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Chapter:3 ルアノンにて
Episode:35
「えぇと……ホテルはここから、少し離れてるんだな」
 この駅はどういうわけか、町外れにある。ガイドブックによれば、街中への敷設にかなり反対があったうえ、お金の問題もあってこうなったらしい。
 しかも大渓谷は、ちょうど町を挟んで反対側だ。だから繁華街に程近い町の中心部に、宿を取るのがふつうだった。

 町の中心部へは、バスが出ている。だがどうやら、出発した直後のようだった。
 大都市の列車でも、遅れるのはよくある話だ。ましてや地方都市のバスでは、どれだけ待たされるか分からない。

「仕方ない、歩くか……」
 幸いもう涼しくなってきたし、元から歩けない距離ではないから、大丈夫だろう。それに途中で、いい店でも見つかるかもしれない。

「すまない、ルーフェイア。荷物は持つから、歩こう」
「あ、えっと、だいじょうぶです」
 答えてこの子が、自分の荷物を肩にかけた。
 重そうな様子はない。見掛けは華奢だが、鍛えているだけのことはあった。

 駅からは、真っ直ぐ大通りが続いている。ホテルはこの通り沿いだから、迷う事もないだろう。
 観光客を当て込んでか、みやげ物や軽食の屋台も、道端に並んでいる。そこから適当なものを買ってやり、並んで歩いた。
 そのルーフェイアの足が、ふと止まる。

「どうした?」
「あ、いえ、なんでも……」
 言いながらも辺りを見回して、何かを探しているふうだ。

「何か、欲しいのか?」
「……」
 言いにくそうに黙ってしまう。

「……ルーフェイア?」
 心配になってそっと呼びかけると、この子が小さな声で言った。
「ここで、イマドと……初めて、会ったんです」

 なるほど、と思う。ここへ来ると分かってから楽しそうだったのも、このせいだったのだろう。
「そうか。それなら少し、見ていこう」

 いっしょに立ち止まって、辺りを見回す。
 首都のアヴァンシティに似た、重厚な石造りの町並みは、窓辺がどれも花にあふれていた。
「きれいな町だな」
「はい!」
 まるで自分のことのように、ルーフェイアが喜ぶ。

 これを見るかぎり、この子が誰に好意を持っているかは一目瞭然だが――当の本人が自分で分かっていないのが、困りものだ。
 それ以外にも、他人をまったく疑おうとしなかったり、危なっかしいところがルーフェイアは多い。
 まぁそれだけに、つい庇護したくなるのだが……。

「イマドとここで会ったということは、彼はここの出身なのか?」
 訊いてみると、ルーフェイアが首を振った。

「なら、旅行か? 珍しいな」
 私たちのような上級生ならともかく、ルーフェイアたちの年で縁もゆかりもない土地に行くのは、本校の学院生では極めて珍しい。




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