第二章 六 居場所と絆
六 居場所と絆
Side ”Yu”
もうずっと、前の話。でもほんの最近のような気がする。
「綾。」
自分の部屋の片隅で膝を抱き、顔を伏せている綾。
それは、普段の彼女から考えると信じられないくらい、儚くて弱弱しい。
「・・・何しに来たのよ。」
綾は、顔をあげ俺を睨みつけてくる。その目が赤く少し腫れているのが痛々しかった。
「ま、こんなお前、滅多に見れないからな。」
そう言って綾の隣りに座ると、彼女は少しポカンと驚いたあと、すぐに顔を赤くして怒鳴る。
「あ、あんたねぇっ!!」
「なに?慰めて欲しかった?」
そう軽口を言うと、また綾は怒り出す。
「な、な、そ、そんな訳ないでしょっ!?あんたっ、私をからかいに来たの!?」
やっぱり、と思う。やっぱり綾はこんな感じが一番良い。
こういう、こいつがやっぱり自分は好きなんだと思う。
ひとしきり怒鳴った後、綾は疲れたように、小さな声で呟いた。多分聞えないように言ったつもりなの
だろうけど、しっかりと聞えた。
「・・・・・・バカ、少し位、優しくしてくれてもいいじゃない。」
その声が聞えたからって訳じゃない。元々、この言葉を伝えに来ていたのだけど、性格上なかなか言え
なかった言葉。
「傍に居る。」
「えっ?」
綾の方は見ずに俺は答える。それはただ単に少し恥ずかしいから。
「俺は、少なくとも俺はずっと綾の傍に居るよ。」
「えっ?えっ?えっ?」
「もっとも、俺じゃ不服かも知れないけど・な。」
綾はまだ俺の言葉が理解できていないのか、若干挙動不信気味だ。
そして、自分でも気付いていないのか、その大きな瞳が潤みだしている。やがて、それは雫となって
綾自身の手の甲に落ちた。
「え、何?・・・私・・・・・・」
必死に涙を拭うけど、一度溢れた涙はなかなか止まらない。それどころか、涙腺が壊れてしまったよう
に溢れ出す。
「やっ、何これ・・・。バカ、祐、こっち、見るなぁー。」
そう言って怒る綾が可笑しい。だから俺は、綾の部屋置いてあった、帽子・・・白くて大きなツバが特徴だ。
それを、取って綾の頭に深めに、顔が隠れてしまう位まで被せて、こう言った。
「似合うじゃん?綾。・・・・・・これで見えないしな。」
「・・・ありがと。」
家族の事で悩み、傷ついていた綾。
自分の居場所が無い、と1人泣いていた綾。
気が強い彼女も、こんな感じに弱い彼女も全部まとめて、やっぱり俺は好きで、守りたくて・・・。
”居場所”でありたいと思った。
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