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異世界に召喚された彼らが手に入れたものシリーズ

不本意に召喚された私は恋人を手に入れました。

衝動的に書いてしまったシリーズ第二弾。
オタクな彼の『恋人』になった『彼女』視点のお話です
前作『場違いに召喚された俺は姫様を奴隷にしました』を読んでからの方が楽しめると思います。
 ーーーー不本意に私が異世界に召喚されてからおよそ一ヶ月の時が経過した。

「それではこちらの腕輪を着けてくださいませ」

 そう言って、私達を召喚したお姫様は豪華な装飾がなされた煌びやかな腕輪を、やはり無駄に意匠を凝らしたお盆に乗せて『彼』に差し出した。とはいうけれども、実際にはこの城に勤める騎士団長がお盆を持っているのだけれども。

「こいつを腕につければ、『勇者の力』ってのが解放されるのか?」
「その通り。これは『英傑の腕輪』と呼ばれる宝具であり、召喚された勇者はこれを装着することによって真に勇者としての資格を得るのです」
「『英傑の腕輪』…………ねぇ」

 元々それは六つ用意されており、既にその内の4つは持ち主を得ていた。私の隣に並んでいる四人だ。

 内三人には面識がなかったけれども、残りの一人は私の顔見知り。不本意ながらに勤めている生徒会で一緒に仕事をしている単なるイケメンだ。

 いえ、『単なる』というのは少し語弊があるでしょうね。

 分かりやすく言えば、ライトノベルの主人公になりそうな文武両道を地で行く程度には優秀なイケメンだ。あと妙に私に絡んできて非常にイラつく相手でもある。こちらは非常に迷惑しているのに、感情が表情に出にくい性質タチのせいかいまいち伝わっていないのが困りものだ。

 …………イケメンはどうでもいいか。

 重要なのは『知り合いで恋人論外』なイケメンとその他三人ではなく、正面にある『彼』とお姫様だ。それまでの四人と同じように、お姫様は腕輪をお盆から手に取ると『彼』に腕輪の効力を説明した。だが、それを見る『彼』の『目』は鋭さを増していた。

『彼』の『目』の『真実』を唯一知る私はその瞬間に悟ったのだ。

 …………これから、愉快なことが起きるのだと。


 はっきり言っていい迷惑だ。

(自惚れに聞こえるだろうが)この妙に整った顔立ちと学業成績からよく誤解されるけれども、私はアニメや漫画、ライトノベルと呼ばれるオタク文化が大好きだ。毎月の新刊発売日には書店を周り、大型家電量販店に行けば新作ゲームの吟味に勤しむほどは大好きである。

 そのおかげか、生徒会室で(早く家でゲームしたい)という鬱憤を溜め込みつつ、他人推薦で任命された生徒会の業務を一心不乱にこなしていたところに、視界が光に包まれて気がつけば『異世界』に召喚されたというとんでも事態にも酷くは取り乱さずにいられた。

 表情に出ていないだけで、混乱は間違いなくあっただろう。

 でなければ、

「異世界より来訪した勇者達よ。どうか我が国をお救いください」

 ーーーーという、『お姫様』という存在をこれでもかと体現する『お姫様』のセリフに盛大に突っ込んでいたに違いない。

 最初の切っ掛けを逃した私は、その後に続く彼女の説明を黙って聞くしかなかった。

 そこから先はよくあるテンプレな内容だ。この世界には人間と魔族という二つの人種が存在しており、それぞれが国家を有している。当然私達を召喚したのは人間勢の国家だ。そしてこの国は現在、魔族の中で最も強靭な力を有する『魔王』なる存在に脅かされており、それが率いる『魔王軍』との敵対関係にあると。そして私はその『魔王軍』への対抗策に苦肉の策として『異世界』より魔法の力によって召喚されたのだ。当然ながら、召喚を主導したのはお姫様である。

 冗談ではない、というのが正直な心境だ。

 本人の意思に関係なく異世界からの誘拐した上で、この国の現状も魔族なる者達の国家も知らずに『戦争』への参加要請だ。お姫様は決して口にしなかったが、国家間の武力衝突はどう綺麗で言い繕っても『戦争』に他ならない。それを、ロクな知識の無い者達を送り込もうとしているのだ。この場に卓袱台があればどこぞの頑固親父のように盛大に引っ繰り返しているだろう。

