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Chapter:7 孤島にて
Episode:83
「ルーフェイアの話ではシルファさん、相当荒れてたようですわ」
 まぁ分かりますけどと、サリーアは小さく付け加える。
「そうでしょうね」

 ふだんは他人が苦手でおとなしくしているが、本来の彼女は意外に気性が激しい。先ほど、出会い頭にバッグを投げつけてきたのが、それを端的に示している。
 根は優しく面倒見がよいから、ついていったルーフェイアが被害を蒙ることはないはずだ。だが他のところでは、ひと悶着くらいはあっただろう。

(まったく、素直に言えばいいものを……)
 つい、そんなことを思う。おかしなことを企んだりしなければ、こんな騒ぎになっていない。

「いま、案内の者を呼びますわ」
「それには及びません。場所だけ教えていただければ、自分で行きます」
 幼児ではないのだ。このあたり、もてなしと言えばそうだが、度が過ぎるとも思う。
 サリーアが部屋の場所を説明し、付け加えた。

「お夕食のときには、お知らせしますわ」
「部屋に運んでください。」
 言って部屋を出て行こうとした彼の背に、言葉が飛ぶ。
「タシュアあなたね、もう少しシルファ構わないとダメよ」
 本当にお節介だ。

「蔑ろにしたことはありませんよ」
「そうじゃなくて、あなたのほうからシルファの喜ぶようなこと、してやりなさいって言ってるの」

 あれやこれやと、学院の教官並みに五月蝿い。当人は親切のつもりなのだろうが、押し売りもいいところだ。
 堪えないだろうが、一言言ってやろうかと口を開きかける。が、カレアナのほうが早かった。

「何かは知らないけど、シルファあなたに、相当のことしてくれたんじゃないの? だったら日頃から構うくらい、どうってことないと思うんだけど」
「………」

 言われて思い返す。
――あの日の、あの味を。
 遠い記憶の彼方というほどではないが、ふだん意識することもなくなった、それ。
 ただあれは、決定的な分岐点だった。

「あなたが相手しないから、シルファは怒ってるの。だから放っておいたら、いつまでも怒ってるわよ」
 先ほどの言葉でこれ以上何かいう気概は薄れたが、それでもしつこい……と思う。

 ただ、カレアナもサリーアも、一応シルファと同じ女性だ。その意味では思考パターンは、さほど隔たりはないだろう。
 ならば当たらずとも遠からずなのかもしれない、とそんな風に思った矢先。

「タシュア、シルファのこと強引に捕まえて、キスでもしときなさい。それで収まるから」
 背後でサリーアが、笑いをこらえている気配がする。
「別に押し倒してもいいけど、場所だけ考えてね。ほら、ここには小さい子も多いから」
 それを完全に無視して、タシュアは自分に充てられた部屋へと向かった。





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