリと倒れ込んだ。


どれくらいの時間が流れただろうか。
静寂に包まれた部屋に、突然、


パンパカパーーーーンッ


「ひゃっ!?」
ものすごくベタなファンファーレが部屋の中に鳴り響いた。思わず跳ね起きる彼女。何事かと、部屋の中を見回す。すると、


…くるくるくるくるくる…


「………。」
部屋の中央。電灯の下。そこに、宙に浮かんでくるくると回る、小さな二人組の姿があった。
「………はぁ?」
訳がわからず呆然とする彼女。そんな彼女を尻目に、くるくる回り続ける二人。美しい白のドレスに身を包んだ二人は、さながら、小さな天使、といったところだった。
やがて、くるくる回っていた二人組は回転を止めた。女性の姿を確認すると、きちんと姿勢を正して、ニッコリ笑顔で明るく話し掛けてきた。

「こんばんはっ!」
「こんばんはっ!」
「毎日の生活にお疲れのあなたにっ!」
「あなたにっ!」
「癒しを届けに参りましたっ!」
「参りましたっ!」
「私達はっ!」
「私達はっ!」

「癒しの天使、でぇーーーーーっす!!!」



「……………すやすや。」



「寝るなぁぁぁぁぁっ!」
「きゃっ!?………もぅ…なによぉ…?」
「せっかくの私達の見せ場なのに、寝る、って、どういうこと!?」
「せっかく癒しを届けに来たのに、寝る、って、どういうこと!?」
「…………私、ホントにやばいわ。幻覚に加えて幻聴まで聞こえる…。疲れ過ぎね、きっと…。」
「…むかっ」

ぎうううううううっ!

「!?は、はひゃああああっ!ひ、ひあいひあいひあいっ!」
「これでもか!これでもか!これでも幻覚かぁぁぁぁぁっ!」
「ひあう、ひあいあふーーーー!えんひうれふーーーー!」

…ぱっ

「はぅっ………あ〜…痛かったぁ…。」
「せっかく来たのに、幻覚扱いするからよっ!」
「からよっ!」
「…そんな事言ったって…。えと、なんだっけ?癒しの天使?」
「はいっ!癒しの天使ですっ!」
「天使、って…、あの天使?」
「その天使ですっ!」
「………………マジで?」
「…もう一回、つねってあげよっか?」
「……遠慮します。」
「まぁ、急に信じられないのも無理はないけどね〜。私達って、あなたたちにとっては基本的に空想上の存在なわけだし。でも、実際に会ったんだから、これで信じられるよね?」
「………まぁね。」
「では、改めまして。こんばんはっ!癒しの天使ですっ!あなたに癒しを届けにきましたっ!」
「ましたっ!」
「………はぁ。」
「…もうちょっと、なんかリアクションしてくれないかなぁ?張り合いってものがないんですけど〜。」
「ん〜…そう言われてもなぁ…。そんなリアクション取れるような元気ないし…。」
「ふむふむ、リアクションをとれないくらい疲れてる、と。これは癒し甲斐があるわね〜!」
「あるわね〜!」
「てなわけで、早速癒しを始めさせていただきますっ!」
「いただきますっ!」
「…はぁ。まぁ、なんでもいいわ。さっさとやっちゃって。」
「ふふ〜。そんな無気力感全開なあなたに送る、癒しメニューはこちらっ!じゃーんっ!!アロマテラピー!!」


「…アロマテラピーなら、私もやってるけど。」
「ふふふ〜。癒しの天使のアロマテラピーは一味違うのよね〜。そりゃもう癒し効果ばっつぐん♪。」
「…ふぅん…。…って、えっ…?」
思わずフリーズする彼女。彼女が天使と話してる間に、もう一人の天使がアロマテラピーの香炉のセットをしていたのだが…
「…大きすぎない?」
天使が準備していた香炉は、高さ、幅、共に、裕に1メートル以上の大きさのものだった。
「このサイズが癒しの天使のサイズなのよ。大きい方が効果絶大っ!」
「…いや、アロマテラピーって、程よいのが効果的なのであって、こんなに大きいと…」
「細かいことは気にしない〜!それでは参りましょう!点火〜〜〜!」

…シュボッ!

