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妄想癖。第三章
パラノイア3
作:荒木ヒロ


 その日、俺が家に帰ると奥さんがテーブルに座って本を読んでいた。

 どうやら俺が帰ってきたことにはまだ気づいてないらしい。

 奥さんがこんなにも集中してたのは新聞のクロスワードと間違え探しをやってたとき以来だ。

 しばらく背後に立っていた。

 うぅっ?あ、あぁ。はぁ、あなた帰ってたの?ごめんなさい気がつかなくて。
 でも急に後ろに立ってたからびっくりしちゃった。
 本に戻る。

 良いよ別に。ところで奥さんさぁ何読んでたの?
 向かいに座り奥さんの顔を見る。実に綺麗だ。
 本を読んでる女ってのは良いもんだねえ。

 うん。スティーブンキングぅ。
 眠たそうな声だが決して眠たい訳じゃない。

 目が上下し呼吸しページをめくり繰り返している。

 へぇ。奥さんミステリー小説なんて読むんだ。
 俺は頬杖をついた。

 んー?何言ってるの元はあなたのでしょこれ。

 ボク?持ってたっけそんなもの。どこから引っ張って出してきたの?

 押し入れの奥だけど……まさか忘れたの?

 そうだ付き合い始めの頃俺読んでたわ。

 ああ。覚えてる覚えてる。そういえば、あの時のボクも奥さんみたいだったのかもしれないね。

 うふ。やっと思い出した?
 微笑みのあとキングに戻った。

 
 そうだ。ねぇ。
 今日はボクが晩ご飯を作ろうか?

 たまには良いだろ。いつも作ってくれてんだしと俺は思う。

 えー?いいのー?
 吐息で笑う上の空。

 ため息の俺。
 いいよ別に。スパゲッティくらいならボクでも作れるから。奥さんはそのまま読んでて。

 うーん。
 奥さんは完全に別世界に行ってしまっている。
 確か、台所に結束のスパゲッティとカルボナーラソースがあったな。
 
 俺が台所に立つと、向こうで奥さんはスタンドバイミーを歌い出した。
 俺は奥さんのこういうところが好きだ。

 アウトローを聞きながらパスタを茹でて。
 日が暮れ始め、やがて月が昇る。


 奥さんは食べながらも読んでいた。

 ねぇ奥さん食べるときくらい読むのやめたら?

 うーん。
 唸りたいのはこっちだっつの。

 
 














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