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元勇者の嫁ですが、なにか? 作者:(=`ω´=)
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向学心ですが、なにか?

 千種の話では、準備やら手続きやらにいくらか日数がいるという話だった。
 完爾としても、別段急いでいるわけでもないので、どうでもいいといえばどうでもいい。

「……難しいです」
「正直、おれ自身もよく理解できているってわけでもないんだけどな」
 会社とか、現代的な知識についてユエミュレム姫に説明するときは、いつも苦労している。
 これはおおむね完爾自身の知識に不備な点が多いためなのだが、ユエミュレム姫は完爾がスルーしていた細かい点までつっこんで聞き返してくる。
 そして、完爾が返答に窮するのが常だった。
 つまり、ユエミュレム姫の知的好奇心を完爾の知識では、まるでカバーできていない現状だった。
「ニホンゴ、はやくおぼえたいです」
「……そうだな。
 自分でいろいろ調べられるようになると、かなり効率的になるんだが……」
 完爾自身も普段からお世話になっているネット。あれを検索できるようになれば……と、ここまで思って、完爾はテーブルの上に置いていたタブレット端末を引き寄せる。
「……ユエ。
 検索、やってみようか? 今、ひらがなはなんとか読めるっていってたよな?
 だったら、読めない漢字とかが出てきたらそれをコピペして検索すれば、少なくとも読み方は判明するけど……」
「カンジが、読めるんですか?」
「読み方が、わかるようになるだけだけどな」
 文法や文例などは、この短時間ではまだまだユエミュレム姫の頭に入っていなかったので、すぐに難渋な文章を読解できるようになるとまでは期待していなかったが……それでも、今後の学習に寄与するところは大きいだろう。

 完爾がコピペと検索を実演して見せてから、ユエミュレム姫自身でもやらせてみせる。
 はじめのうち、おずおずといった感じで試していたユエミュレム姫は、次第に自分で適当なひらがなを入力して検索する遊びに夢中になっていた。
「……カンジ!」
 次から次へと、検索結果に表示させるリンクを踏んでいく。
「この板の中に……一体どれくらいの書物が入っているのでしょうか?」
「さあ、なあ。
 本で換算すれば、何十億冊だかとかそれ以上に匹敵する情報量ななずだが……」
「……これを全部読めないのが、ひどく口惜しいです」
 このときのユエミュレム姫は、本当にくやしそうな顔をしていた。
「まあ、ボチボチな」
 完爾としては、そういってなだめるしかない。
 言語の習得など、軽く見積もっても数ヶ月以上はかかってようやく日常会話がこなせるレベルになるのが一般的なのだ。焦っても、学習効率はあまり変わらないだろう。
 完爾が思っていた以上に、ユエミュレム姫の好奇心は強かったらしい。

「なんだ。
 義妹ちゃん、言葉を早くおぼえたいのか?」
 そのやり取りを見ていた千種が、口を挟んできた。
「かなは、だいたい読めるようになってきているんだよな?
 それでは……マンガでも、読ませてみるかね」
 この時の完爾とユエミュレム姫は当然むこうの言葉で会話を行っていたわけだが、挙動と雰囲気でなんとなく内容を察したらしかった。
「マンガなら、漢字にもルビが振ってあるし、シュチュエーションごとによく使うフレーズなんかも自然に学べるから、ちょうどいいだろう。
 ……電子書籍版は、まだ出ていないのか……。
 まあいいや。
 ほい。ポチった。
 明日には家に来るでよ」
 ちなみにこの家にマンガは置いていなかった。
 完爾がむこうにいく前までは、千種も普通に、いや、普通以上に膨大な単行本を購入して読んでいたと記憶しているのだが、今では一掃されている。
「……整理したんだよ。
 今ではほとんど読む時間も取れないし……」
 とは、千種の弁である。
「あと何年かすれば、放っておいても翔太が普通に読みだすだろうしな」

 そんなことをしている間にいい時間になったので、夕食を作りはじめる。
 冷蔵庫に残っていた作り置きの総菜を片っ端から出して暖めるのと同時に、塩鯖を人数分グリルで焼いた。なんだかんだで、品数だけは豊富になった。
「作り置きもいいけど、量の調節が結構難しいなあ」
 千種は、平日の夜は外食ですませることも多い。
 完爾自身はそれなりに食べるが、ユエミュレム姫と翔太の分は、やはり女性と子どもなりの消費量でしかなかった。
「……一品あたりの量を少な目に作って、キープする品数を多くしておいた方が無難かな?」
 冷凍庫のスペースも無限にはないのである。
「お料理ならば、わたくしがこれから作れるようになっていきますけど……」
 ユエミュレム姫が、完爾の独り言に口を挟んでくる。
「それは有り難いんだけど……ユエはユエで、まだまだ育児が大変だからなあ」
 この分でいくと、ユエミュレム姫のレパートリーはそれなりのペースで増えていくことが予測される。
 しかし、なにかとストレスが多い環境に身を置いていることもあり、あまりユエミュレム姫にばかり負担をかけたくはない……というのも、完爾の本音なのであった。
「大丈夫ですよ。
 こちらの家事は、むこうと比べると断然楽なんですから」
「……本当に、そうだといいんだけどな」
 完爾としては、口をへの字型に曲げてうなずくより他ない。
「とりあえず、来週分からは自分の弁当も詰めていくか」
 仕事にいくときの昼食は、現場近くの飲食店を利用するかコンビニ弁当を買ってくるかの二択であった。どうせ千種と翔太の分の弁当も作るわけだし、自分の分も一緒に作っても手間はたいして変わらない。
 コスト的にも、大幅に削減できる。
 いくら予想外に定期収入源ができたとはいっても、倹約をして悪いということもないだろう。

 夕食後も、ユエミュレム姫はタブレット端末を離さなかった。
 どうやら検索を連発していく過程で、動画検索の存在に気づいたらしく、今はそれに夢中になっている。
 千種などはその姿をみて、
「ネットもいいけど、あんまりそればかりやらせているとそのうちヒキニートになるんじゃないのか?」
 などと揶揄してきた。
「翻訳して本人に伝えるぞ」
「ごめんなさい。ゆるしてください」
「……今、ヒキニート、といいましたか?
 それはどういう意味ですか?」
「そういうときこそ、検索検索」
「……ひきこもりのニート……。
 ニートというのが……漢字が多すぎて読めません……」
「まあ、おいおいな」
「カンジ。
 初心者向けの、漢字学習用の読本などはありませんでしょうか?」
「……そうだな。
 今度探して買ってこよう」
 小学生向けの、国語ドリルとかで間に合うだろうか? と、完爾は思った。
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