ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
Chapter:3 ルアノンにて
Episode:36
「えっと、あの、そうじゃなくて……イマドの叔父さん、ここに居て。
 だからその……長い休みだと、ここに来てるんです」
「なるほど」

 身寄りが居るのにシエラの本校に在学というのは、少数派だが、居ないわけではない。それにイマドはたしか、両親は亡くなっているから、その辺が理由なのだろう。

「だとすると、いまここに居るのか?」
「あ、はい、たぶん……」

 ルーフェイアがずいぶんと嬉しそうだったのにも、合点がいく。彼がここに居るのなら、嬉しくないわけがない。
 それに引き換え……。
 タシュアのことを思い出して、また怒りが湧いたが、どうにか押さえ込んだ。私の個人的なことで、ルーフェイアを怖がらせるわけにはいかない。

「家が分かるなら、会っていくか?」
「え、でも……」
 遠慮するこの子の頭を撫でてから、歩き出す。

「荷物だけホテルに預けて、行くだけ行ってみよう」
 大渓谷観光の拠点だから賑わってはいるが、そう大きい町ではない。それに今日は移動だけのつもりだったから、このあと予定は入れていなかった。

 予約したホテルを見つけて、フロントで確認する。また部屋がなかったらどうしようと思ったが、こんどはすんなり通してもらえた。
「アヴァンでルーフェイアが用意してくれた部屋とは、比べ物にならないんだが……」
 なんとなく言いわけめいたことを口にしながら、ドアを開ける。

「あ……♪」
「ん? どうした?」
 やけに嬉しそうな声をあげたルーフェイアに、尋ねる。こんなふつうの部屋が、気に入ったのだろうか?

 だがこの子の答えは、もっと違うことだった。
「ベッド、ひとつなんですね♪」
「――!!」
 しまった、と思う。タシュアと来るつもりだったから、何もかもがそうなっているのだ。

「いや、えっと、これはその、だから……」
 言いつくろえない。
「先輩?」
 ちょっと首をかしげて、不思議そうに訊くルーフェイアに、やっと答える。

「だからその、イヤなら部屋を、ツインに取り直すからっ!」
「え……」
 ルーフェイアが、がっかりした表情になった。

「取り直すんですか……」
 寂しそうに言う姿を見て、アヴァンでのことを思い出す。そういえばこの子は、勝手に私のベッドに入りこんで、しがみついて寝ていた。

「えっと……もしかしてこのほうが、いいのか?」
「はい!」

 とたんにまた、嬉しそうな顔になる。要するに、ひとつのベッドで私といっしょに寝られると思って、喜んでいただけらしい。
 それによく考えてみれば、どこをどうやっても子供のこの子に、「そういうこと」が分かるわけもなかった。

 拍子抜けして、ほっと息を吐きながら言う。
「じゃぁ、今夜はいっしょに寝よう」
「……はい♪」

 こんなことを大喜びするのは、歳から言ってどうかとも思うが、突っ込む気にはならなかった。むしろこんなことで喜ぶのなら、いくらでもそうしてやろうと思う。
 今こそニコニコしているが、ふだんのルーフェイアは、いつもどこか悲しげにしているのだ。




Web拍手 ←Web拍手です

FT小説ランキング  毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
 順位だけ見たい方はこちら

NEVEL Ranking  月に1回:NEWVELランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票


◇イラストいろいろです。随時募集中です♪◇
シエラ学院制服  Blue Ocean  ルーフェイア・シリーズ

自サイト美術室はこちら
掲示板はこちら。お気軽にどうぞ♪


筆者サイト
↑筆者サイトへ
最新話へのリンク、改行なし版等があります


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。