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Chapter:2 アヴァンにて
Episode:30
◇Rufeir
 魚を食べたあと、また少し泳いで、先輩とあたしはホテルへと戻ってきた。
 けど、ホテルのロビーがなんだか騒がしい。

「どうしたんでしょう?」
「私に訊かれても……」
 たしかにそうだ。ホテルのことを、先輩が知るわけがない。
 誰か知ってそうな人に訊こうと、フロントのほうに行こうとして、あたしは理由を見つけた。

「先輩、あの人、さっきの……」
「そうだな」
 どこかの誰かがホテルに文句を言いにきたみたいで、支配人が中へ入るのを押し留めながら、なだめてる。
 そして押し入ろうとしてる一行の中に、さっき浜辺で叩きのめした、男の人たちがいた。

 ただ、中心人物ってわけじゃないらしい。もっと恰幅のいいおじさんが、この一行をまとめてるみたいだ。
 先輩と目配せして、そっと近づいてみる。

「ともかくうちの息子に、狼藉を働いたものが、このホテルにいるのは間違いないんでね。話し合わせてもらいたい」
「恐れ入りますが、ご宿泊でない方のご要望には、お応え致しかねます」
 要するに、叩きのめした相手――つまりあたしたち――を引っ張り出そうってことらしい。あたしたちがホテルの日よけを使っていたから、そこからきっと、ここを突き止めたんだろう。

「なるほど、客じゃないからと言うわけか。ならば、部屋を取るだけだが?」
「ご予約、ありがとうございます。ですが大変申し訳ありませんが、本日は満室でございます」
 支配人さん、平然と言ってのける。シュマーの関係者なだけあって、肝は据わってるみたいだ。

「私が誰だか、分かっているだろうな?」
「ご要望に従えず、大変申し訳ありません、お客様」
 相手の言い方からすると、それなりの人らしい。でも支配人さんはそんなこと、知らん顔だ。
 まぁうちの系列を預かるくらいだから、万が一暴力沙汰になっても支配人さん、ちょっとやそっとじゃケガもしないだろう。

 もしかしたら違う方向から、違う圧力がかかるかもしれないけど……それもイザとなればどうにでもできる。
――いちおう、姉さんに連絡したほうが、いいかな?
 姉さんはシュマーの事務方を預かってる関係で、財界なんかに顔が利く。そこから手を回しておいてもらえば、立ち退きなんてことにもならないだろう。

「とりあえず、部屋へ行くか?」
「あ、はい」
 先輩の言うとおり、ここで見てても仕方がない。姉さんに連絡するにしても、部屋へ戻ったほうが良かった。
 騒ぎを横目に、ロビーを横切る。

「あっ! 親父、あいつだ!」
「ん? 見つかったか?」
 先輩が面倒そうに言う。もとから隠れる気もなかったけど、タイミングよく叩きのめした男の人、こっちを見てたらしい。

「てめぇ、さっきはよくも!」
 騒ぐ男の人を、シルファ先輩、信じられないほど冷ややかな目で見た。絶対に何か怒ってる。
 もし手でも出してきたら、さっき以上に手加減なしだろう。

「親父、こいつらが俺を――」
「待て。聞いた話と違うぞ?」
 どうなるかと思ったけど、意外にもお父さんのほうが、騒ぐ息子さんを止めた。




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