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Chapter:2 アヴァンにて
Episode:21
 遅めの時間を指定して、その間に2人で順番にシャワーを浴び、ルーフェイアの髪を乾かして梳いてやる。
 柔らかく流れる金の髪。

――結んでリボンでも付けたら、可愛いだろうに。

 だがこの子はそういうことを気にしないから、いつも長く流したままだ。
 このあと出かけたら、どこか途中の店で、髪飾りを買ってやろうと決める。だいいち海へ出る――ビーチで有名なアヴァンまで来て泳がないのもつまらない――のに、結わなかったら大変だ。
 そこまで考えて気が付いた。

「その、ルーフェイア、水着は……持って来て……」
 言いかけながら、言葉が途中で尻つぼみになる。
 やっと幾らか泳げるようになったばかりの、この子のことだ。持って来ているわけがない。
 そもそも私は、海で泳ぐなど一言も言わずに、強引に連れ出してきたわけで……。

「泳ぐん……ですか?」
 案の定、きょとんとした表情でルーフェイアが訊いてきた。
「あ、いやあの、イヤなら別に、構わないんだ」
「え……」
 今度は思ったのとは違う反応が返ってくる。

「……泳ぎたかったか?」
「あの、えっと……ごめんなさい……」
 しかもなぜか、謝り始めてしまった。
 慌ててなだめる。この子のいつものパターンからすると、ここで放っておくと泣き出すのだ。

――タシュアはわざと追い詰めて、泣かせるが。
 タシュアの事を思い出した瞬間また腹が立ったが、押さえ込んだ。今はルーフェイアの事が先だ。

「だからその、泳ぎたくなければ、それでいいんだ。他にも見るところは、幾らでもあるわけだから……」
 だがなだめても、ルーフェイアは謝るのをやめなかった。どうも当人自身が、混乱しているようだ。

 私も口で言うのが面倒になってくる。もともと口下手なのだ。気の利いたことなど、言えるわけもない。
――あぁ、そうか。
 言葉がダメなら別の手段を使えばいいのだと、やっと私は気付いた。

「ルーフェイア」
「――?」
 名前を呼ばれて、この子が一瞬止まった隙に、抱き寄せる。
 最初は驚いた様子だったが、元が甘えたがりのルーフェイアだ。すぐにぴたりと身体を寄せた。

「謝らなくていい。分かるな?」
「……はい」
 うなずいて大人しくなったこの子に、今度は順を追って話していく。

「どうする? 海へ行くか?」
「はい」
 昨日もそうだったが、はっきりとした返事が返って来た。本当に海自体は好きなようだ。
 ともかく、これさえ分かれば後は早い。

「ならルーフェイア、午前中は観光でもして、午後は暑いから海でも行かないか?
 水着は途中で買えばいいだろうし」
「――はい♪」
 ルーフェイアが嬉しそうな笑顔になる。

――こういう表情も、するんだな。

 もともと綺麗な子だが、笑顔を見せると格別だ。
 逆に言えばそれだけ、笑顔を見せることが少ない子だとも言える。だったら尚更、この旅行で喜ばせてやりたかった。

 今日も後で泳ぎを教えて、喜ばせてやろう。
 そんなことを考えているところへちょうど、朝食の用意が出来たと知らせが来て、2人で並びの食堂へ向かった。




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