 話が少し前後したが、この世界に召喚されたのは実は私だけでは無い。実はその他に複数の人間が召喚によって『拉致』されていたのだ。

「分かりました! 僕達が魔王を倒し、世界を救ってみせます!」

 内の一人、顔見知りのイケメンが発した言葉に、私の彼に対する評価は下落の極みに至った。

 馬鹿だ馬鹿だとは思っていたがここまでの大馬鹿であるとは思ってもみなかった。普段から己の正義感に酔い、無駄に能力も高いから周囲も彼を持ち上げる。その相乗効果で人の頼みを考えなしに聞く傍迷惑な性格がここでも猛威を振るっていた。その尻拭いをするのは彼の傍迷惑さを理解している周囲の人間だ。その中には当然私も含まれているが、当の本人はまるで気づかず悪気が一切無い。悪気がなければ何もしていいと思うのは大間違いだ。

 最悪なのは、妙な『正義感』によっているのはイケメンだけでは無かったということ。無駄に筋肉質の男に、神経質そうなメガネ。それと、素材は良さそうなのに明らかに悪い方向に突き抜けた化粧をしている軽い雰囲気のギャル娘。彼彼女らはイケメンの無駄な存在感カリスマに感化される形で表情を輝かせていた。どう見ても『魔王討伐』に前向きな姿勢である。もう少し考えて欲しい。何度も繰り返しているが、これは次元を超えた『拉致問題』です。

 頭を抱えたくなったが、冷静に考えると背筋が凍った。

 いつの間にか、召喚された者達の代表格がイケメンのような空気になっていた。そしてイケメンは「僕が魔王を倒しーーーー」とのたまった。

 このまま会話が続けば、なし崩しの『魔王討伐』の任務を承諾する形になってしまう。

 だが、あまりの急展開に私の混乱は加速し、言葉を上手く紡ぐことができ無い。表面上は冷静そのものなのに、イレギュラーな事態に弱い私の内面をこの時ほど呪ったことは無い。

 心臓の動悸が怖いほどに激しくなる。なのに、拒絶の言葉は出ず、絶望が指先から這い寄った。

「お任せください! 僕たちは必ずやーーーーーー」
「ちょ、まちまちウェイウェイストップストォォォォォォォップ!!!!」

 私の心に冷静さを取り戻してくれた救いは、およそ格好良さからは無縁の滑稽な叫び声だった。

 ーーーーこれが、私が『彼』を意識する最初の一歩だった


 
『彼』のおかげで、魔王討伐の旅に出る前に一ヶ月の猶予と訓練の期間を置くこととなった。

 不満げだったのはイケメンのみであり、冷静さを取り戻した異世界召喚組は素直にこの猶予を受け入れた。私も冷静な表情の内面は大きく安堵していた。

 さて、魔王討伐の旅に出るかどうかはさておきだ。異世界召喚などという明らかにキワモノな魔法だ。予想の通り、一度異なる世界から呼び出してしまった人間を送り返すのは容易くないようだ。必然的に、しばらくはこの世界で過ごさなければなら無いのは確実だ。一ヶ月の期間中にこの世界で過ごすための知恵と力を蓄えるのが妥当だ。

 幸いと言っていいかは非常に判断に困るが、どうやら『勇者』として召喚された私達にはテンプレのごとく『チート』と呼べる能力が宿っていた。イケメンと筋肉、メガネ、ギャル娘は軽く訓練しただけですぐに能力を手に入れた。

 そしてどうやら私も例外ではなく『熱量を吸収する能力』を手に入れた。

 手に触れた物体の熱量エネルギーを吸収し、その分だけ身体能力を向上させる、というものだ。

 この能力を使って城内にあった噴水の水を誤って凍結させてしまったお陰で、いつの間にか私の能力は『氷』を扱うの力だと誤解されてしまった。まぁ、手の内を全て明かすのも躊躇われたのであえて誤りを正そうとはしなかった。このことがずっと先にまで響くとはこの時は思わなかったけれど。

