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異世界に巻き添え召喚されました 作者:鹿鳴館

一章

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8#散水師


 僕は、ドキドキしながら、おばばの前に出た。

 村人達も 『ゴクリ』と唾を飲む。

「うぬぬ~」
 おばばの目がカッと見開く。
「おぬしは 園崎 真 散水師じゃ バケツを持て!」











 シーーーーーーーン
 静寂の後、僕は膝から崩れ堕ちた。


 何で? 何で僕だけ本名?!
 何で?

 それに『散水師』って何? 『勇者』はどこいったの?
 トドメにバケツって何よ!
 僕に何を望んでいるのよ!
 バケツでオークと戦える?! 無理だよね?

 と、心の中で散々愚痴りまくった僕。

 しばらくの静寂の後、村長がおばばに尋ねた。
「おばば? その~『散水師』とは なんじゃ?」

「ん? ん~~……水を撒く人の事かの?」
 自信無さげな、おばば。

「それは 、何処から水を?」
 疑問に思う村長。

「説明より 実践じゃよ おい そこの!」
 おばば は一人の 村人を指名した。
「桶を 持ってきてくれ!」



 一人の村人が、桶を持って来て、僕の前に置いた。

 おばばが、
「さあ、桶に手をかざしな。そして『散水』と叫んでごらん」


 心に、回復不可能なダメージを負った僕は、何も考えず、おばばに言われるがまま『散水』と唱えた。

 すると 桶の中に、シャー っと、ジョウロから 水を出すような 感覚で、水が出てくるではないか。


 村人達も、僕の仲間達も、一堂 (シズ)まりかえる。


 あぁ……みんなドン引きしてるよぉ。
 これじゃ、オークはおろか、虫すら倒せないよ。
 何故、僕だけ……

 と、思っていると、今回一番の大歓声が、部屋中に響き渡った。

「うおーっ 水だーー!」「水だ!」「水だぁ!!」「水が出たぞぉ!」「水きたーー!」
 村人の数人が、おばばに僕の事を、
「彼の名は?」
 と、聞いているようだ。


 おばばは「真じゃよ そのざ……」
 おばば の声は、ここで村人達に遮られ、聞こえなくなった。


「まことー!」 「まこと! まこと! まこと!…………」「ま・こ・と・!」
 鳴り止まない 『真コール』

 村人達が、あまりにも興奮してるので、事情も聞く事が出来ないほどだ。
 村長に至っては、泣き崩れている。

 ブライ達も、事情が解らず、唖然としている。
 もちろん、僕もだ。

 一番役立たずで 、下手をすると『真殿は、村から出ていって貰うかの?』と 言われても、仕方無いとまで思ったほどなのに……



 かなりの時間が経過し、歓声も奇声も少し落ち着いた所を見計らい、唯一冷静だった、おばばに 質問した。
「これは、一体どうゆう事ですか?」

「ふむ……要はな、水不足だよ。ここ暫く、雨は霧雨程度しか降らなくての、しかもこれが原因で、地主が上流で、川の流れを規制してしまったんじゃよ。 これで、村は深刻な水不足になったのじゃよ。 飲み水は『てんさぼ』と言う水を溜める植物から絞り出してな しかし付近の 『てんさぼ』は、あらかた取り尽くしたとこなのじゃよ」

 おばばは、一息つき 話を続ける。

「そんな訳で、数日前、村の精鋭達が 地主である 水門の管理者に『シラネ』の町まで、水の確保と、水門の開放を頼みに、決死の覚悟で向かったじゃよ。
 そしたら 今度は『ブラックオーク』に子供達が拐われてな わしが言うのもなんだが、 この村は呪われてるかと思ったわ」
 
 また、村人達から 驚きの声が、上がりだした。
 見てると、どうやら 村人の一人が、水を試し飲みしたらしい。
 
 村人A「う、旨い!……なんだ?この水は 『雨水』いや 川の水……山の水より旨い!」

 村人達は一つの桶に群がり出した。
  数分もしないうちに、桶の水は空になってしまった。

 村人の一人が、空になった桶を持って、僕の前に立った。

 言われなくても解る……。
 水のおねだりだ。

 僕は『散水!』と言って、桶に水を溜めた。
 再び村人達は、桶に群がり出した。

 ブライ達は、完全に放置プレイだ。


 村人達は、全員で桶に群がってる訳じゃない。
 一,二、三……九人の村人が、まだ僕の近くにいる。

 その村人達の共通点は、桶を持っている事だった。
 しかし、何時の間に桶を用意したんだ? 不思議だ。

 水の配給を、暫く続けていると、二十杯を超えたあたりで、魔法が打ち止めになったらしく『散水』と唱えても、水が出なくなってしまった。

 僕自信も、魔法を使い続けたせいか、立っているのが辛くなり、座り込んでしまった。


 村長はと言うと、飲んだ水が、気に入り過ぎたらしく、まだ泣いている。

 きっと、拐われた子供達の事、忘れてるよね?


 ぐったりしている僕の所に、おばばがやって来た。

「真、お疲れ様だね」

「……」
 僕は何も言わない。

「明日は『ギルドカード』を発効する。正確な職業や特殊能力があれば、それも表示されるよ。明日の朝食が終わった頃に、誰か迎えによこすよ」


 おばば は、ちらりと視線を村長に向ける。
  僕も釣られて、村長を見る。

 泣き疲れたのか、寝てしまっている……
 オイオイ、小さい子供かよ……

 おばばは、話を続ける。
「ギルドカードを発効したら、武器と防具をあげるよ。もちろん、タダ だから心配要らないよ。ついでに 真も来るかい?」

 僕、ついでなんだ……シクシク。
「うん……」

「それじゃ、今日はもうお休み。明日からみんなには、やってもらいたい事を、色々と用意するからね。他に聞きたい事はあるか?」

 僕は、小さく手を上げる。
「あの~ 、僕だけ……夕御飯、食べて無いんだけど……」

 マーニャ「ちゃんちゃん」


 こうして、衝撃の異世界1日目は幕を閉じた。
改稿済み。
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