ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
Chapter:2 アヴァンにて
Episode:28
「えっと、その……怪我させたら、申し訳ないですし……」
「先に手を出したのは相手なんだぞ。正当防衛だ」
「お前ら――!」

 私たちが話しているうちに焦りだしたのか、男が何か喚きだす。半分以上はスラングらしく意味が分からないが、ろくなことではないだろう。
 いずれにせよ、長引かせないほうが良さそうだった。

「――ルーフェイア、ともかくこっちへ来るんだ」
「あ、はい」

 少女が男の腕に鉄棒の要領でぶら下がり、大きく前へ両足を跳ね上げ、振り下ろす。
 サンダルのかかと部分が、勢いよく相手の向うずねに叩き付けられ、男がうめいて腕を緩めた。

 隙を逃さずルーフェイアは束縛から抜け出し、更に相手の股間へ、容赦なしの肘打ちを決める。
「!!!」
 見事に相手が砂の上に突っ伏し、さっき以上の歓声が周囲からあがった。

――何が面白いんだ?

 こちらが絡まれて一応困っているのに、それで拍手喝采という神経が分からない。
「えっと、すみません……大丈夫、ですか?」
 ルーフェイアのほうは何を思ったか、倒した相手に謝っていた。

「……謝らなくていい」
 喜んでいる野次馬も野次馬だが、この子もこの子だ。絡んできた相手に謝るなど、聞いたこともない。

「す、すみません!」
「あ、いや……いいんだ」
 今頃慌てているこの子が、うっかり泣き出さないうちに、少し離れた場所へ連れて行く。

「怪我はないな?」
 あの様子であるわけもないのだが、念のために訊ねると、ルーフェイアの表情が和らいだ。
「はい、大丈夫です」
「そうか。
――魚だったな。行こう」

 とんだ邪魔が入ったが、軽食を調達する途中だったのだ。
 適当な屋台に目星をつけて、歩み寄る。

「おや、さっきのお嬢ちゃんがたじゃないか」
「――?」
 こちらが何か言うより早く、屋台の店主が声をかけてきた。

「いやぁ、さっきのはすごかったねぇ」
 こちらが絡まれていたというのに、ずいぶんと嬉しそうな顔だ。
「2匹でいいのかな? あ、お金は要らないよ」
「え?」
 唐突に言われて困惑する。

「いいもん見せてくれたお礼さ」
「そう、なんですか……」
 店主が言うには、彼らはこの辺では悪名高い連中らしい。

「ホント、見てるこっちまで気分がスカっとしたよ。ありがとな」
 別に、そういうつもりはなかったのだが……。
「お嬢ちゃんも、ちっちゃいのにすごいねぇ。どこもぶつけなかったかい?」
「え? あ、はい……」
 ルーフェイアの方も、どこか不服そうだ。「小さい」と言われたのが、気に入らなかったのかもしれない。

「ほら、持ってきな。熱いから気をつけるんだよ」
「ありがとうございます」
 結局2人で1串づつもらって、ほおばった。

「――これは美味しいな」
「はい♪」
 ただの炙り焼きなはずだが、名物なだけある。脂がのっていているうえ、潮の香りと味が最高のスパイスになっていた。
 ルーフェイアが珍しく、笑顔で食べている。




Web拍手 ←Web拍手です

FT小説ランキング  毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
 順位だけ見たい方はこちら

NEVEL Ranking  月に1回:NEWVELランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票


◇イラストいろいろです。随時募集中です♪◇
シエラ学院制服  Blue Ocean  ルーフェイア・シリーズ

自サイト美術室はこちら
掲示板はこちら。お気軽にどうぞ♪


筆者サイト
↑筆者サイトへ
最新話へのリンク、改行なし版等があります


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。