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Chapter:5 プラジュにて
Episode:61
「そうだな……もう少し、足を伸ばしてもいいな。ここから近いんだろう?」
「はい! えっと、この町から見えます」
 自分の声が、弾むのが分かった。

「見えるって……そんなに近いのか」
 なんだか先輩が呆れたふうだけど、気にならない。もう少しいっしょに旅行(?)なんて、夢みたいだ。

「あの、そしたらあたし、連絡してきます!」
 つい勢いよく立ち上がって、椅子が倒れる。
 先輩が笑った。

「いくらなんでも、急ぎすぎだろう。せめてケーキを、食べてからにしたらどうだ?」
「あ……けど、早めに……」
 どっちを先にしたらいいのか、分からなくなる。
 先輩がまた笑った。

「すぐ、連絡できるのか?」
「あ、はい、この先の……えっと、系列の店で」
 ほんとは違うけど、まさか先輩をシュマーの隠れ家に連れて行くわけにはいかない。

「そうか。じゃぁ食べたら、そこへ行こう」
「はい」
 残りを食べて、先輩にお金を払ってもらって、店を出る。

「店と言ってたが、どこかのホテルなのか?」
「はい、その、ホテルで。えっと、この先です」
 きっとびっくりするだろうな、と思う。そんな業務は、管轄外なのだから。

 でも先輩が一緒なのと、行き先とを知れば、支配人さん辺りなら分かってくれるだろう。
 この町は別邸へ行く関係で、何度か来てる。だから系列のホテルの場所くらいは、覚えていた。
 先輩の先に立って歩いて、そのホテルへ入る。

「おぉ、グレイス様! こんなところへお立ち寄りいただくとは、光栄の極み!」
「えっと、あの……あんまり、言わないで……」
 入った途端に支配人と鉢合わせして、大声で歓待?された。

「あぁ、これは私としたことが! ところで、何の御用ですかな?」
 用件を訊いてくれたのはありがたいけど、声が大きいのはちっとも直ってない。
「えっと、その、別邸に行く用事が出来て……連絡、取ってもらえる?」
 支配人が、一瞬怪訝そうな表情になる。けど後ろの先輩を見て、すぐ意味を悟ってくれたらしい。

「すぐ、行かれるのですか?」
「ううん、明日の……えっと、午後くらい?」
 予定が分からなくて先輩を見ると、そうだと言うようにうなずいた。

「かしこまりました、少々お待ちいただけますか? その間、どうぞこちらで」
 指し示された近くのソファーに、座り込んで待つ。
 支配人は、すぐ戻ってきた。

「明日の昼前から、桟橋のほうに船を待機させておくそうですよ。お好きな時間にどうぞ、とのことです」
「わかった。ありがと」
 ほっとしながら立ち上がる。

「すごいな……そんなにすぐ、使えるのか」
「使えるというか、がら空きなので……」
 屋敷は迎賓館も兼ねてるから、部屋数が多いし、いつでもすぐ使えるようにされてる。ただ食材だけはその都度調達だから、明日はきっと、野菜やなんかと一緒に海を渡ることになるだろう。

 それを謝ると、先輩が笑い出した。
「構わないぞ、そのくらい。むしろ、積み下ろしを手伝わないと」
 なんだか先輩、さっきまでより楽しそうで、嬉しくなる。やっぱり、帰りたくなかったのかもしれない。

「そうだ、帰りの船をキャンセルしてこないと」
「あ、あたしも行きます」
 支配人にお礼を言ったあと、日が傾き始めた町並みの中へ、あたしたちは出て行った。




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