「観念しろ、キッド!!貴様も今日で終わりだ!!」
「おや、こんばんは、中森警部。今日はまた一段と早いお着きですね」
「ふん・・・ここも見張ってたからな!!」
「それはそれは・・・さすがですね」
7月7日。七夕というロマンチックな夜。
満天の星が輝く空の下、物騒な会話・・・いや、1人は物騒で、1人は飄々とした様子で会話をしていた。
ビルの屋上で、本日の戦利品の確認をしていた“確保不能の大怪盗”と謳われる怪盗キッドが、飛び込んできた馴染みの警部と対峙していた。・・・が、
「すいませんが、警部。本日は少々急ぎますので、警部とゆっくりお話している時間がないのです。申し訳ありませんが、これにて失礼☆」
と言うやいなや、POM☆と煙幕を張り、警部が何も言えずにむせている間に
自分の羽根で夜空へと飛び去った。
いつもなら、こんな失礼な去り方をしない怪盗紳士がこんなにも早くに立ち去ったのには理由がある。
それは今の時刻、8時―――怪盗にしては少々早い時間だが―――から約7時間ほど前にさかのぼる。
怪盗キッドこと、黒羽快斗が本日の仕事に向け、着々と準備をしていた時。
家の電話が鳴り響いた。他に誰もいないため、快斗が出ると、相手は幼なじみの青子。
「あ、もしもし、快斗?あのね、今日七夕でしょ?近くに住んでるおばあちゃんが笹の葉分けてくれたの!!だから七夕パーティーやろうと思ってるんだけど・・・快斗、来れる?」
と、最初は嬉しそうに言っていた青子が、最後の方だけ心持ちテンションが下がっている。
それに気づかない快斗ではなく。
「うーん・・・今夜、かぁ?何時?」
「8時だよ。最近夜も明るいから」
「8時かぁ・・・」
仕事・・・終わるかなぁ・・・いくらいつもより早い時刻の予告とはいえ・・・と口に出さずに悩んでいると、電話口で
「・・・無理、かな」
と心細い声がしたのを聞き、
「なんとかなると思う!ただ、少し遅れるかもしんねぇけど・・・」
と返事をしていた。
「ホントッ!?じゃぁ、待ってるからね♪」
「おう。しっかし、青子もお子様だよなぁ・・・七夕パーティなんて!」
「な、なによぉ!いいでしょ!!」
「ケケッ・・・」
「じゃぁ、待ってるからね!!」
という声で電話は切れた。
「さて、仕事・・・早くしねぇとな!」
そして、いつも以上の早さで目当ての宝石を奪い、冒頭に至る。
「やっべぇ・・・急がねぇと!」
と近くのビルに降り立ち、周りに誰の気配もないことを確かめてから快斗に戻り、呟く。
そして、青子の家へと走った。
8時20分。
息を切らして青子の家に到着。
「青子ー!来たぞ?」というと
「あ、来た!上がってー!!」と奥から声がした。
「おじゃましまーす・・・」と言いつつ靴を脱ぎ、家に上がる。
「快斗、今ね、短冊にお願い事書いてたの!快斗も書いてね!」
と、青子は嬉しそうにオレンジ色の長方形の紙を渡す。
「願い事、ねぇ?」
と言いつつ、青子のをチラッと見ると、
『お父さんがキッドを捕まえられますように』
と書いてあり、苦笑い。しかしその後すぐに、自分の願いじゃねぇんだ・・・と思い、その苦笑は微笑に変わる。
そして、自分も考える。・・・が、思いつかない。
「快斗ー、まだぁ?早く飾りたいんだけど・・・」
「うーん・・・。何がいいかな?」
「早くしてね?」
と、青子は急かして台所へと入っていった。
そんな青子を見つつ「よし、決めた!!」と小さく呟き、サラサラと記入。
それを笹の葉に取り付け、庭へと出す。笹の葉を眺めていると、
「快斗、書けた?・・・あ、出してくれたんだ!ねぇ、ケーキ食べよ!」
と青子が戻ってきた。
「お、ショートケーキ、七夕仕様じゃん♪」と嬉しそうに部屋の中へ。
その部屋から明るい光と笑い声が漏れ、光が笹に飾った快斗の短冊を照らし出す。
――――たった1日だけじゃなく、毎日側にいたい――――
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