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Chapter:1 学院にて
Episode:10
 渡り廊下を過ぎ、学院の廊下を急ぎ足で抜ける。
「し、シルファ、血相変えてどこへ行くんだ……?」
「旅行です!」
 途中で話しかけてきた教官にそうとだけ答える。

「りょ、旅行って、どこへだ?」
「書類見て下さい!」

 ちゃんと事前に提出してあるのだ。ごちゃごちゃ言われる筋合いはない。だいいちこのために、任務の当番も何もかも、すべて先に済ませたのだ。
 そんなことさえ教官のくせに覚えていないのかと、また腹が立つ。これでよく、生徒の面倒などみられたものだ。

「――あの、先輩?」
 途中でまた、見知った顔に出くわす。
「どう、なさったんですか……?」
 柔らかな金髪に、澄んだ碧い瞳。ヒヨコのように懐いている後輩が、不思議そうな表情で私を見ていた。

「えっと、あの……?」
 言葉が出てこないらしく、困ったようなしぐさを見せる。
 そのとき、不意に思いついた。

「ルーフェイア、予定は空いているな!」
「え、あ、は、はい……」
 目をしばたたいて、少女が答える。

「だったら旅行へ行くぞ!」
 どうせ1人分余るのだ。なら誰か代わりに連れて行っても、構わないはずだ。
「え、え……?!」
 意味がよく分からなかったのか、ルーフェイアがきょとんとした表情になる。

「旅行へ行くんだ!」
「は、はいっ!!」
 言い切ると、慌ててこの子が返事をした。

「ほら、早くっ!」
 連絡船が出てしまったら、その先で乗り遅れる。
「あ、あの、そしたらあの、荷物……」
「ん? ――あ、そうか」

 確かに切符やなにかは全部私が持っているが、この子も着替えくらいは要るだろう。
 いくらなんでも、手ぶらというのはムリだ。

「じゃぁ正門のところにいるから、早く荷物を持ってくるといい」
「あのっ、すぐ、戻りますから!」
 身を翻すようにして、金髪の後輩が寮のほうへと駆け出す。その姿を見送りながら、私はまっすぐ玄関まで行った。

 おだやかな朝の陽射しに、また腹が立ってくる。
 本当ならいまごろ、2人で出ていたはずなのだ。

「ばかっ!」
 姿のない彼に向かって、言い放つ。
 タシュアなんか、タシュアなんか――!






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