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Chapter:7 孤島にて
Episode:76
◇Tasha Side

 強引に学院から連れ出され、着いたのは小さな島だった。学院の本島より、まだ狭いだろう。
 カレアナの話ではケンディクから海を越えた、ワサールの南部ということだった。そこにシュマーの保養施設として、島を丸ごと買い取ってあるらしい。

 もっとも用心深いタシュアは、その話を鵜呑みにしたわけではない。だがカレアナが嘘をつく理由がないのと、自分で計測した太陽の角度などから、おそらくそうだろうと思っていた。

(念のため精霊を持ってきて、正解でしたか)

 普段から精霊を憑依させることをほとんどしないタシュアだが、持っていないわけではない。そもそも学院の傭兵隊には、無ければ貸し出しされるくらいだ。
 ただ上級隊ともなると、かなりの人数が自前の精霊を持っていた。

 実際には精霊を発見・捕獲した場合、学院側に報告・提出することになっているが、多くはそれを無視している。しかも学院のほうも、「その場合は何があっても自己責任」と、黙認していた。
 タシュアもまたその例に漏れず、手持ちの精霊は全て、自力で捕獲し未提出のままだ。
 その中で今は、飛行系の精霊を持ってきていた。

 多くの場合精霊は攻撃に使うが、それしか出来ないわけではない。実際これは、攻撃させずに現界時間を引き延ばすことで、巨鳥の代わりになる。
 もちろん、長時間は無理だ。だがこの小島から近くの街までなら、十分に持つだろう。

 シュマー関連の施設だからというだけではなく、こういった小島では気象条件次第では、簡単に孤島となりうる。さすがに食料などの備蓄はあるだろうが、脱出手段は多いに越したことはない。
 それに、タシュアをここに連れてきたカレアナにも、敵は多いのだ。一緒に居ては、何かに巻き込まれる可能性も無視できなかった。

 桟橋は小さいが、造りはしっかりしていた。今乗ってきた船の他にも、学院で使っている連絡船のような、小型艇が泊っている。おそらくは最寄の、プラジュの街まで往復しているのだろう。
 すぐ近くに、建物が見える。あそこが今夜の宿泊場所らしい。

「こっちよ」
 だがカレアナは、違う方向へ歩き出した。とりたてて訊くこともないので、黙ってあとをついていく。
 島内は、きれいに整備されていた。道は歩きやすく舗装され、あちこちに案内板まで出ている。

(どこかの観光地ではあるまいし)
 自分の敷地なのだし、そう広い場所でもないのだ。迷うとは思えない。それともシュマー家というのは、よほどの方向音痴ばかりなのだろうか?
 潮騒の音を聴きながら海岸沿いを少し歩くと、木々のむこうに別の屋敷が見えた。造りから判断するに、カレアナたちは先ほどの建物ではなく、この屋敷を使っているようだ。

――それにしても。
 正直、よく分からない。旅行に行くだけならまだしも、なぜこんなところへ迷い込んだのか、と思う。

 ルーフェイアを旅行に同行させたようだから、あの子が何かの弾みで提案し、シルファがそれに乗ったのだろう。
 ただいつもの彼女から考えると、珍しい選択だった。こういう形の突発的な行動は、シルファはあまりしないタイプだ。

 カレアナが屋敷の中へ入り、タシュアもあとに続く。
「……あらま」
 彼女が声をあげたのは、廊下に人影があったからだ。




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