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Chapter:3 ルアノンにて
Episode:38
「そんなこと言ったって、ルーちゃんが来たのよ? 早く出てらっしゃいってば」
「え?」
 こんどはばたばたと音がして、イマドが出てきた。エプロン姿が妙に似合っている。

「シルファ先輩がこいつ、連れてきてくれたんですか?」
「いやその、連れてきたというか……」
 どちらかといえば、誘拐ついでに寄っただけだ。
 何かを察したのか、イマドは面白そうに笑ったが、追求はしてこなかった。

「先輩、あがってってくださいよ。いまちょうど、メシ作ってましたし。
 ルーフェイア、魚じゃねぇけど、ガマンしろよな?」
「あ、うん、平気」
 座らされた私たちに、手際よくお茶とお菓子とが出される。

「……ほんとに慣れてるんだな」
「休みのたんびに来て、毎日やってたら、イヤでも上手くなりますって」
 ちょっと気の毒になってくる。

「あの女の人は……やらないのか?」
「叔母さんですか? 任せるほうが怖いです」
 その答えに、なぜか納得してしまった。

「仕事なら、一流なんですけどねー」
「まぁ、それならいいんじゃないか?」
 自分でも釈然としないまま、いちおうフォローしてみる。

 ルーフェイアは不満そうだった。イマドが働かされているのが、気に入らないらしい。
 この子にしては珍しく、怒ったような調子で言う。

「イマド……へいきなの?」
「テキトーに手抜きしてっから、平気だって。終われば遊んでるしな」
「そうなんだ」
 あっさりと丸め込まれて、ルーフェイアがうなずいた。やはりこの辺のあしらい方は、彼は上手い。

「で、なんでここ来たんです? 渓谷でも見に?」
「ああ」
 ここへ来て大渓谷を見ないほうが、おかしいだろう。

「んじゃ、俺も行くかな」
 イマドの言葉に、ルーフェイアの表情が輝いた。
「ほんとに?」
 二人の様子が、見てて可愛らしい。ならばここに居る間、少しでも多くいっしょに居させてやろうと、私からも持ちかける。

「イマド、行けるなら、案内を頼みたいんだが……。叔母さんには、私から話をするから」
「いや、いいですよ、自分で言いますから。
 てかふだんから、『ここに居る時くらい遊んでろ』って怒られてるんで、叔父さんたち喜びますって」
 要するに、見かねてイマドが勝手にやっているだけらしい。

「あらあら、何のお話?」
 いったん診療所のほうへ行っていた女性――要するにイマドの叔母さん――が、戻ってきた。
「これから、どこか出かけるの?」
「今日じゃなくてさ、先輩たち、明日渓谷行くって。俺も行ってくる」
 これを聞いた叔母さんの顔が、ほころんだ。

「いいじゃない、是非そうしなさいよ。あなたったらいつも家の中で何かしてばかりで、ちっとも遊びに行かないんだもの」
「しょっちゅう来てんのに、いまさらこの町でどこ見るんだよ……」
 親子のような言い合い。けっこう上手く、イマドはやっているようだ。




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