「…え?」
再びフリーズする彼女。天使がセットした香炉は、上皿に垂らしたアロマオイルを下から火で熱することで香りを発生させる、というものなのだが、その上皿の中に…
「ふぃ〜〜…極楽じゃあ〜〜〜…♪」
「なんであんたがオイルの中に入って一緒にあぶられてるわけ!?」
「やだなぁ〜。オイルじゃなくて、ただのお湯だよぉ〜♪」
「それじゃあアロマテラピーじゃなくて、あんた用の、ただのお風呂じゃないの!あんたが癒されてどーするわけ!?」
「まぁまぁ〜、そんなにイライラしないの〜。アロマテラピーの癒し効果は、香りにあり、よ♪。」
「香り、って言ったって………!?」


…むぅわわわぁ〜ん


「な、なによ!この臭いっ!?」
「お〜。香り効果出てきた〜?」
「あ…、あ…汗くさいーーーーっ!ゲホッゴハッ…こ、これって…」
「入浴する私から発せられる、癒しの香り〜♪」
「どこが癒しよっ…!ゲホッゴホッ…!」
「まあまあ〜。良薬は口に苦し、って言うでしょ〜?」
「苦かったら癒しにはならないわよっ!」


……………。


「は〜い♪。アロマテラピーはいかがだったかしら〜?」
「…この反応を見て、よくもまぁそんなことを気楽に聞けるわね…。」
「まぁ、予想通りだし。」
「予想通りってどういうことよっ!!」
「まーまー、そんなに怒らないの〜♪怒るとお肌に悪いわよん。」
「あ〜ん〜た〜が、怒らせてるんでしょうがっ!」
「ほらほら、寝る前にちゃんと化粧落として♪洗面所へ、ごー!」
「…(こいつ…天使の皮を被った悪魔ね、)。」
天使に、強引に洗面所へと連れてこられた女性。仕方なく、化粧を落とし始める。すると、
「はいはい〜。化粧を落としたら、ちゃんとパックもしなきゃね〜。」
「…え?パック?」
嫌な予感。タオルで顔を拭いていた彼女が、恐る恐る天使の方を見ると…


ベチャッ!


「ぶふっ!?」
「お〜、めいちゅー♪」
「…なによ、これ。」
「知らないの?これが天使の泥パックよん。」
「泥パックは知ってるけどね…。顔面に泥団子をぶつけるってやりかたは初めてねーっ!!!」
「あら、そう?じゃあ、もっとサービス♪」


ベチャッ!ビチャッ!ブチャッ!バチャッ!ボチャッ!


「これだけやれば、美肌効果もばっちしよん♪」
「………あんた…。」
「ん?どしたの?」
「いいかげんにしろぉぉぉぉっっっっっ!!!」
「キャー!ついにストレス爆発ー!ストレスには、寝るのが一番〜。」
「誰のせいで爆発してると…」

ポワン…

「思っ…て……。」
「………。」
「……………すぅ…。」
「うふ。やっぱり天使の眠り粉は、効果抜群ね♪」
満足そうに微笑む天使。アロマセットを片付けていたもう一人を呼ぶと、二人で彼女をベッドへと運んだ。そして、洗面所に飛び散った泥を綺麗に拭き取り、彼女が出しっぱなしの化粧落としなども、元通りに片付ける。
「天使のアロマ効果で、体内の不純物は綺麗に片付いたし、天使の泥パックで、肌の潤いもバッチリ。天使の眠り粉で眠れば、素敵な夢で精神も安定。まさにトータルな癒し♪」
「トータルな癒し♪」
「私たちもリアクションで楽しませてもらえたし、お互いに素敵な癒しになったわね♪」
「なったわね♪」
「ではでは、私たちはこの辺で〜。あなたのストレスが爆発しそうになった時に、またお会いしましょう♪。」
「お会いしましょう♪。」
再び、並んでくるくると回り始めた二人。その姿は、やがて光に包まれ、部屋の中から消滅した…。



「………ん。」
朝の光が瞼を刺激する。ゆっくりと瞳を開き、体を起こす。
ベッドの上で、しばしぼんやりする。時計を見ると、朝の七時。目覚まし時計を使ったわけでもないのに、いつもより早起きだ。
「……………。」
なんだか不思議な感じがする。普段感じていた、体の重さが感じられない。心もすっきりしている感じだし、なんだか、肌もすべすべしている。
「………なんかあったかな?」
昨日のことを順に思い返してみる。が、特に素敵なことがあった、という記憶はない。普段通りに仕事ヘ出掛け、帰って来て、そして寝た。それだけだったはず…。
「ん〜…よくわからんなぁ…。」
首を捻る。昨日の私に、一体どんな素敵なことが起こったのだろう。
鳥の囀りが聞こえる。思わず窓を開けてみた。朝の、心地よく乾いた空気が流れ込んでくる。
「………。ま、いっか。」
少し微笑んで、彼女は呟いた。こんなにいい気分なのだ。無理に理由を追究することもないだろう。
朝の風が、さぁー…っと流れ込む。一つ、よしっ、っと気合いを入れると、彼女は、朝の支度にかかった…。



私達は、癒しの天使…。

あなたの気持ちがくじけそうになった時、あなたの許に参ります♪


短編を書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?。書こうと思ったきっかけは、仕事に疲れている友人を見たからでありました。じゃあ、なんか元気の出る小説をかけたらなぁ…と、思って、書いた作品です。…まぁ、元気が出るかどうかは、微妙な感じになりましたが(^.^;)。楽しんで読んでいただければ、幸いですo(^-^)o













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