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Chapter:5 プラジュにて
Episode:60
「ここで、いいか?」
「はい」
 ドアを開けて、お店へ入る。

 強引にあたしを連れてきてしまったせいか、シルファ先輩はとても気を遣ってくれる。正直母さんより、いっしょに居て落ち着くくらいだ。
 でもそれだけに、申し訳なかった。

 あともうひとつ、あまり先輩が楽しそうじゃないのも、引っかかってた。ぜんぜん楽しくないわけじゃないけど、ちょっと物足りない。そんなふうに見える。
 きっとこの旅行……シルファ先輩のことだから、タシュア先輩と来るつもりだったんだろう。どうしてそれがダメになったかは分からないけど、たぶんあたしはその代わりだ。

――ちゃんと代わりに、なってるんだろうか?
 気を遣わせた上、代わりにもなってなかったら、どんなに謝っても謝り足りないと思う。

 じつを言うと気になって気になって、こっそり実家の姉さん――母さんには怖くて言えない――にも相談したけど、「放っておいて大丈夫」っていう答えだった。
 ただ「どうしても気になるなら、近くの別邸へ連れてきても」とも言ってたから、まるっきりなんでもない話、って言うのとも違うらしい。

「これなんか、美味しそうじゃないか?」
「ですね」
 先輩が指差したケーキは、白いクリーム(?)の上に、色とりどりのゼリーや果物が乗っていて、宝石みたいだ。

 頼んで席に着く。
 先輩はまた、心ここに在らずという感じだった。窓の外、どこか遠くを見てる。

「……先輩?」
「――え? あ、すまない、何か言ったか?」
 あたしが何も言ってないのにこう答えるほど、上の空だ。

「えっと、何もまだ……あの、でも、次はどこ……行くんですか?」
 ずっと気になっていたことをやっと訊く。
「次? あぁ、そうだな……本当はもう、明日帰らなきゃいけないんだが」
 ちょっとおかしな言い方だ。帰りたくないようにも聞こえる。

 あたしは少し考えた。
 休みは、まだある。最悪でも前日に帰れば、どうにかなるはずだ。
 もしかしたらもう少し、先輩と居られるかもしれない。そう思って訊いてみる。

「あの、先輩、そしたら……うちの別邸に、来ませんか?」
「別邸?」
 不思議そうな先輩に、あたしは説明した。

「ここからすぐの島が、買い上げてあって……別邸が、あるんです。
 他の人もいますけど、泊まるだけならタダですし……」
 先輩ともう少し旅行がしたくて、いろいろ付け加えてみる。

「だが、悪いだろう?」
「いえ、ぜんぜん!」
 思わず言葉が強くなった。

「その、別邸って言っても、たくさん建物があって……けっこう誰でも、泊まれるんです。
 家族で来て、長期で泊まるうちも、ありますし」
 要するにシュマーの持ち物なのだけど、さすがにそれは言えないから、ちょっと説明がちぐはぐだ。

「……? 会社の、保養施設か何かなのか?」
「あ、はい、そういうのです!」
 このくらいの勘違いなら、たぶんへいきだろう。
 考え込む先輩を、祈るような気持ちで見る。ここで帰るのは仕方ないけど……できればもうすこし、泊まっていたい。




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