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Chapter:2 アヴァンにて
Episode:19
「ルーフェイア、その……良かったら、服を少し買わないか?」
「え、でも……」
 視線を落として、ルーフェイアが困ったような顔をする。

 だがこんな格好でこの子がいるのは、元はと言えば私の責任だ。幸い自分の服代や、今日の宿泊代が浮いたおかげでお金もあるし、何かしてやりたかった。

「それだけだと、困るだろう? お金は私が出す」
「あの、でも……自分で買うつもり、だったので……」
 はっとする。
 この子は最初から、持ち物が足りないのは承知していたのだ。それでも私の様子から、最低限のものだけ持って飛び出したのだろう。

「――本当に、すまなかった。無理に連れ出して」
 普通に考えれば、素直についてくること自体あり得ない。
 それを黙ってついてきてくれただけでも、十分だった。この子が来てくれたおかげで、私もずいぶん気がまぎれている。

 いなかったらたぶん……旅行に来てはみたものの、かえって嫌な思いをしていただろう。
 タシュアを思い出してまた腹がたったが、それは無視した。私が怒っていては、ルーフェイアが可哀想だ。

「だから、お詫……!」
 言いかけて慌てる。いつの間にかルーフェイアが下を向いて、泣き出しそうになっていた。
「すみません……あたし……」
 一緒に学院を出てから泣くことがなかったので忘れていたが、そういえばこの子の泣き虫は相当だ。

「いや、ルーフェイアは悪くないだろう?」
「でも、でも……ついてきて……考えないで……」
 どうも、私が気にして謝ったのが悪かったらしい。ともかく泣き止ませようと、私は必死に慰めた。

「――ルーフェイア、行くのは、嫌か?」
「い、いえ! あの、行きたいです」
 この子にしては珍しく、はっきりと意思を口にする。
 私は微笑んだ。

「それなら、問題ないだろう?」
「あ、はい……」
 自分でも何を言っているかよく分からないが、幸いルーフェイアは納得した。

「ほら、涙を拭いて。行こう」
「――はい」
 また何かの拍子に泣き出して迷子にならないよう、この子の手を引いて歩き出す。
 ふと時計を見ると、意外なくらい時間が過ぎていた。

――これじゃ、服を買うのは無理だな。
 もっとも今晩出かける予定はないし、明日も日のあるうちは暑いだろう。だとすれば、今でなくても間に合う。

「ルーフェイア、その、自分で言っておいてなんだが……もう遅いから、服は明日でいいか?」
「え? あ、はい」
 本人は買ってもらうつもりはなさそうで、半分上の空の返事だ。
 もちろん、それを責めるつもりはない。

「じゃぁ明日だ。
 さ、戻って夕食にしよう」
「はい!」
 強引に締めくくった話に、だがルーフェイアは嬉しそうに返事をした。



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