 少なくとも『力』の点ではこの世界で生きていく分に目処はついた。たかが一週間か二週間で、この城に勤める兵士相手になら一対一の状況でなら誰にも負けない程度の戦闘力を手に入れた。日々訓練に勤しんでいる彼らには少しだけ申し訳ない気持になるが、こちらも死活の問題に関わってくるので我慢してほしい。

 イケメン(と他3名)はあまりにも急速に力を手に入れたことに有頂天になっているように見えた。もはやこの国でも屈指の実力者である近衛騎士隊の団長や国軍の将軍にすら匹敵するほどの能力を得た彼らだったが、どうにも不安が尽きない。この国の実力者に互角に戦えるからといって、私たちが召喚された目的である『魔王』にも同じく戦えるとは限らない。そのことを、彼らは本当に理解しているのか?

 増長してようが有頂天になっていようが、私も彼らも『勇者の力』を得たことには変わりはない。日に日に城の中で私たちの存在感は大きくなっていった。恥ずかしながら、誰もが見せる尊敬と親愛の態度に私も少なからずの優越感を抱いていたのは否定できなかった。

 けれども一方で、同じく勇者として召喚されながらも日に日に忘れ去られていた人物がいた。

 他ならぬ『彼』だった。

 奇しくも私やイケメンの通う学校の同級生だった彼は、クラスこそ違ったので繋がりはなかったが見覚えのある顔だった。この世界に来るまではその程度の認識だった。なにより、強烈すぎるイケメンの存在が私の日々を圧迫し、『彼』を記憶にとどめる余裕がなかったのだ。

 異世界に来たばかりの強い印象から一転し、私はしばらくの間、彼のことを忘れていた。この猶予を作る切っ掛けとなった『彼』には感謝してもしきれるものでは無く、時を見て彼にちゃんとお礼を言おうと決めていたのに、だ。

 あるした瞬間にそのことを思い出した私は、彼に会おうと城の中を探したのだがすぐには見つからなかった。他の勇者たちと同じように訓練をしているのなら毎日でも顔を合わせているはずなのに、気がつけば彼の顔はどこにもなかったのだ。

 記憶を探ると、最初の頃こそ彼も一緒に訓練を行っていたが、途中から徐々にその場から遠のいていた。だが、己のことに精一杯であり、彼のことに意識を割くことをやめていた私は彼のことを忘れ去っていたのだ。

 紛れもない恩を感じていながらそんな自分に恥じ入った私は、その日のうちに彼の姿を探し出した。

 訓練の場から遠く離れて彼がいたのは、城の中にあった巨大な書庫だった。そして彼は、うず高く積み重なった本の群れに埋まるようにして、一心不乱に手元の本に目を通していたのだ。

 明らかに『本を読んでいる』という行為であったのだが、私は『何をしているのだろう?』と疑問を抱いた。

 なぜなら、異世界から召喚された私たちは、この世界の人間の喋る『言葉』は理解できていても、本に限らず物体に書かれた『文字』を理解できないのだ。お姫様が召喚魔法を使うとき、言語翻訳の仕組みも組み込んだようだが、文字翻訳まではさすがに手が届かなかったからだ。

 読めないはずの『本』を切れ味すら持ちそうな集中力で読み込む彼は、書庫に入った私にはまるで気がついていない。お礼の件を一時忘れ、興味に駆られた私は気付かれないように彼の背後に近寄った。

 背中越しに彼の手元の本を覗き込むが、やはり『文字である』ということだけ以外はその内容を理解することができなかった。

 やがて彼は最後のページに目を通すと、ゆっくりと本を閉じて深く息を吐いた。

 そして。

「…………どこの世界にもエロ小説ってのはあるんだな」

 ガクリと膝の力が抜けてしまった私は悪くない。周囲の気配にまるで気づかないほどの集中力で読んでいた本が、まさか官能小説だと誰が思う。力が抜けて崩れ落ちそうになるのをどうにか耐えると、その音に気がついた彼は驚いてこちら側を振り向いた。

