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Chapter:4 ノネ湖にて
Episode:55
「もう席は用意してあるから、先に行って始めていてもらえないか? 私もすぐに、挨拶に行くから。
 それと酒場のマドさんに、追加の酒と料理を誰か頼んでおいてくれ。私のおごりだからいいものを頼む、とね」

 村長の言葉に、村人がわっと沸き立った。このぶんなら私たちが出ないことも、そんなに問題にはならないだろう。

「すみません……かえって、面倒になって」
「いえいえ、お気になさらず」
 辺りが静かになったところで謝ると、村長はそうにこやかに返してくれた。

「こちらとしても非公式な依頼になってしまうのを、うっかり失念していましたからね。盛大に公式の会食をせずに済んで、良かったくらいですよ」
 こういうふうに返せる人だからこそ、今の地位になれたのかもしれない。

「とはいえ、何もしないのでは収まりがつきません。ホテルのほうに言って、良い部屋を用意させたいのですが……そのくらいは、お許しいただけますかな?」
「え、あ、でも……」
 こういうのは、受けていいものなのだろうか?
 困って先輩のほうを見る。

「村長もまったく何もしないじゃ、あとで立場的に、いろいろ困るんだよ」
「なる……」
 そういう世界ではちょっとしたことで、いろいろと言われたりするのだろう。

「では、部屋を用意させますので。準備が出来たら、こちらに人を寄越すよう言っときますよ。
 では、次があるのでこれで」
「あ、その、待ってください!」
 帰ろうとした村長を呼び止める。

「なんでしょう?」
「あの、こういうことは……もう、なしにしてもらえませんか?」
 意味が伝わらなかったのだろう、村長が怪訝そうな顔になった。
 少しの間が合って、聞き返してくる。

「『こういうこと』とは、今回の竜退治ですか?」
「はい」
 話下手な自分に、どこまで出来るか。だがこれは、誰かが言わなければならないことだった。

「先輩は、たしかにシエラの卒業生ですが……医務官です。だから、戦闘訓練は受けてません」
「そうなのですか? でもシエラに在学しているあなた方は、あのとおりの強さでしょう。私たちに比べれば先生も、ずっとお強いと思いますが」
「いいえ」
 ダメかもしれないと思いつつ、はっきり言ってみる。

「先ほども言いましたが、先輩は医務官です。そして医務官は通常、自衛のための訓練しか受けません。これはシエラも同じです。
 ですから竜相手の戦闘は、ほぼ不可能です。もし退治に向かえば、間違いなく返り討ちでしょう」
 だが村長は、聞く耳を持たなかった。

「その話は何度も聞きましたよ。でもじっさい、そこのお嬢ちゃんでさえ竜を倒せるじゃありませんか」
「それは……」
 さすがにこれは、上手く説明できない。




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