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異世界に巻き添え召喚されました 作者:鹿鳴館

三章

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98#case4・嵐山節子(あらしやませつこ)

 ◇埼玉県 某ショッピングモール
 大広間 (イベント会場)◇


 ここに嵐山節子(あらしやませつこ)と言う一人の中年女性が、マイクを持って立っている。

「神は在ります」
嵐山節子の言葉に、会場にいた全員が復唱する。

「「「「神は在ります」」」」

 ……
 …………

 一通り演説を終えた後、オフィスの一画を自室としていた嵐山節子は、そこで考え事をしていた。

(隕石群やゾンビの発生は予知出来ていても、個々の人達の動き迄は、読めないわね……まさか300人以上の一般人を助けられたなんてね……)

 嵐山節子は隕石群とゾンビ大発生を予知して、非合な法的手段で武器とバスを大量に調達して備えた。

 当日、当然の様に大混乱となったショッピングモールに、意図的に中1日空けて制圧した時、嵐山節子の予想では、無事な人間はもっと少ない筈であった。

 平日のショッピングモールも意外に多くの人々が買い物をしていたし、『在神教』の信者も良く働いた。

 結果300人近くの一般人を助け『在神教』の信者と合わせて500人近くも養う事になるとは、彼女でも予想外の出来事だった。

 その彼女の考え事は、ある人達によって中断された。


 一般人 約300人は、5つのグループ別れて集団を作っていた。
 その集団の代表と思われる5人の男達が、彼女に会いに来たのだ。

「御話とは何でしょうか?」
 と嵐山節子は問う。

 1人の男が口を開く。
「あなた方のグループと我々のグループ差別を無くして頂きたい」
 残りの4人が、うんうんと 頷く。

 嵐山節子は何故?っと言った表情で聞き直す。
「差別とは?」

 1人男の声が荒ぶる。
「食料の事だっ! 我々の食事はお世辞にも充分とは言えない……それなのにあなた方のグループは沢山の食事を採っていると聞いているぞ。 これを差別と言わないで何と言う!」

 嵐山節子は落ち着いた姿勢を崩さないで話す。
「これは区別です」

 あっさりと言い返された男が、口ごもったが別の男が、
「詭弁だ! 我々は同じ人間はなんだ。平等にするべきなんだ」

「「「そうだ! そうだ!」」」

 嵐山節子は、1人の男を見つ話す。
「貴方、年収は?」

「はっ? 年収? そんなもの今は関係ないだろ、それが何だって言うんだ?」

「私は聞いているのです。貴方、年収は?」
 今の嵐山節子には、逆らい難い圧倒的威圧感を感じた。

 男はつい自分の年収を言ってしまう。
「500万」

 嵐山節子は質問続ける。
「貴方は?」

「……550万」

「貴方は?」

「630万……だ」

「貴方は?」

「900万」

「貴方は?」

「よ、480万」


 嵐山節子は一番年収の高い男に改めて質問をした。
「おかしいわね? 同じ人間なのに平等にではないわね……どうしてかしら?」


 男は声を大にして叫ぶ。
「当たり前だ! 私はそれだけの働きをした。私は有能だと自覚しているし、それに傲らず努力もして結果も出した。私の年収にとやかく言われる筋合い等無い!」

 嵐山節子はニッコリとして
「それです……我が子達は、見事にゾンビから身を守る場所を作りました。勿論私の助言もありますが……我が子達は、勇気と努力と才能を見せてくれました。それも命がけでね……貴方の言葉を借りますと、『何もしていない貴方達に、とやかく言われる筋合い無い』ですわね?」


 5人の男達は静かになった。
 この5人はグループの代表になるだけあって、馬鹿ではない。

 改めて気づかされてしまったのだ、命を賭けゾンビから身を守ったグループと、ただ何もしないで守られていたグループの圧倒的違いに……

 だが、だからと言って簡単には下がれない。
「私達は納得したが、そんな言葉では納得しない者達も多く居るだろう……そうなると暴動が起きてしまう……考え直してはくれないか?」


 嵐山節子は目を閉じて少しだけ考えた……
「そうですね……貴殿方(あなたがた)がしっかりしていれば、暴動は……後2週間は起きないはずよ? 暴動を起こした者は、追い出せば済むのだけど……それも少し可愛そうかしら……いいわ、私も良い案がないか考えてみましょう……ではお引き取りを……」

 嵐山節子は5人の男を追い出した。


「一ノ関、二ノ宮、幹部を全員集めて頂戴……大事な話があるの……」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 いま、ここには『在神教』幹部10名が2列に縦並びになっている。
 
「みなさん、貴方達や我が子等のお陰で、ゾンビからの被害も少なく安全地帯を手に入れたわ……改めてありがとうね……」


 幹部達は、『畏れ多いです』とか『ありがとうございます』とか『これも全て教祖様のお陰』とか、色々な言葉が出てきた。

「しかし一般人も多く助かってしまったわね……それに、問題になるのは食糧よね? …………我々は近くに有る大型施設『ゴズドゴ』を、制圧して食糧を確保します」


 幹部の1人、八ノ戸は、
「ですか、教祖様『エデン』の外には、今も数千体ものゾンビどもが徘徊しています……きゃつらはどういたしましょう?」


「使徒を呼びます……」

「使徒?」×10
 在神教の幹部達は一斉に驚く……

 幹部達は、嵐山節子から使徒の事を話だけは聞いていたのだが、正直『在神教』の名前を売るための宣伝だと思っていた。

 他の宗教の『癌が治る』『死後の世界で天国に行ける』『宙に浮ける』等の様に……

「今日は、私の気力が充実しています。今夜『使徒』を召喚致しましょう。ではまた夜の食事を済ませたら、みんな集まって下さいね」

 
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 嵐山節子は膝立ちの姿勢で手を組み、ブツブツと祈っている。
 そして、声が大きくなった。

