ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
Chapter:4 ノネ湖にて
Episode:56
 どうしようかと思いつつ、ルーフェイアを見る。
――辛そうな、表情。
 その唇から、小さく言葉がつむがれる。

「あたしは……例外です」
 泣きそうになりながら言った言葉は、嘘がないだけに説得力があった。
 そのルーフェイアが、話し出す。

「あのクラスの竜だと、シエラでも安全を考えれば、上級が3名は必要です。ですからきちんと……どこかの組合に、依頼なさってください」
「いや、だが、そうは言っても……」
「――村長」

 言葉を切ったルーフェイアが、村長を真っ直ぐ見る。
 この子が滅多に見せない、強い瞳だった。

「もし医務官に……竜退治を依頼して死なせたりしたら、どこの組合にも、依頼を受けてもらえなくなります」
「なんと……!」
 さすがの村長が青ざめる。

「い、依頼を受けないとは、それはどうして……」
「医務官は戦闘員ではなくても、プロです。そのプロの意見を無視するところの依頼は、どこも受けません。命が惜しいですから。
 仮に受けたとしても、おそらく通常の数倍の値段です」

 理路整然とした話に、私までが圧倒される。ふだんのおとなしくて気弱なようすが、嘘のようだ。
 だが同時に、どこかで納得してもいた。

 以前任務に同行してもらったときにも、戦闘関係となるとこの子は、信じられない観察力と判断力を見せた。裏を返せばそれだけ……過酷な環境をくぐり抜けてきたのだろう。
 泣き虫で甘えん坊のこの子が持つ、そういう一面は、驚きを通り越して悲しかった。

「村長、この子の言うとおりです。ですからもう、こういうことは二度と……」
 ルーフェイアの頭を撫でてやりながら、言う。きっと内心では、この子はこういう自分を、嫌っているだろう。

「……分かりました。事情をよく知らず、危うくとんでもないことをするところだったようですね。
 お嬢ちゃん、教えてくれてありがとう」
 「お嬢ちゃん」と呼ばれたのが嫌だったのか、一瞬ルーフェイアが、不満そうな表情になる。いちおうその辺のプライドはあるらしい。

――見かけが見かけだから、誰も年相応には扱わないだろうが。
 ようすに気づいた村長が、慌てて言いつくろった。

「いやいやごめん、別にお嬢ちゃんを子ども扱い――あ」
 私もクーノ先輩も、これには思わず笑い出す。
 村長もバツが悪そうに頭を掻いた。

「まぁその、もう 先生に頼むなんてことはしないから。お嬢ちゃん、それで許してくれないかな?」
 言いつくろうのを諦めたのだろう。そんなふうに言う村長に、ルーフェイアも微妙な表情ながらうなずく。

「許してくれてありがとう、お嬢ちゃん。
 では私は次がありますので、これで失礼をば。部屋の用意が出来たら、どうぞ移ってください」
 そう言って、村長が出て行った。





Web拍手 ←Web拍手です

FT小説ランキング  毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
 順位だけ見たい方はこちら

NEVEL Ranking  月に1回:NEWVELランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票


◇イラストいろいろです。随時募集中です♪◇
シエラ学院制服  Blue Ocean  ルーフェイア・シリーズ

自サイト美術室はこちら
掲示板はこちら。お気軽にどうぞ♪


筆者サイト
↑筆者サイトへ
最新話へのリンク、改行なし版等があります


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。