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Chapter:7 孤島にて
Episode:68
◇Sylpha

 ルーフェイアに連れられて来た島で、もう数日が過ぎた。
 どうかと訊かれたら、「快適」と答えると思う。
 宿泊場所として提供された屋敷の一室は、ホテルの極上の部屋よりまだ上等だ。食事もそれに見合ったものだし、ビーチは占有に近い。

 他の人が、居ないわけではない。ルーフェイアが来る前に言っていたとおり、泊まりに来ている人をビーチで見かける。ただ私たちの居るのとは、別の建物を使っているとのことで、あまり顔をあわせることはなかった。

 ルーフェイアは、いま居なかった。「家がこの島を所有している」というだけあって、ここではいちおう主人になるらしい。そのせいか、時々ここの従業員(?)らしき人から相談を受け、何かをしに行く。

 ただ私の見るかぎり、ルーフェイアはここの従業員に、かなり好かれているようだ。大人しいうえに優しい子だから、皆に愛されている。
 そんな子がシエラに居なければいけない理由を思って、少し辛くなった。もしあれほどの戦闘力がなければ……こういうところで愛され、何一つ不自由の無い生活をしているだろう。

 だが一方で思う。それは本当に、幸せなのだろうかと。
 もちろんルーフェイアやタシュアのような育ち方が、いいとは思わない。だが何も知らず何の不自由もないというのも、幸せとは少し違う気がした。
 空を見ると、陽が少し傾いている。
 のんびり出来るのはいいが、独りがやっぱり嫌で、私は屋敷へ戻った。

「お帰りなさいませ。グレイス様なら、裏庭のほうに行かれましたよ」
 私の姿を見つけて、若い女の人が話しかけてくる。
 ここは以前行ったアヴァンの公爵家と違って、働いている人たちが気さくだった。慇懃なところもないし、私を見ると気安く声をかけてくれる。

 だがせっかく教えてもらったのに、「裏庭」と言うのがどこか分からなかった。「裏庭」と言うからには、この建物の裏手なのだろうが……。
 けれど私が言うより早く、向こうのほうから言ってくる。

「あ……申し訳ありません、『裏庭』だけじゃ分かりませんよね」
 不思議な事にここでは、問うより先に答えが返ってくることが多かった。それだけ、訓練されている人たちなのかもしれない。
「そちらに、この屋敷を回り込んでる、道がありますよね?」
 言って彼女が、私の左手を指し示す。

「ここを道なりに行くと、庭というか広場があるんです。グレイス様は、そこにいらっしゃいますよ」
「ありがとうございます。でもその前に、身体を流したいので……」
 海から上がってきたばかりで、着替えないことには始まらない。

「あ、すみません、気がつかなくて。すぐに準備しますから、いつもの離れへどうぞ」
「こちらこそすみません」
 預けておいた着替えを受け取り、屋敷の脇にあるシャワー室――お茶まで飲める――で身体を洗う。それから着替えて髪を乾かして、気づけばだいぶ時間が過ぎていた。
 さすがにもう、裏庭にはルーフェイアは居ないだろう。そう思いながら、なんとなく行ってみる。

「あ、先輩!」
 意外にも何人もの子といっしょに、金髪の姿がそこにはあった。
 その子たちを見て、足が止まる。

「先輩?」
 不思議そうに問いかけてきたルーフェイアに、私は笑顔を作って答えた。
「ずっと、ここに居たのか?」
「はい」

 自然な表情のルーフェイア。構えてしまう自分が、ひどく情けなくなる。
 ルーフェイアの周りに居るのは……どう見ても、何か障害を持つ子ばかりだった。それも、知的なものだ。




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