「きょ、巨乳さんッ!? なんでここにいるんだ!?」

 ちょっと待って。え? それって私のこと!? 確かに同世代の女子の平均をはるかに上回るサイズだけれども、こうもはっきりと呼ばれたことはかつて無い。

 この時こそが、私と『彼』の本当に初めて邂逅した瞬間だった。

 正直、ロマンチックの欠片も無い出会い方だったなと、後の私は苦笑するのだった。



「ーーーーセンチだな。どうだ、合ってる?」
「…………最初のサイズだけが違うけど、他は間違って無い」
「え、まじで? 具体的にプラス? マイナス?」
「…………プラス方向」
「あめいじんぐ、だな」

 私が表情豊かな女ならば、悶えて顔を伏せていただろう。それでも頬に熱が篭るのは分かった。主に羞恥心で。対して彼は本当に感動したのか私の胸をがっつり視界に収めていた。

 彼は、私がこの世界に来る前に測った最新のスリーサイズをピタリと言い当てたのだ。ただし、胸のサイズだけはまた少しだけ大きくなっていた。一般女子なら喜びそうな要素だが、すでに平均を大きく超えているとむしろ「またか」となんとも言え無い気分になる。

 私の気持ちはともかくとして、彼が手に入れた『能力』とやらは本物のようだ。

「それにしても、『鑑定』……か。RPGのゲームみたいな能力ね」
「古い文献に、似たような力を持った人間がいたらしいな。この世界の名前を照らし合わせると『万象の瞳』って名前だったが」

 話を聞いてみると、彼は勇者たちの中で最も早く『能力』に目覚めていたらしい。ただ、今思い出せば能力の片鱗は召喚されたその日からあったそうだが、それを『能力』と自覚したのは私たちが能力を自覚するよりも後だったようだ。

「あの姫さんの説明で、言葉が自動的に日本語に翻訳されているのは知ってたんだ。だからその延長上で『文字』が普通に読めるのもその翻訳の一部だと思ってたんだよ」

 私たちとは違い、彼はこの世界の文字を誰の教えもなく普通に読解できたのだ。あまりにも自然に読めるのでそれを『能力』の片鱗だとは気づけなかったのだ。

 時が経つにつれて、彼も私たちが『文字』を読め無いことにも気が付き始めた。最初はこの『読解』が能力だと判断した。戦闘に全く役に立た無いが、この世界の情勢を書物から読み解くことができるこの能力を彼はそれほど不遇にも感じなかった。徐々に戦闘力皆無であることで城内では肩身が狭くなっていたが、逆に外に出ずに引きこもって本を読めることからさほどに嫌な思いもなかったという。

 だが、彼の能力が『読解』という小さな範囲に収まら無いと判明したのは、私たちの中から『能力』を得た者が出た時だった。その場にも偶然居合わせた彼は思わず最初に能力を発現させた『イケメン』へと視線を集中させた。すると、彼の網膜にRPGの画面のような光景が浮かび上がったのだという。

 この時に、初めて彼は己の能力を『鑑定』だと認識できた。それまで『文字』を読解できたのは、無意識に『文字』を『鑑定』し、その意味を解読していたからだ。

「ちなみに、巨乳さんの能力も俺は把握してるぞ。熱を吸収した分だけパワーアップするんだろ?」
「…………間違いないんだけど、どうしてそれよりも先にスリーサイズの方を口にしたの?」
「クールな美少女の恥ずかしがっている顔が見たかった」

 微妙にゲスい理由だ。というか、アダ名からしてゲスい。けれども、嫌な気分が少ないのが不思議なところだ。清々しいほどの開き直りがそう思わせているのかもしれ無い。

 さておきスリーサイズもそうだが、誰にも話したことのない私の能力の真実を言い当てた彼の能力をもはや疑う事はない。確かに、戦闘力という意味では役に立た無いかもしれ無いが、逆にそれ以外の面では彼ほど強い能力も無いだろう。否、敵の能力を一目で判断できるのならば、戦いにおいての絶対的なアドバンテージを握る事ができる。役立たずなどと言えるはずが無い。

