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元勇者の嫁ですが、なにか? 作者:(=`ω´=)
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説明会ですが、なにか? 

「……つまりその人たちに、こちらが思っていることを素直にぶつけてしまって構わないわけですね?」
『ああ、それで構わない。むしろ、是非そうして貰いたい。
 門脇くんの意向はこちらでも確認しているし、国内ではすでにコンセンサスが取れている。
 しかし、国外はというと……』

 外務省から完爾のところにその連絡が来たのは、クリスマスまであと数日に迫ったある日のことだった。
 その電話を取ったとき、完爾は、
「なんで外務省が、今さら……」
 とも思ったものだが、実際に用件を告げられてみると、「なるほど、このタイミングで来るだろうな」と納得ができる案件だったわけだが。

 要するに、例の対「大佐」戦の生中継を見て不安になった海外の人たちへむけて、完爾と直接会談する場を設けたいということらしかった。各国の大使や外交官むけの説明会、といったところか。もちろん、完爾は日本語とエリリスタル王国語以外の言語は習得していないわけだがら、通訳に関してはむこうで用意してくれるそうだ。
 完爾にしてみても、それで今後の誤解の種が減り、無用な摩擦が避けられるのであればそれに越したことはない。
 例によって仕事の調整をした上で、二十三日の休日になんとか時間を空けることができた。日本では休日だが、他の多くの国では平日のはずであった。
 クリスマスだの年末商戦だのでなにかと品物の動きが激しい時期なのだが、いざとなったら何日か徹夜でもしてフォローをすればいい。
 当然のことながら、完爾はユエミュレム姫も誘った。
 こと、交渉事に関しては、完爾なんかよりもよっぽど頼りになる存在なのだ。なにより、完爾よりもユエミュレム姫目当てで集まってくる者も多いだろうと、完爾は予測していた。城南大学のサーバあてに、最近では英語やその他言語のファンレターが届くようになっているそうだ。
 家庭内会議の末、休日という事もあり、二十三日には千種が一日、暁を預かってくれることになった。
 完爾はメールで、外務省から当日の出席者のリストを受け取った。氏名と国籍、役職などがリスト化されていたわけだが、むこうの言葉で書かれているので完爾にはほとんど読みとれない。

「どれどれ、みせてみろ」
 英語に堪能な千種が、そのリストに目を走らせた。
「おお。
 なんか、サーとかプロフェッサーとかの称号持ちが多いもんだな」
「それって……つまり、どういうこと?」
「貴族や学識経験者が多い、ってこと。
 義妹ちゃんが王女さまだから、それにあわせてきたのかな?」
 リストに記載されている出席者は、五十名以上にも及んでいた。

 当日、完爾とユエミュレム姫はそれなりにフォーマルな装いをして都内某所のホテルへとむかう。外務省がそこに会場を取ったという案内が来ていたのだ。
 案内状に記されていた受付にいくと、そこから待合室のような場所に案内をされる。
 来る途中、制服警官が何名も立哨しているのを見かけた。なかなか物々しい状態だ。各国の要人が集まるとなれば、それで当然なのかも知れないが。

「ええ、まず最初に明らかにしておきたいのは、わたしたちはこの世界で好んで魔法を使用したいとは思っていない、ということです。
 先日、東京湾岸某所におきまして、他にどうしようもなくて攻撃魔法を含む数種類の魔法を使用しましたが、あれはかなり例外的な、緊急避難的な措置であります。
 われわれがその他の場面においても、好んであのような魔法を使用したがっているわけではないのだということはご理解していただきたい……」
 最初に、まず挨拶を……と乞われたので、まずは完爾が切り出すことにした。
 それから完爾は、自分たち夫婦はこの世界で慎ましく、一般市民として暮らしていくことしか望んでいないこと、何種類かの魔法については各所の懇願に負ける形でこれから使用方法などを公開していく予定であるが、その際にも特定の国や勢力に対して不公正にならないよう留意するつもりであること、その一環としてこちらの世界には存在しない言語であるエリリスタル王国語を使用して魔法の普及を進めていく予定であることなどを説明した。
 聴衆のほとんどは完爾自身よりもよほど風格がある年輩の人たちであったが、特に完爾が臆するという事もなかった。
 相手が要人であろうが、所詮は人間である。
 怪獣サイズの魔族の大群を相手にするよりは、完爾にしてみればよほど気が楽であった。

 完爾の口上が終わると、今度は質疑応答の時間となった。

「あのような攻撃能力を一個人が保有することについて、どう思うのか?」
「どう思うのかもなにも、現におれは持っているわけでして。
 おれに対して、どう思うのか、と問うよりも、そのような存在であるおれを皆様がどのように扱うのか、という問題であると認識しています。
 おれ自身の意見としては、先ほども明らかにしたように、単なる市井の一私人として今後を過ごしていくことを希望しています」

「今後、日本以外の国に移住する予定はないのか?」
「今のところ、その予定はありません。
 今後、おれたち一家と日本政府との関係が悪化するようなことがあれば、考え直すかもしれませんが……。
 とにかく、今の時点では国外へ移住する予定はありません」

「日本が、あるいは他の国の政府が貴君に協力要請をしてきたら、どのように反応するのか?」
「その要請の中身により、その都度判断させていただきます。
 ただ、純粋に軍事的な要請に応じる予定は、今のところありません。そのことだけは、断言できます。
 どこの政府やその他の勢力から乞われましても、一切応じる予定はありません」

「貴君が日本政府による生体改造の被験者であるとの風説がある。
 その真偽は?」
「そのような風説の存在自体は知っています。
 だけど……それって、真面目に返答すべきですかね?
 今の科学技術でどこをどうやって改造すればおれみたいな人間が出来あがるというのか。
 その風説を流布した人たちに是非とも確認したいところです」

「では、貴君の能力はどこに由来するのか?」
「信じるかどうかは皆様の判断にお任せしますが……半分は、おれが別の世界に行ったときにおぼえた魔法です。
 もう半分は……おれ自身の特異体質に由来するようですね、どうも。
 むこうの世界の基準からいっても、おれの能力はどうも、桁違いのようでして……。
 こればかりは、おれ自身、なぜそうなっているのか、うまく説明ができません」

 通訳されてくる疑問はだいたいのところ、これまで完爾が受けてきた疑問の繰り返しであった。
 そのひとつひとつに、完爾は丁寧に、本心で答えていく。

「貴君の存在そのものが世界秩序を乱しているという自覚はあるのか?」
「世界の秩序……ですか?
 正直、そういうことを意識したことはないのですが……おれがそうした存在であるとして、いったいどうすればいいというのですか?
 おれがそういう自覚をすれば、なに事か解決する問題でもあるんでしょうか?
 世界秩序とやらのため、日本人らしくハラキリでもして自決しろとでも?  
 いずれにせよ、そういうのはごめんこうむります。
 何度でも繰り返しますが、おれたちの望みは普通の人としてこれからの一生をまっとうすること。ただそれだけのことでしかありません。
 おれが存在する程度のことでビクつくような世界秩序なら、おれの存在の有無に関わらず、もともとたいした存在ではなかったのだと思います」

「それでは、貴君の存在自体がこの世界では害悪である事実は認めるのですね?」
「どうしてそうなるのですか」
 完爾は静かに答えて、顔をあげて質問者をまともに見据えた。

 そこに、にこやかな笑みを浮かべた「大使」が立っていた。

「貴君は、むこうの世界でもこちらの世界でも、まさしく異質な存在であった。
 どちらの世界にも、貴君が安寧を貪れる場所はない。
 そのことを、認めるのですね」
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