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元勇者の嫁ですが、なにか? 作者:(=`ω´=)
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救出作戦……の、つもりですが、なにか?

 二人は相変わらず、メールにも電話にも出なかった。
 今日、ユエミュレム姫が出勤しているはずだった城南大学に問い合わせてみたら、案の定、ユエミュレム姫は何者かに誘拐されたという。
 電話のむこうで牧村准教授は完爾に対して謝罪の言葉を述べた。口先ではなく、心の底から済まなく思っている様子だったが、ごく普通の日本人が武装している集団に逆らえるはずもなく、むしろ完爾はその他の人たちが無事だったことに安堵し、牧村准教授にもそう伝えた。
「いや、みなさんが無事でよかった」
 間違いなく、これは完爾の本心からの言葉になる。
 こんなことで、関係の薄い人たちに被害が出るようなら、あまりにも馬鹿馬鹿しすぎる。
 牧村准教授のはなしでは、ユエミュレム姫を連れ出した集団は研究室に五分と滞在せず、ユエミュレム姫が同行することに同意すると、すぐに研究室を去っていった、という。
 その場で警察へも連絡したのだが、いまだ、警官は研究室に現れていないそうだ。
「ユエはあれでしっかりしていますから、あとはこちらで処理をします。
 皆さんは、そのままいつもの通り、研究活動を続行してください」
『……そういわれましても……』
 牧村准教授の声は、ユエミュレム姫に対する心配と今後への不安で震えていた。
『警察も、まだ来てないくらいですし……本当に、大丈夫なんでしょうか?』
「警察は、今、忙しいんでしょう」
 完爾は、平静な声を出して牧村准教授を安心させようとした。
「なに、ユエならおれがちょっといって助けてきますから、お気になさらず」

 通話を切ったあと、完爾は翔太や暁をしばらく事務員たちにみてもらうことにして、事務所のノートパソコンを立ちあげてユエミュレム姫や千種の現在地を探る。スマホの電源が入っていさえすれば、盗難対策用のアプリがGPSを利用して現在地を発信しているはずだった。
 仮に敵側がそのことまで想定し、スマホとユエミュレム姫や千種の身柄を離しておいたとしても、スマホがある場所までいけばなんらかの手がかりが得られるはずだ。
 二人にはかなり厳重な護身用の術式をかけてあったから、滅多なことでは危害が加えられることはないはずであり、そのことについて、完爾はあまり心配していなかった。
「……おれは今から奥さんと姉貴を取り返しにいくけど……」
 液晶画面で二人のスマホの現在地を確認しつつ、完爾は保育園で行ったのと同様の「人払い」の結界を何重にもこの事務所の周囲にかける。
 ここはしばらく、安全な場所にしておかなければならなかった。
「……君たちは、うちの子たちの相手をしながらこの場に待機していて。
 ここは、おそらく今の首都圏の中では一番安全な場所だから」

 ユエミュレム姫のスマホは川崎のはずれに、千種のスマホは大宮付近の某所にあった。
 どちらを先に救出にむかったとしても、文句は出るんだろうな……と思いつつ、完爾は先にユエミュレム姫の元へいくことにする。
 おそらく、ユエミュレム姫からは「なぜ姉君を先に救いにいかないのですか」といわれるのだろうけど、千種を先にしても同じことをいわれるのだ。そこはそういうものと覚悟していくしかない。
「……社長、いらしていたんですか?」
 完爾がこの事務所からの距離と方角を確認していると、買い出しにいっていた白山さんが帰ってきた。
「すぐ出るけどね」
 白山さんに答えながら、完爾は転移魔法を発動する。
「急ぐから、あとは任せます」
 次の瞬間、完爾の体は事務所から消えていた。