「神の使徒よ! 今ここに在れ!!」

 嵐山節子の叫びと同時に『ボンッ!』と音がして、煙がたち込める。

 暫くすると煙は薄くなり、煙の中に誰か居るのを幹部達は確認した。

「おお?!」×10

 その姿は…………彼は銀髪の長髪をしており、眼は切れ長の碧眼で、涼しげな容貌をしていた。
 彼は上半身を脱いでおり、下には黒いズボンを履いていた。
 透き通るような白い肌は、この世の物とは思えないほどに美しく眩かった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 使徒視点

 ここは…………ここは何処だ? 私は太陽に焼かれて死んだのではなかったか? 何故生きている?

 1人の女が私に向かってひざまずいている。

「ここは、何処だ?」

 女は頭を垂れたまま教えてくれた。

「はい、ここは日本と言う国です……私が『神の使徒』としてお呼び致しました。私はこの集団を束ねる『在神教』の教祖、嵐山節子と申します」

 この女を見ながら、考えた……

 呼び出した? 私は召喚されたのか? 助かったのか?
 しかも日本だと?

 …………ふふ、ふはははははっ! 何と言う事だ……

 私にまた世界を統べる機会が巡って来ようとは……

 先ずは、私を呼び出した礼に、この女を苦しまずに消してやろう……

 そう思って右手を掲げ、殺意を女に向けたとたん右腕が消えいく……

 何だと?!

 慌てて殺意を止め、後ろに数歩下がる。


 すると消えてしまった腕は徐々に元通りとなった。


 そうか……私は助かったのではなく、命を落としたのだな……そして、この女の命で仮初めの生を貰ったのか……

 まあ、太陽に焼かれ朽ちるよりはましか……

「女、節子と言ったな……私を使うからには覇道を歩む事になるぞ……」

「はい、構いません使徒様」
 女は、この私が日本の覇者になるのは、問題無いようだな。

「ギースだ。私はギースブラッドだ……覚えておけ」

「はい、ギース様」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 節子から、この世界と今の状況を聞いた。

 私の知っている日本とは若干違うようだが、私にはなんの問題も無い……問題は『勇者』だ。

 この世界にも私の覇道を阻む、勇者の存在が在るかどうかだ……

 しかし今の私は『在神教』の象徴となって、人間を導く役目が有る……

 私にはこの世界の覇者になるのだ、手始めにコイツ等くらい手懐けないとな。


 そして、節子から貰った命で、私は何処まで能力が引き出せるか試さなくてはな…………

 ふははははは、今度こそ……今度こそこのギースブラッドが、日本の……いや、この世界の覇者になってやるわ!


~~
しかし、この嵐山節子の使徒召喚は、彼女の知らない所で、とんでもない事態を引き起こしていた。
~~


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 時は嵐山節子がギースブラッドを呼び出した直後、場所は埼玉県某所にある ○○銀行 金庫室。

 この密室の中に、3人の男がいた。


「こ、ここは何処っすか? 真っ暗で何も見えないっす」

「第1レベル呪文……ライト」


「おおっ、明るくなりました。流石アーサーさん」

「なんだ、アーサー……まぁ都合良く『ライト』なんて覚えてたな? ……ここは密室みたい……だ……が……金庫? ここは金庫室か? 」

 回りには、重要な証書の入ったケースと大量の紙幣が山積みにされていた。

「うあっ!? カーズさんっ! アーサーさんっ! 日本円です……日本円が有りますよっ! おれ達、帰って来たんです。 日本に帰ってきたんですよぉ!!」

 この男は、かなり興奮していた。

「キンジ 煩い また 日本か 強敵 居ない 困る」

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◇茨城県 某所施設 多目的トイレ◇

 この狭い空間に、男が2人、女が3人、所狭しとばかりに密集していた。

リ「うわっ、せまっ、くらっ」

か「こ、ここは……」

マ「お兄ちゃん恐い」抱き付きっ!

ガ「うん? マーニャ、ついに俺にもデレたか?」

マ「ぎゃぁぁぁぁぁぁ、ガルさんだったぁぁ」

ラ「……今、灯りをつけるから……第1レベル呪文……ライト」

リ「うわぁ、明るくなった。…………えっ? 何この部屋……」

か「あっ……もしかしてトイレ? でも、この作りって……日本?」

マ「うん、お兄ちゃん……ここ、日本のトイレだよ……」
 確かにトイレの取り扱い方の最上段は日本語標記だった。

ラ「日本だと!? 僕は戻ってきたのか?」

ガ「いやいやランディ、ここは確かに日本かも知れないが、俺達が知ってる日本とは別物の可能性が高い……だが……それでも日本だな」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  そう……嵐山節子の『ギースブラッド召喚』の影響で、 とんでもない問題児達を『巻き添え召喚』してしまったのである。
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