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Chapter:4 ノネ湖にて
Episode:57
「すまない、二人とも助かったよ」
 姿が遠ざかるのを見ながら、先輩が言う。
「正直、もうこの村を出るしかないと思ってたんだ」
 そこまで聞いて初めて、いまの村長とのやりとりだけでなく、竜退治のことも言われていたのだと気づく。

「本当は正規の謝礼を、出すべきなんだろうが……」
「先輩、気にしないで下さい。それに私たちも……学院に知れたら、困ります」
 シエラ出身の先輩が笑った。うっかり外で勝手に依頼を受けて、大騒ぎになるというのは、他の人たちには分からないだろう。

「そう言ってもらえると助かるよ。
――とりあえず、部屋へ戻ったほうがいい。そろそろ新しい部屋も、用意出来てるだろうし」
 ルーフェイアを連れてホテルへ戻ると、案の定「移る用意が出来ている」と知らされた。

「僕も手伝おう」
 部屋からルーフェイアが持ち出そうとした荷物を、先輩が持つ。

「ルーフェイア、先に先輩と、新しい部屋へ行っててくれ。私はその、細かい荷物を……詰めてから、行くから」
 さすがに干しておいた下着や何かを、先輩に見られるのは嫌だった。

「おいで、ルーフェイア。案内してあげるよ」
「はい」
 素直にルーフェイアが、先輩についていく。

 これならしばらくは、戻ってこないはずだ。なにしろルーフェイアは独りを嫌がる甘えん坊だし、先輩はタシュアと違って、それを邪険に出来る性格ではない。
 いまのうちにと、急いでいろいろ鞄にしまう。
 だが思いのほか早く、ドアがノックされた。

「入ってもいいかな?」
「あ、はい」
 手に持っていたものを慌てて押し込んで、口を閉める。
 入ってきたのは、先輩ひとりだった。

「ルーフェイアは……?」
「あの子なら、着替えてるよ。戦闘服のままだったからね」
 着替えには同席できなくて、こちらへ来たらしい。

――構わなかった気もするが。
 体型もまだまだ子供だし、カーテンを全開で着替えてしまうあたり、そういう感情もまだ育っていない。
 まぁあのままでは、先々困るだろうが……。

「荷物は、それだけかい?」
「あ、はい」
 私の荷物に手を伸ばして――先輩が、動きを止める。

「先輩?」
「その、前から君に言おうとは思ってたんだが……」
 なんだか深刻そうだ。

「えぇと、また、竜でも?」
 私の言葉に、先輩が苦笑した。何か的外れなことを言ったらしい。

「そういう話じゃないんだ。
――卒業したら、ここへ来ないか?」
「は?」
 何を言われたのか分からなくて、しばらく考える。




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