 ならばなぜ、その事を誰にも教えずに書庫の中に篭っていたのだろうか。彼もこの鑑定の能力を私にだけ教えてくれたと言うし。

「できる事ならこの能力は『切り札』として然るべき時まで隠しておきたい」
「『切り札』……確かに切り札になり得る能力だけど、味方にまで隠しておく必要があるのかしら」
「ほら、よくラノベであるじゃんよ。『伝説の〜〜』な謳い文句で貰った装備が実は呪われた品だったとか。知らずに着けたら誰かしらの言い成りになっちゃったり、ぬるねちょうにょうにょルートに突入してしまったりとか」
「……まぁ、よくあるわね。つまり、そういった時のためにギリギリまで能力を隠しておきたいわけね。あなたならどれだけ煌びやかな宝物でも呪いの品なら一発でわかるから」
「そゆこと。あわよくばそれを起点に有利な交渉ができたりとな。……まぁ、俺の杞憂ならそれはそれでいいんだが」

 理由を口にした彼だが、どうやら今の説明以上の理由も持っているようだ。だが、それを教えてくれるほどにまだ私は彼に信頼されてい無いのだろう。

「……でも、だったらどうして私に『鑑定』の事まで教えてくれたの? 『読解』程度までも十分だったと思うのだけれど」
「巨乳さんなら口も堅そうだし、他の勇者(笑)たちに比べて冷静な判断ができると思ったからだ。召喚された時はあのイケメン(爆)を止めてくれたし、自分の能力に有頂天にならずに違った能力として周囲に通してるからな」
「…………やっぱり、有頂天になっているように見える?」
「筋肉の奴は『経験人数:四人』になってて城勤めの女子に手ェ出してる。ギャル娘は逆に男漁りしてる。『下僕:七人』とか見えた時は笑うべきか呆れるべきか迷ったね。メガネに関しちゃぁ、ありゃぁマッドなサイエンティストになりそうな雰囲気だ。最近になって『禁術Lv1』が追加されてたからな。どれも俺が最初に鑑定した時には無かった項目だ。間違いなくこの世界に来てからの成果だな」

 対人鑑定結果----いわゆる『ステータス』の内容に私は驚きとともにあまりの内容に溜息をついた。彼の目にはチート能力の他にも後天的な要素が余さずに見透かされるらしい。なんとなしに予想はついていたのだが、具体的な話に頭が痛くなりそうだ。

「色々と酷いわね………。あら、そう言えばイケメンは?」
「あいつは『勇者能力チート』が追加された以外は変わらん。元々才能の塊みたいな能力値にチートが合体して手がつけられ無いレベルになってる…………のだが」
「のだが?」
「知能レベルがEになってる。…………どゆこと?」
「それって何段評価のEレベル?」
「E〜Aの間で、もちろん最低レベルだ。なぁ、あいつって学校じゃ成績優秀者だよな。中間テストの点数とか、確か上から三つか四つだった気がするんだが」

 本気で訳が分からない、と彼は首を傾げていた。逆に私は身近でイケメンの人間性を『不本意ながらに見せ付けられて』きたので、知能レベルE評価の内容に納得ができた。

「無駄に能力があるせいで、他の人なら悩んでしまいそうな問題も力技で解決できちゃうのよ。下手に悩む必要がないから思考も発達しない。短絡的で独善的な風に成長しちゃうのよ」
「随分と酷い言い草だな。同じクラスで生徒会役員の同僚なんだろ?」
「やめて欲しいわね。どちらも私の本意じゃないわ。あの男の身勝手な行動で、私や周囲のマトモな神経の持ち主がどれほど迷惑を被ってきたか。よく考えずに表面的な評価だけで人を決めつけるから、一部の人間からは評判は最悪なのよ」
「…………ああ、なんとなく想像できる」
「どこかの誰かさんたちは私とイケメンがお似合いだとか誤解しているけれど、本音を言わせて貰えば願い下げね。とてもじゃないけど、形はどうあれ人の趣味を馬鹿にするような奴とは到底仲良くなれるとは思ってないわ」

 そうなのだ。下手に容姿が整っているのと感情に出にくい鉄仮面の表情のせいで、周囲の私に対する印象が『品行方正な冷静沈着』と根付いてしまっているのだ。本来の私はアニメもゲームも漫画も嗜む二次元大好き人間なのだ。成績を上位に保っているのも、それを理由に親からの余計な口出しを防ぐためだ。趣味を全力で楽しんでも文句のないだけの成績を保とうとした結果なのだ。

