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Chapter:1 学院にて
Episode:04
「ああ、すまないすまない。ちゃんと言わなかったからね。
 気にいったのがあったら、ぜひ持っていってくれないかな? なにしろこの通り、溜まって困ってしまってるんだ」
「え……?」
 あまりにも唐突で、言われたことが良く飲み込めない。

「あの……??」
 この人がまた、笑った。
「だからね、ここから好きなものを持って行きなさい。幾つでもいいよ」
「――えっ?」

 目が点になるとはこのことだ。
 ミルのお父さんが持っている服の数は、決して少なくない。しかも店先に飾ってあったものから考えて、かなり値も張るはずだ。
 それを、あっさりと「持っていきなさい」だなんて……。

「けど、その、高いもの……ですし……」
「遠慮して偉いなぁ。でも本当に、持っていっていいんだよ。処分に困ってるくらいだからね。
――うーん、これなんか似合うかな?」
「あ……」

 お父さんが選んでくれた服に、思わず視線が釘付けになった。
 さっきウィンドウのところで見ていたものに似てるけど、もっとセンスがいい。
「うんうん、思った通りだ。背が高いからこのモデルサイズで、そのまま大丈夫だね」
「モデルサイズ……?」

 不思議に思っていると、ミルのお父さんが説明してくれた。
 なんでも最初に試作品?を作る時は、モデルさんが着ることを考えて、普通より高い身長に合わせて作るらしい。
 そしてここにあるのは、そうやって作ったものの一部なのだそうだ。

「モデルの子に売ったりあげたりってことも、多いんだけどね。ただ私は取っとくのが好きなもんだから、この通りなんだ。
 あ、これも良さそうだねぇ」
 話をしながら、幾つか選び出してくれる。

「ほら、この辺なら好みじゃないかな? サイズも良さそうだしね」
「でも……」
 勝手に話が進んでしまったが、ミルのお父さんが手にしているのは、そのあたりの安物ではない。
 それどころか、普通だったら絶対に買えないようなもので……。
 けどお父さんは、選び出した服を私に持たせた。

「着てあげないと、服も可哀想だしね。
 だから、持っていきなさい」
 こう言われてしまっては、もう断れなかった。

「――すみません」
「いいんだよ。
 さぁ、包んでおいてあげるから、他の買い物でもしておいで」
 優しく外へと促される。

「本当にすみません、ありがとうございます」
 それしか言えない私に、ミルのお父さんは言った。
「いや……このくらいしか出来なくて、申し訳ないよ。
 君たちが大変なのは、分かっているのに」
 それから、少しだけ笑って言った。

「何かあったら、いつでも来て構わないよ。大歓迎だ。服は余って、困っているしね。
 さ、早くしないと日が暮れるよ」
「――はい」
 何度も頭を下げながら、私は店を後にした。




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