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Chapter:6 再び学院にて
Episode:65
「あなたに会わずに済むのなら、体調を崩していた方が良かったですね」
 シュマーの歴戦のツワモノさえ震え上がらせる、ルーフェイアの母カレアナに向かって、タシュアは平然と言い放った。
 さらに続ける。

「ただの茶飲み話に、逐一人を巻き込まないでいただきたいですね。私は酔狂で出かける方と違って、時間が余っているわけではありませんので」
「はいはい、せっかくの夏休みなのに余裕のないこと言わないの。そんなんじゃ、女の子に嫌われるわよ?」

 皮肉を言ったのだが、相変わらずこの女性には通じなかったようだ。
 以前に任務と称して連れ出されたときも、同じだった。元から、そういう神経は通っていないのかもしれない。

「そんなものはジャマなだけだと、以前も言ったはずですが。それとももう、少し前のことさえ思い出せないほど、耄碌されましたか?」
 冷たさを通り越して、鋭利な刃物と化した声。ルーフェイアならこれだけで、震え上がるだろう。
 だがカレアナは、意に介さなかった。

「あたしもさっさと、隠居したいとこなんだけど。でもなかなか、そう上手くいかないのよねぇ。
 そういうわけだから、おばさんの話に付き合ってちょうだいね」
「遠慮します」
 間髪いれずに断る。

「あらそう、困ったわねぇ」
 口ではそう言っているが、カレアナが困っているようには見えなかった。どう見ても、面白がっているだけだ。
 曲がりなりにも重ねた年月、あるいは経験の差から来るモノだろうか。もしかすると単に、性格なのかもしれないが……。

 いずれにせよ前回で十分に理解したつもりだったが、それでも苛立つ。
「用はないようなので、失礼させていただきます」
 踵を返して、部屋を出ようと扉に手をかける。が、そこで声がかかった。

「聞く気がないんじゃ仕方ないわね。
――シルファの事だったんだけど」
 思わず足が止まる。相手の策に嵌められているのは分かるが、内容が内容だけに、無視も出来なかった。

「あの子いま、うちで預かってるのよねぇ」
「どういう意味です」
 タシュアの声から感情の色が消える。
 そんな反応を予想していたのだろう。カレアナは楽しそうに笑った。

「意味も何も、言葉どおりよ。
 迷い込んだようなもんだけど、かといってそのまま返すわけにはね。で、ここへ話に来たってわけ」
「さすがシュマー、やることが違いますね」

 おざなりな返答をしつつ、思索する。
 カレアナの話から判断すると、現状シルファがいるのは、シュマー関連の施設とみて間違いはない。

(先ほど調べたホテルの記録では、宿泊者が2人になっていましたね)
 そうなると、同行者はルーフェイアか。
 予定の日程を終える直前に、まだ余裕があるからということで、ルーフェイアが誘ったと考えるのが妥当だろう。

(妥当ではありますが……)
 何かひっかかる。




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