「そーいえば一番新しいモ◯ハンはどこまでやったん?」
「村クエは総なめしたわ。猫クエもね。次は集まりクエよ」
「スゲェ!? え、まだ発売してそんなに経ってないぞ」
「私はいつも村クエをすべて終えてから集まりクエをやるタイプなの。だからそっちにはまだ手をつけてないのよ」
「ちなみに武器は? 俺はガン◯ンスとハンマー。最近はヘヴィ◯ウ◯ンにも手を出してる」
「どれもこれも通な武器を使うわね。私は片手剣ね。今回から新要素が追加されたし」

 ……………………ちょっと待って欲しい。

「………いつ私がモン◯ンを買ったって言ったかしら。これまでの会話で一度も話題の欠片も出てこなかったはずなのだけれど」
「気づくのに微妙に時間がかかったかな」

 あまりに自然な形で話題が始まったので普通に続けてしまったが。

「…………もしかしなくても『鑑定』?」
「や、悪いとは思ったんよ。ほら、今趣味の話がちらっと出たじゃん? ちょっと深く『鑑定』すると趣味の項目も見れるじゃん?」
「最後の部分は初耳だけど」

 私のジト目をさらっと流して続く。

「そしたら『二次元系オタク(玄人)』って出てくるじゃん? そしたらモン◯ンの話は外せないじゃん?」
「どうでもいいけどその語尾はうざいからやめなさい」
「ちなみに俺の趣味の項目には『二次元系オタク(黒帯)』って出てきたでござる」

 黒帯と玄人の差はなんなのかが少し気になる。

「……悪かったわね、学校でも噂になっているような女子がこんな生粋のオタクで」
「むしろそのギャップが『b』だな。むしろ色々な意味での同郷のものが出来て非常に嬉しい」

 と、彼は笑顔で親指をグッと立てた。

 不意にだ。

 あのイケメンのキラキラスマイルとは比べものにならないほどの普通の笑顔だ。

 だというのに、だ。

 私はこの時。ほんの微かにだが、小さく胸の鼓動が高鳴ったのを何時までも覚えていた。




「ぶぁっはっはっはっはっはっはっはッ!! ざまぁねぇなぁ、姫様よぉぉぉ!!!」

 高らかな笑い声を聞き、『彼』との邂逅に想いを馳せていた思考を現実に引き戻した。

 見れば、『彼』はお腹を抱えながら心の底から笑い声をあげていた。対してお姫様は己の華奢な細腕にはめ込まれた豪華な腕輪を外そうと躍起になりながら、視線は憎悪の感情を色濃くして『彼』を睨みつけていた。場の空気はそれまでとは違った意味で騒然となり、既に腕輪を装着しているイケメン(+三人)も状況の推移を呆然と眺めるしかできなかった。

 不思議なのは、自分たちが嵌めた腕輪をお姫様が装着した瞬間に、彼女の様子がおかしくなったことだ。別にもう一度外して『彼』に付け直させれば問題ないだろうに。

 けれども、この場の中にあっておそらく唯一であろう。私だけは目の前の現実が意味する真実にたどり着いていた。

 ----そう、この時こそが、『鑑定』という切り札が力を発揮する瞬間なのだと。

 私は誰にも気づかれないように、密かに己の能力を準備した。極端な変化が起こらないように、緩やかに周囲の『熱』を吸収していく。それに伴い、体内を駆け巡るエネルギーが活発化し、力が漲っていく。

 相談などなくとも、この後に『彼』が何をするのか、そして『彼女』が何をするつもりなのか、予想がついていたからだ。

 そして『彼』は私の予想に違わずに、お姫様に彼女と勇者たちが装着した『腕輪』の本当の名前と効果を高らかに説明させた。

<呪縛の腕輪>
ーーーーーーーーー
「装着者」は「装着させた者」に強制的に服従させられる。
その権限は絶対でありいかなる意志をもってしても逃れることはできない。
また着脱の権限も「装着させた者」に委ねられており、自らの意思で外すことはできない。
強引に破壊されると「装着者」は強制的に死に至る。
ーーーーーーーーー

