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マリオネット
作:夏月 隼


「さぁ、踊りなさい」
 大きな声が聞こえる。
 耳元で響くその声は、張り巡らされた糸の絡み合う音に掻き消され、
そして彼女はその音にあわせ、優雅に空を舞う。
「空を、歩きなさい」
 床を蹴り、(くう)を蹴り、もがく様にして、
果てなく遠く続くこの大空へ、一歩、一歩、踏みしめていく。
「さぁ、踊りなさい」
 腕が、肩が、悲鳴を上げる。
 宙吊りになった彼女は、張り巡らされた糸が絡まり、千切れる度、
揺れ動き、さらに絡まり、千切れ、食い込み、裂ける。
 ――でもね、わたし、いたくなんか、ないのよ
 なぜなら、私は…
「ねぇ、落ちなさい」
 耳元で聞こえる声。大きく響く声。美しい声。
 嗚呼。嗚呼。また一つ、糸が切れる。嗚呼。嗚呼。
「ほら、喋りなさい」
 口は閉ざされたまま動かない。
 彼女は唯、固められた口を閉ざし、
二本の木に吊るされた糸に繋がれ、大空を舞い踊る。
 ――美しい。
 その美しさは、まるで泡沫うたかたのように、
儚く、弱い、虚構きょこうで固められた、偽りの美しさ。

「さぁ、踊りなさい」
 糸が一本、ぷつりと切れる。
「ねぇ、落ちなさい」
 もう一本、ぶつりと切れる。
 ――嗚呼、落ちていく。
 風に体が抗う。抵抗を受けて、ゆっくりと落ちていく。堕ちていく。

「そう、眠りなさい」
 狂った声が耳に届く。

 ――でもね、わたし、いたくなんか、ないのよ

 なぜなら、私は…

 …私は、マリオネットだもの。


数行ほどの呟きから広がりました。
元々詩だったのですが、折角だから小説にしちまおう、という。
マリオネットという人形は残酷で好きです。聞いてねぇか。













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