 なんだか薄暗い場所に出てから、最低限、現在地からの相対距離と方角さえ判明していれば転移できる……とかいう靱野の世界の転移魔法の方法を聞いておいてよかった、と、完爾は思った。
 照明がついていないのでかなり暗かったが、完爾の目はすぐにその暗さに馴染んだ。
 大きな倉庫か工場のような場所だったが、人の気配がなくガランとしている。
 さて、転移先を間違ったのか、それとも、おびき出されたのか……とか思っていると、なにやらという叫び声が聞こえた。
「go!」という声だけが、完爾の耳にもかろうじて聞き取ることができた。
 そして直後に、銃声。というか、轟音が響いた。
 耳を聾する、なんてもの生やさしいものではない音の塊が、完爾の体に直撃する。
 いや、その音が届く前に、完爾の上半身は瞬時に消し飛んでいた。
 弾丸の速度が音速を超えていたのだ。
 やはり、待ち伏せか、と思いながら、完爾は自分の周囲に対物理結界を瞬時に張り巡らせる。
 半ば挽き肉と化した完爾の体を結界が包み、その中で完爾の体は素早く再生を開始する。
 完爾を始末したと思った敵が、無防備に体をさらけ出して近づいてきた。
 六つの砲身を束にしたようなガトリング砲を担いでいる者もいた。
 完爾は知る由もなかったが、これは戦闘機用の機銃であり、毎分六千発以上もの弾丸を発射する。
 改造人間の膂力がなければ、そのまま直に持って操作するという真似も出来なかっただろう。
 完全に、攻撃対象として完爾を想定して用意された装備だった。
 なんとか頭部を再生した完爾は、近寄ってくる敵を視認して、即座に攻撃用の魔法を無詠唱で発動した。
 完爾の思考が力を持ち、目についた敵の体を内部から攻撃する。
 今回の場合、敵がこちらに対して明確な殺意を持っているので手加減をする必要は感じなかった。
 ただ、この場に何名の敵がいるのかまだ定かではないので、完爾は音のでない方法を採用する。
 完爾の視野に入った敵たちは、瞬時に体の内部を凍らせて、動かなくなった。
 静寂が支配する中、完爾は完全に体の再生を終えて立ちあがる。
 上半身が裸、という、なんともしまらない格好になってしまったが、これは仕方がなかった。

「……おーい!」
 対物理結界を強化しながら、完爾は声をかけた。
「誰かいないのかー!」
 声をかけながら、完爾は彫像のように凍りついている敵の間をすり抜け、あたりを歩いていく。
 この場にユエミュレム姫がいないとなると、手がかりがいったん途切れることになるのだが……。
 完爾はズボンのポケットに入れていたスマホを取り出し、ユエミュレム姫のスマホを呼び出してみる。
 完爾が立っていた場所から三メートルほど離れた場所で、LEDが点滅して、ユエミュレム姫のスマホを無事に確保することができた。
 これがここにあるとなると、この場所はあきらかに完爾をおびき出すための場所である可能性が、より確実になったわけだが。

 どうやらなにかの工場であったらしいその建物の内部をくまなく探したあと、完爾は建物の外にも出てみたが、敵を何名か追加で発見しただけでユエミュレム姫の姿はどこにも見えなかった。
 敵たちは例外なく、完爾の姿に気づくと同時に銃口をむけてきたので、その場で瞬時に凍らせる。
 途中で、まだ変身していなかった敵の上着を脱がせて奪い、それを羽織った。
 上半身をミンチにされたのだから、この程度の略奪をしても別に良心は痛まなかった。

「……次。
 ねーちゃんのところにいくか……」
 完爾はひとりで呟いて警視庁の非常時用の番号を呼び出し、現在地とここであった出来事を簡単に説明したあと、転移魔法で千種のスマホがある場所まで移動した。
 今度は転移する前に対物理結界をあらかじめ張り巡らせておく。

 転移が終わった瞬間から、案の定、手荒な歓迎を受けた。
 完爾は魔法で結界を地面に固定し、機銃弾の雨で吹き飛ばされないようにする。
 天井の高さから察するにも、今回も倉庫のような用途の建物らしかった。
「……あんまり何度もこんな真似をされてもな……」
 苛立ちを含んだ声でそういい、完爾は銃弾がくる方向にむけて、雷の魔法を放つ。
 もちろん手加減はしているわけだが、機銃の掃射音に匹敵する轟音が轟いて、視界が一瞬、白色に塗りつぶされた。
 完爾が放った雷の魔法は金属である敵のバルカン砲にむかい、敵もろとも焼き尽くしていた。
 改造人間たちの体も、ほとんど炭化している。
「過剰防衛、ってことはないよな?
 あんたらの殺意は明確だし、方法にも、弁護の余地がないし……」
 完爾は、物言わぬ物体となった敵を見下ろして、呟く。
「……おそらく今回の場合、超法規的な処理をされるんだと思うけど……」
 一応完爾は、今回の騒動を沈静化するように、警視庁の伏見警視から依頼を受けている。
 ま、そういう細かいことは、あとで考えればいいか……と思い直し、完爾は姉の姿を探しはじめる。
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