 奇しくも、『彼』が想定していた事態とほぼ同一の内容だ。お姫様の目的は未だに不明だが、少なくともこんな呪われた品を説明もなくに嵌めさせようとしたのだ。ロクな事態にならないのは明白。清楚で可憐な外見からは、想像もできないほどの醜悪な内面を持っているらしい。

 横を見ると、顔を蒼白とさせた腕輪装着者たちが必死の形相でそれを外そうとする。力自慢の筋肉も腕輪を破壊するほどの勢いで力を込めるが、腕輪は歪みもせず外れる気配もまたない。

「御愁傷様」と勇者パーティーへ『彼』が小声で言葉を贈った。全くの同感だ。

 予想外だったのが、『彼』が流れるような動作でお姫様に『腕輪』を嵌めたことだ。土壇場でのアドリブにしては見事すぎる。おそらく、他の勇者たちが腕輪を装着している最中に何度も頭の中で繰り返したのだろう。

「き、貴様ぁぁぁぁぁああああああああああッッッッ!!!!」

 決して明かされるはずのなかった真実を己の口から暴露させられ、お姫様は案の定に激情した。顔を醜く歪ませると、『彼』に掴みかからんと飛び出した。

 私は瞬時にそれまで待機状態になっていた『能力』を全開にした。私の周囲に漂う空気中の水蒸気が、熱を奪われ一瞬にして凍結。光を乱反射する氷の残滓を後に残し、常時を遥かに超える身体能力を持って棒立ちのままの『彼』と襲いかかろうとするお姫様の間に割り込んだ。

「させないわ」

 言葉を呟きながら、お姫様の両腕を掴んて動きを止めた。

「なッ、あなたは!?」
「彼は誰にも傷つけさせない」

 私が動くことがあらかじめ分かっていたのか、『彼』の言葉には動揺が少なかった。

「助かった」
「あなたは荒事面では役立たずなのよ。もうちょっと用心してほしいわね」
「ここは信頼の証、ってことにしてほしいね」
「調子がいいことで」

『彼』と軽口を叩きながら私はお姫様を押しながら彼女の両腕を解放した。後ろへ倒れこむ彼女を尻目に、私は『能力』を解除する。活発になっていた体内のエネルギーが沈静化するが、一度高まった『熱』が失われると体が凍えてしまいそうな錯覚をしてしまう。『能力』を使った後はいつもこうだ。

 それまでは人知れずに自分の体を抱いて寒さを耐えるのだが、ある時からはもっと別の方法で温もりを取り戻す方法を思いついたのだ。

 私は、こちらに笑顔を向けてくれる彼の腕にそっと、抱きしめるように縋り付いた。触れ合った場所から伝わる『彼の温もり』に私は心の底から安堵する。

「っておい、さすがに恥ずかしいんですけど」

 衆目の面前でこんなことをされて、さすがの彼も恥ずかしいのか、頬に赤みが増した。胸を押し付ける形になって私も恥ずかしさを覚えてはいるが、それよりも彼の温もりを感じる方が大事だ。むしろ腕を埋める胸の間から彼の体温を感じられて幸せだ。最近になってようやく自分の胸の大きさを素直に受け止められるようになった一因でもある。

「あら、意外と初心ね。昨日はアレだけ激しくーーーー」
「いきなりシモをぶっこむのやめてくれません!?」

 ワザと煽ってあげると『彼』の羞恥度が上昇し、体温が更に上がる。幸せ満点である。

 不本意ながらに召喚された呼ばれた私だけれども、この世界に来て良かったと思える点が一つあった。

 おそらく、私のステータスには『恋人:一人』という項目が追加されていることだろう。






 
投稿したい欲が膨れ上がりすぎて投稿しました。
もしかしたら最後のところに後日色々と追加するかもしれませんが、とりあえず今回はこれで。
今のところ、勇者(笑)パーティーと姫様視点の物語は考えていません。

連載中の小説はこちらになります
『カンナのカンナ 〜間違いで召喚された俺のシナリオブレイカーな英雄伝説〜』
http://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n3877cq/
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